Episode.5【銀世界での日常】
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彼女との初対面は最悪だった
まさか、僕の譜術と同じものをぶつけてくるとは思わなかったから
「ねぇジェイド、ここはどうするの?」
「ここはこれとこれを組み合わせて……後は自分で考えて」
「なるほど〜、ありがと!」
あれから近付いて来なくなるかと思えば、最初と何も変わらず僕の隣に座って、分からないことを聞いてくる
譜術は教えなくても、それ以外の勉強は違うと考えたのだろう
実際間違ってはいないから指摘はしない
こうやって喋っているのを聞いてると、明るいやつなんだってのは嫌でもわかる
でも、僕はまだ覚えてる。
あれはウンディーネ・リデーカンの末日だった
塾で本を借りようと思い、ネフリーと一緒に外を歩いていたら、街が騒がしくて
塾の前まで来ると、ピオニーとサフィールが一緒にいた
聞いてもないのに教えてくれたが、街の外の魔物が活発になっているとのことだった
しかもそれでネビリム先生が様子を見に行ったらしく、まだ帰ってきてないらしい
そんな時、ロニール山の方で紫色の光と落雷のような音が聞こえた
紛れもなくあれは、第三音素の光。譜術を使ったんだろう
しばらくして、先生が広場の方から走って帰ってきた
白衣に巻かれた知らない子供を抱いたまま
ピオニー達が話しかけようとしたが、そんな状況ではないと察して見守るだけに終わった
次の日、ピオニーを筆頭に様子を見に行こうという話になった
僕は全く興味が無かったが、ピオニーがおまえも来いとか言うし、ネフリーも行きたいと言ったから、仕方なくついて行くことにした
私塾の中、もとい先生の家は、夜以外は基本的に出入りできる
教室には当然いなくて、いるとしたら奥の部屋だろうと思い切って進んだ、他の三人が。
そろそろ付き合うのも面倒になってきた時、奥から話し声が聞こえてきた
見ると一番奥の部屋の扉が少し開いていて、光が漏れている
こっそり近付いていったピオニーが中を見ると、そのまま固まってしまった
続いた二人も同じ反応になり、少し気になったので僕も見る
「ふ、ぅ……とおさ、ま……か、あさまっ、メルラ……リッシュを、ひとりにしないでっ!」
彼女は、泣いていた
先生に抱きしめられていて、縋るように大泣きしていた
僕達とそう変わらない歳のようだから、おかしくはないはずなのに
何故か、その姿が今でも頭から離れていない。
「……ジェイド、ねぇ、聞いてる?」
あれから同じ顔を一度も見ていない。大体笑ってるか怒ってるかばかりだから
因みに今は、私塾の教室で各々自習をしている
一番前の教壇の横では、先生がニコニコしてこちらを見ている……なにがそんなに嬉しいんだろう
「……いや、なんでもない。何か用」
「この譜陣であってるかなーって」
さっき聞いてきた部分を応用して、譜術を構成する譜陣を書いたらしい
……これって譜術を教えてることにならないのか?
……気にするだけ面倒か。
「……うん。いいんじゃない」
「ほんと!? やったっ! じゃあ今度、この譜陣を使って新しい譜術を……――」
まだ何か聞くつもりなのか……溜息をひとつ吐いた時、前の席に座っていた銀髪頭が震える
「いっ、いい加減にしてよ! ジェ、ジェイドばっかり取らないでよリト!」
「え? ふつうに話してるだけなんだけど……」
取らないでもなにも、僕は所有物じゃないのに騒ぎすぎじゃないだろうか
サフィールは、譜業に関しては僕より詳しい
でも譜術は専門外らしいから、そもそも話に加われないだろうに
「サフィールはジェイドのこと大好きだからなー!」
「う、うるさいピオニー!」
ピオニーがまた絡んでいる
どう見ても嫌がられていることに気付かないんだろうか……僕には関係ないけど。
「そっか……ごめんねサフィー。わたしジェイドに色々聞きたいことがあって、どくせん? しちゃったね」
立ち上がったリトはサフィールの横に行き、ペコリと謝る
「サフィーは譜業を作るのがとくいってきいたよ。こんど見せてくれないかな?」
「う、うん、いいよ。それでゆるしてあげる」
「ありがとう、サフィー!」
歳は彼女の方が下なのに、扱い方を分かっているような……
姉弟でもいたんだろうか……いや、いたなら一緒にいるはず……
「なんだよリト〜、ジェイドとサフィールにばっかり構ってんじゃねぇか〜?」
アイツはさっきからペンが進んでいない
先生に怒られても僕の知ったことではないし、どうでもいいか
「そんなつもりはないけど? ウバラも構ってほしいなら言えばいいじゃない」
「なっ、べっ、別にそんなんじゃねぇし!」
図星を突かれたのか、慌て始めるピオニー
知らない知識だってあるやつだけど、人のことはちゃんと見てるんだよな
「リトって強くて前向きだよね。憧れちゃうなぁ……」
「ネフィーだって、しっかり者で優しいじゃない。わたしと違っていい所いっぱいあるよ」
「そ、そうかな……」
ネフリーもリトが来てから毎日楽しそうにしている
同性の友達が出来たからだろう……その点は感謝してる、その点は。
「ね、ジェイドもそう思うでしょ?」
確かに彼女が来てから、余計に騒がしくなったと思う
でも煩わしいというよりは……どう言えばいいのか思い付かないけど、嫌な感じはしない
「……そうだな」
こんな日常がこれからも続けばいいと、僕自身も思っているからかもしれない。
*