Episode.3【冷たさを温めて】
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魔物が妙に活発だと、街の憲兵が話していた
住民もどこかへ向かっていくウルフを、ロニール雪山に通じる出口から見たと言っていた
あの場所は、正直近付きたくはない。毎月決まった日以外は、できれば
それでも、もし街にまで魔物が入ってきたら、子供達も危ない
たとえ譜術の才に恵まれた、あの子がいても。
天候はそれほど酷くないけれど、空気は違う
生憎私を襲ってくるものはいなかった、まるでそれ以上に優先するものでもあるかのような……
ケテルブルクから山までのルートを歩き続けて数分、遠吠えが聞こえた
ということは、おそらくアイスウルフだろう。仲間を集めているのね……やはり何かあるんだわ
「あれは……子供!?」
走っていけば遠くに見えてくる、振りかぶった刃と魔物の血
ただ予想と違ったのは、まだ年端もいかない……ジェイド達と同い歳くらいの女の子だった
「わっ!?」
身の丈に合わない、細身の剣でウルフを倒している少女
空よりも海に近い青の髪は、あまり見ない色だわ
ある程度心得はあるみたいだけど、彼女の身体は雪にとび込んでしまった
それを好機といわんばわりに、狼達が跳躍する。私の詠唱は、既に終わっていた
「サンダーブレード!」
威力は弱くなるけど、数発に拡散して当てていく
それでも戦闘不能にはなったみたいで、立っているものはいなかった
「あなた、大丈夫!?」
アイスウルフの様子を伺っている時、こちらの声に気付いたみたい
辿り着いた私は、少女を抱き上げて怪我が無いか確認する
見つめる瞳は、宝石のような紫色……やはりこの街の子じゃないみたいね
「……ぁ――」
幸いかすり傷程度みたいね……良かった
小さく声が聞こえたから見てみると、私に手を伸ばしている女の子。でもすぐに、気を失ったみたい
この薄着で長時間外にいたのでしょうね……熱が出てきてる
見える限りの傷を治癒してから、白衣を脱いで身体を包む
踵を返し、急いでケテルブルクへ。
「ネビリムさん! 外に出ていたのですか!?」
「様子を見にいっていました。おそらくこれ以上は問題ないと思います」
「先生、その子供は?」
「魔物に襲われていた所を助けました。私の家で診ますので、大丈夫です」
自宅に戻りながらも、憲兵や住民に話しかけられる。なにせ見慣れない少女を抱いているのだから
でも一刻も早くこの子を寝かせないと、身体に障るわ
家に着いてからすぐに、私の部屋だけでも暖かくする
ぬるま湯を用意してから、衣服を脱がせた
身体を拭かないといけないし、酷く汚れていたから
「これは……」
女の子の鎖骨辺りに、花のような紋様が浮き出ていた
念の為触ってみたけど、傷でもタトゥーでもない
……どこかで見たことがある……あれは、そう……教団にいた時だわ
私自身は携わっていなかったけど、近年実行予定の任務詳細に添付されていた資料
目だけ通すよう導師に仰せつかい、標的の写真を確認した
やはり……青い髪に紫の瞳、そしてこの紋様……彼女は、おそらく……何の因果かしらね、私がこの子を拾うなんて。
でも、関わらない理由にはならない。むしろ私は、この子を助ける義務がある
……無事に、目を覚ましてくれるといいんだけど
発熱の苦しさにうなされている少女の頭を、祈りを込めて撫でた。
* * *
ウンディーネリデーカン・シルフ・五十八の日。
この日、元神託の盾騎士団響士、ゲルダ・ネビリムは、一人の少女を保護した。
彼女との出会いで、リッシュテルトの人生は進んでいく。
その生涯は、預言に記されることは一切ない。
――こうして、常冬の上陸は幕を閉じた。
次の幕開けは、避けられぬ放棄。
*