第9夜【未来予知とトランプ:後編】
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シナデ達がポテンツァに訪れて、半日が過ぎた。
空は陰り、街灯にあかりが灯りはじめる。
「ちっくしょうっ!!」
突如鈍い音が聞こえたかと思えば、壁に拳を打ち付けているラビの姿があった。
「(オレがもっと早く駆けつけてたら……クッソォ!)」
歯を食いしばり、悔しいという思いがひしひしと伝わる。
一方神田は、落ちていた自らのコートを拾い、それを見つめた。
――ごめん――
脳裏に、攫われる前、最後に見た彼女の顔が浮かぶ。
「(シナ……俺は、お前を……)」
コートを強く握り締めた後、袖を通し、六幻を背負う。
「おい、ラビ」
普段からバカウサギと言っている彼が、名前で呼んだ。ラビは俯いた顔を少し上げる。
「なにボーっとしてんだ、行くぞ」
「え、でもシナデの居場所は? ゴーレムは鞄に入ったままだったし……」
「それを今から突き止めるんだろ」
言い放ち、歩き始めた神田。ラビは遅れながらも付いていく。
「……ユウは、シナデが心配じゃないんさ?」
「アイツが簡単にやられる奴だと思ってんのか」
「んな事無いさ!……でも、心配なものは心配なんだよ」
前を歩く神田が足を止めた。後ろのラビも立ち止まり、沈黙が流れる。
「アイツは絶対に死なせない……それだけだ。テメェはどういう考えなのか知らねェがな」
「オレ、は……」
神田の言葉に口ごもるラビ。
だが俯く顔を上げ、彼の背中をまっすぐ見つめた。
「……オレも、シナデを死なせたりなんかしねぇ。ブックマンとか関係なく、オレの意志で守ってみせるさ」
「……さっさとあのガキ探すぞ」
「おう!」
彼女を死なせない。それはつまり、自分達が守るから。
彼等は、シナデを守るという強い思いを胸に、捜索を開始する。
手分けして探そうとした、その時。
「もし、少しよいかの?」
「ん、何か用さ? じいさん」
ラビ達に声をかけてきたのは、みすぼらしい格好をしたひとりの老人。
「急いでいる、他を当たれ」
「まぁまぁユウ……何か困った事でもあったんさ?」
「いや、お前さんらに聞きたいことがあっての……“イリス”のことでな」
「……何!?」
「え、イリス!? イリスを知ってんさ!?」
突然見知らぬ老人から、イリスの名前が出てくる。一瞬耳を疑った。
老人は特に顔色を変えることなく、話を続ける。
「ワシはイリスがこの町に来た時からの付き合いでの……廃棄所巡りも一緒に回っておった。じゃが、最近見かけなくなってな。それと同時期に、町で未来予知の噂を聞くようになった。もしかしてと思っとったら……お前さんらがイリスと争ってるのを見たんじゃ。ワシは……あの子のあんな笑い方、今まで見たことがない」
消え入りそうに零し、俯いてしまう老人。
ラビ達は、イリスがそうなってしまった理由を知っている。
彼は“AKUMA”という名の兵器になったから。千年伯爵の手で。
「じいさん……イリスの事話してやりたいけど、今は時間がないんさ」
「そのようじゃの……引き止めてすまぬ。そういえば、イリスの居場所を探しておるんだったの?」
「心当たりがあるのか」
突然口を挟んだ神田に、老人はゆっくりと頷く。
「あの子は昔から、山に登るのが好きじゃった。立ち入り禁止を諸共せず、山に登っては絵を描いていたものじゃ……イリスが行くとするなら、そこなのだとワシは思う」
「行ってみる価値はあるさ……ありがとな、じいさん!」
「どうかあの子の魂を、光へと導いとくれ……」
「……行くぞ。案内しろウサギ」
「ほいほい……んじゃな」
老人の願いに肯定も否定もせず、二人は町近くの山へと向かう。
おじいさんは神田達の姿が見えなくなるまで、その背中を見送った。
*