第8夜【未来予知とトランプ:中編】
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「僕の名はイリス。よろしくね、おねえさん達」
突然シナデ達の前に現れ、自らの名を明かした未来予知少年、イリス。
それだけではなく、神田とラビにとっては聞き捨てならない言葉を発したのだ。
「おねえさんの事が、気になっただけだよ? フフフッ」
そう言ってシナデの腕を引き寄せたイリス。
少年に対して大人げないだろうが、少なくとも二人は憎悪を抱いたであろう。
感情が無い当の中心人物、シナデは意味が分かっておらず、首を傾げているが。
いつまでそうしているのかと思えば、ふと離れて、空いている席に座った少年。
丸いテーブルに椅子は四つ、神田とラビに挟まれ、シナデの正面。
「それで、おにいさん達は僕に聞きたい事があるんだよね?」
「ハッ、お得意の未来予知で調べたんだろ」
「まぁそんなとこかな……だからおにいさん達が聞きたい事の内容、知ってるけどね」
分かっているくせにわざわざ聞いてくるところに、神田の眉間の皺はどんどん濃くなる。
「(うわっ、ユウがキレそう……)一応言うけど、オレ達が聞きたいのはお前の事全部さ。ど? 分かり易いっしょ?」
「うん! 分かり易いね。とりあえず順に説明していくよ」
少年は自分の事、力の事、全てを話す。
イリスはこの町の貧民にあたる身寄りのない孤児。
毎日町中の廃棄所を巡り、金目の物を探す生活をしていた。
ある日のこと、ゴミ箱に捨てられていたトランプを見つけたという。
お金にはならないが、遊べるものだったのでそれを持って帰った。
その中のひとつ、ジョーカーが好みの絵だったので、首からぶらさげることにする。
それからだという、未来予知を見れるようになったのは。
最初は自分自身も信じていなかった。
でも自分が予知した事は、全て現実になってしまう。
初めは天気だとか、ちょっとした出来事だとか、小さいものばかり。
だが日に日に大きくなっていき、不幸……つまり死の予知も見えるようになっていく。
そんな不幸を阻止できるのなんて、自分しかいないとすぐ分かった。
だから未来予知を、必要な人の元に届ける事にしたのだ。カードという形で。
「こんなもの、かな。僕のこと、分かった?」
「話を聞くに、そのジョーカーがイノセンスだろうな。んでお前は適合者ってことになるさ」
「適合者って? そっちもイノセンスとかの事教えてよ~」
「分かった分かった……」
今度はこちらの番であり、ラビはイノセンスやアクマについて話す。
普通の人間なら驚くなり信じられないという反応をするが、彼はそんな素振りを見せなかった。
自分に異様な力があるからか、それとも……――
* * *
「……なぁ、ユウ」
「ファーストネームで呼ぶな」
「オレ達の任務ってさ、イノセンスの回収、もしくは適合者を連れ帰る、だったよな?」
「……だったらなんだ」
「……オレ、放棄したくなったさ」
時間は過ぎて夕方頃。
イリスの予知した雨は上がり、空はオレンジに染まっていた。
ラビと神田は珍しく並んで座っており、前方を見ている。
ラビは膝に頬杖をついて、神田は腕も足も組んで。
明らかに嫌そ〜うな二人が見ている先には。
「じゃあ僕、おねえさんみたいなエクソシストになれるの?」
「……教団に戻ったら……多分ね……」
「そっか~、楽しみだな~!」
噴水の縁に腰掛ける水色と黒の髪の少女、シナデと茶髪の少年。
この子供、イリスが未来予知の張本人だと分かり、先程まで問い質していた。
それぞれの質問が終わり、彼を適合者として教団に連れていくことに。
次の汽車までかなりの時間があったので、近くの広場で休憩になったのだが。
なんとイリスは、シナデの腰に抱き付いて離れないのだ。
彼女は気にする事も“出来ない”ので、見ている男達がイラッとしているばかり。
「ちっくしょう、アイツわざとやってるさ!?」
「あ! おねえさんのイノセンスって、十字架のネックレス?」
「……うん……神幻奏歌って名前……」
「わぁ、素敵な名前だね! 僕のイノセンスってどんな名前なんだろう!」
「……チッ!」
「うぉ、どうしたユウ?」
「うるせェ」
遂にしびれを切らせて立ち上がり、駅と逆方向に行ってしまった神田。
彼の背中を、静かに見つめるシナデ。
何を思ったのか、彼女も立ち上がろうとするが。
「おねえさん、どこ行くの? 僕ともっとお話しようよ~」
ずーっと腰に巻き付いたイリスが簡単に離れる訳もなく、邪魔をされてしまった。
「アイツ!」
それに気付いたラビが駆け寄ろうとした時。
「……イリス」
「なぁに? おね~えさん」
彼女はただ一言、彼女だからこそ無表情で零した。
「……邪魔」
抱き付いていたイリスも、駆け寄ろうとしていたラビも固まってしまう。
その隙をついて解放されたシナデは、神田と同じ方向に歩きだす。
ラビとすれ違いざま、視線はそのまま紡ぐ。
「……ナビ、あの子を見てて……すぐ戻るから……」
「分かったさ」
ラビは彼女の背中を見送り、少年へ視線を向ける。
イリスはその場でまだ固まっていた。余程ショックでも受けたのだろうか。
「(ガキにゃあ悪いけど、いい気になったバツさ! シナデもスパッと言ってくれてスッキリした~)」
やっぱり大人気ない事を思っているラビ。
「(アイツどんな顔してっかな~……)」
ただの好奇心のつもりだった。
悔しそうな顔でもしてるのか、辛そうな顔でもしてるのか。
そう思っただけのラビだった。
でも、後ろからかろうじて見えたイリスの口元は。
ニタリと効果音が付きそうな程、酷く弦月の様に歪んでいた。
*