第5夜【もう1人のアリア】
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アレンが入団した次の日。時刻は日の昇らない午前四時頃。
神田はいつものように、教団外の森で鍛練を行っている。
ただ、いつもと違うのは、一緒に“彼女”も鍛練している事だ。
「はあぁっ!」
「っ、一矢!」
「……チッ!」
教団外にある森の中で、金属のかすり合う音が響く。
どうやら二人は、発動無しの手合わせをしているようだ。
神田は刀、シナデは弓矢だが、共に全く引けを取らない。
横一戦に六幻をなぎ払うが、彼女は難なく後ろに避ける。
そして避け際に弓を構え、彼に向けて矢を放った。
神田は頬スレスレに矢を避けたが、髪が少し散ってしまい、舌打ちをかます。
「あ……髪、ごめん……」
「気にすんな。いくぞ……手加減しねェからな」
「……了解」
再び構え、同時に地面を蹴った二人。
神田は刃を突き出してきたが、シナデは上に跳んで彼を飛び越える。
着地後すぐ回転して、あらかじめ左手に出していた矢でなぎ払った。
が、既におらず、目にも止まらぬ速さで彼女の後ろに回っていたのだ。
しかしそれにも全く動じず、後ろからくる六幻の一撃を弓で防いだシナデ。
お互い一歩譲らずの攻防戦。
鍔迫り合いの後、其々武器を弾き、距離を取った。
二人の沈黙で森は静寂に包まれるが、先に神田が刀を鞘に納める。
「……終わり?」
「あぁ、このぐらいにしてメシ行くか。日も出てきたしな」
「……うん」
神田の提案にシナデも発動を解除し、食堂へ向かう。
道中、神田が申し訳なさそうに切り出す。
「……昨日は、悪かった」
「……どうして?」
「いいから……お前は何も言うな」
「……うん、わかった……」
今日も朝から人の多い食堂。
神田はいつもの蕎麦、シナデはモーニングセットを受け取り、空いている隣同士の席についた。
「お前、毎日食べるやつ変えてんのか?」
「……うん……リナリーが、毎日違うもの食べると体に良いわよって……神田は、変えないの?」
「お、俺はこれでいい。(アイツ、吹き込んだな……)」
「……そう……いただきます……」
お互い他愛もない話をしていると、後ろの席からすすり泣く声が聞こえてきた。
どうやら探索部隊の人達が、仲間の死を悔やんでいるようだ。
その事に嫌気が差したのか、神田が視線はそのままに、後ろの人間に吐き捨てる。
「オイ、悔やみ事は他所でやれ」
「……あ? 何だとコラァ!! もういっぺん言ってみやがれ、あ゙ァ!?」
「おい、やめろバズ!」
神田の言葉が勘に触り、掴みかかる勢いで叫ぶバズとやら。
蕎麦のつゆ入れに箸を置き、相変わらずの態度で言葉を続ける。
因みにシナデは、普通にご飯を食べている。
「うるせーな。メシ食ってる時に後ろでメソメソ死んだ奴らの追悼されちゃ、味がマズくなんだよ」
嫌なものは嫌とハッキリ言うタイプの彼。
それはもう、苛立ちを起こさせるくらいに。
「テメェ、それが殉職した同志に言うセリフか!! 俺達探索部隊はお前等エクソシストの下で、命懸けでサポートしてやってるのに……それを、それをっ――」
男が拳を作り、そのまま。
「メシがマズくなるだぁーっ!?」
神田目掛けて殴りかかった。彼はそれを顔色ひとつ変えずに躱し、逆に男の首を掴んで軽々と持ち上げる。
「サポートしてやってる、だ? 違げェだろ、サポートしかできねェんだろ。お前等はエクソシストになれなかった……イノセンスに選ばれなかったハズレ者だ」
神田の言葉に、他の探索部隊達も妬みの目を向ける。
一方の彼は、更に鋭い目付きで言葉を続けた。
「探索部隊くらい、代わりはいくらでもいる。死ぬのがイヤなら、出てけ」
「ストップ」
その時、神田の腕をアレンが握り、彼を制止した。
因みに口元に包帯を巻いた探索部隊の人も、片側を制している。
「関係無いとこ悪いですけど、そういう言い方は無いと思いますよ」
「放せよ、モヤシ」
「モヤシ? アレンです」
「ハッ、一ヶ月殉職なかったら覚えてやるよ。ここじゃバタバタ死んでく奴多いからな、こいつらみたいに――」
腕を掴んでいるアレンの手に力が入る。その拍子に、神田の手から男が解放された。
気絶していたのか、何も言わずに崩れ落ちる。
「……そういう言い方は無いでしょう」
「呪われているヤツが俺に触るな……早死にするぜ。お前、キライなタイプだ」
「そりゃどうも」
二人の視線の間に稲妻が走り、効果音が付きそうなオーラもにじみ出る。
「……ごちそうさま」
そんな空間をぶち壊したのは、手を合わせて御飯を食べ終わったシナデ。
あまりにも突然だったので、神田もアレンも呆然としてしまった。
二人の視線に気付き、座ったまま振り向く彼女。
「……どうしたの、二人共……」
「え!? い、いやぁ~……」
「……何でもねェよ」
*