第1夜【序章前の休日】
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「ね~え~」
「あ? 何だよ」
少女は少年が木刀の素振りをする中、座り込んで彼を見つめる。
「私ねー、貴方に伝えたいことがあるの!」
「突然だなオイ……で、何なんだよ」
「ふっふ~、それはね~~、まだ言わないの!」
「……はぁ!? 何矛盾したこと言ってんだよ! 伝えたいとか言って教えないとか、バカか!?」
勿体ぶるように言う彼女に、素振りの手を止めて信じられない、という顔を向けた。
サラッと罵倒されたのがムカついて、ゴンッという音と共に彼を殴る少女。
「ちょっと! 人の話聞いてた!? “教えない”なんて一言も言ってないわよ!! それに年上にバカ言うな!!」
「痛っ……テ、テメェ、先に殴んじゃねェよ!」
「ふん、そっちが悪いんでしょ? とにかく! 今は言わない。“教えない”じゃなくて“言わない”! ここ重要!」
右腕は腰、左手は人差し指を立てて言い聞かせるように。
殴られた箇所が痛いのか、少年はまだ頭を摩っている。
「チッ、分かったよ……」
「フフッ、そういう所は物分かり早くて助かるわ~。じゃあこの事、いつかの為にちゃんと覚えといてね!」
――ユウ――
満面の笑みで、少年の名を呼ぶ。
名前で呼ばれるのが大嫌いなはずなのに、自分はそれを許していた。
「……夢、か」
時刻は日の昇らない早朝。
窓はヒビが入り、ベッドとひとつの私物しか置いていないある一室。
その殺風景な部屋の主、長い黒髪に青眼の青年、神田ユウは、うっすらと目を開けて呟いた。
「(いや、これは夢じゃなくて……俺と“アイツ”の……)」
ベッドから状態を起こし、少し考え事に耽る神田。
ふと時計を見れば、四時きっかりだった。
「(ま、いい。鍛練の時間か)」
あっさり考えることを止め、鍛練の為に準備をし始めた神田。
それが彼らしいといえば彼らしいのだが。
下ろしていた長い髪をポニーテールで結び、コートになっている団服を羽織る。
そして自らの対AKUMA武器、六幻を手に取り、部屋のドアノブに手をかけた。
同時刻より少し遡った頃。
ベッドと壁に向かわせた机と椅子。クローゼット、そして小さい丸テーブルに二人掛けのソファー。
基本的な物の数だが小物は一切無く、それだけしか置いていない部屋で、“彼女”は目覚めていた。
上は空のような水色、下は黒の二色という珍しい髪色。
瞳は右目が黒、左目が金色のオッドアイの少女。
名をシナデ・ミワタヅミ。
神田もそうだが此処、黒の教団エクソシストの一人だ。
「……今の夢って、もしかして……」
虚ろな表情で言葉を零したシナデ。
どうやら彼女も夢を見たようだ。神田と同じかは定かではないが。
「(でも……もし夢じゃなくても、私は……――)」
ふと、隣の部屋で物音がした。その音に感化されてか、彼女も準備をし始める。
足の付け根位まである髪を一纏めにして留め、左の長い横髪を三つ編みに結ぶ。
そして団服を着用し、短めのパレオを腰に巻いて部屋を出る。
彼女が部屋を出て、前の手すりに手を添えたほぼ同時、隣の部屋のドアも開いた。
そこから出てきたのは先程の物音の主、神田だ。
二人は隣同士の部屋だったのである。
神田は部屋を出てすぐ、彼女の存在に気付いた。少し驚いた顔をしていたが。
一方シナデは彼が出てくるのを分かっていたからか、迷いなく視線を神田の方に向ける。
「……おはよう、神田……」
「……あぁ。今日は早いな」
「……うん……目が、覚めたから……神田は、鍛練……だよね?」
「そうだ」
「……私も、行っていい? 邪魔にならない所に、居るから……」
「……あぁ、構わない」
「……うん」
また少し驚いた表情をする神田だが、了承してくれた。
神田が驚いていた事に、シナデは気付いていない。
「(今朝のあの“夢”、前兆か何かか? あれは……いや、まさかな)」
後ろで歩くシナデに視線だけを向ける神田だが、すぐに向き直し歩みを進めた。
二人は、鍛練する教団外の森へと向かう。
*