code.9【三輪隊の強襲:前編】
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「ふむ? 近界民を引き寄せる?」
四人と一体以外、人間は見当たらない住宅地。
それは此処が警戒区域で、倒すべき怪物は事切れているからだ。
「話をするなら場所を変えよう、オサム。付近に他のボーダーがいる」
ふよふよと浮かぶ黒豆もとい、レプリカからの提案。
間髪入れず、爆発が近くで起きた。
「そうだな、移動しよう。こいつはラッド出してないか? 見逃すと、またイレギュラー門が出るぞ」
「大丈夫だ、ラッドの反応はない」
初めて倒し、ボロボロに砕けたバンダーに振り向く修。
二次被害の心配も無いようで、ひとまず移動することに。
歩き出す皆の中、薄黄の少女だけは止まったまま。
右手で持っているスマホを、見つめながら。
『情報は役に立った?』
『はい、助かりました』
『そう、なら良かったわ。三輪隊が近くにいるから、一応気を付けてね』
『ありがとうございます』
トークの名前は『きょうこさん』
トリオン体でない時に使う連絡手段のひとつで、本部に居る彼女から情報を貰ったのだ。
勿論、上司の忍田には許可を得ています。
バックウィンドウにアプリを下げ、画面を閉じる。
再び響く爆音に、目を細めた。
「(みわ隊、か……嫌な予感がするな)」
ここ最近では、一昨日と昨日に、それぞれ別の人間として話をした。
片方は取るに足らない内容だったが。(彼女曰く)
迅から何か聞いている訳でもないが、このまま黙っている奴らでもないのは知っている。
「おーいアユ!」
「今行く」
兎にも角にも、移動する為に踵を返した。
* * *
区域内をしばらく歩き、やがて『弓手町駅』と書かれた建物に到着。
造りはしっかりしているものの、五年の年月ですっかり廃れていた。
「ほうほう、これが駅ですか。電車にのるという」
中へ入り、ホームへと進んだ四人。遊真は興味深そうに辺りを見回している。
「いや、ここは四年前の大侵攻で放棄された駅で、今は警戒区域になってる。電車は来ない」
「ほお」
「ボーダー基地を中心にしたある一定の地域は、基地周辺に誘導された門から現れる、近界民と戦うための、言わば戦闘区域みたいになってるんだ。その警戒区域を回避する形で、新しい線路がひかれて、駅もそこに造られてる。だから、ここにはもう誰も来ない」
「ふーん。(詳しく聞いたのは初めてだな……)」
丁寧な説明に、改めて納得する鮎。
三門市がこうなってしまった概要は、第一次大規模侵攻に関わっていたので知っているが、全部は頭に入れてなかったので。
「ふむ、電車は来ないのか。少し残念だ」
「確かにな」
「ん、アユは乗ったことあるのか?」
同じように腕を組み、自分も乗りたかった的な風で、遊真に同意する彼女。
「乗った経験は無いが……故郷の近くの国にはあったって聞いたことあるんだよな、電車。まぁ金持ちしか乗れなかったらしいけど」
「ほぉ」
こちらに来てから、電車で何処かへ行く用事もなく。
加えて前の世界の電車は黄の月の元、工業が発達したバルア帝国の上級都市という、貴族のみが住んで歩ける所からしか出ておらず。
更に言うなら、空飛ぶ船で移動するのが常識だったので、レールの上しか走れない乗り物に乗る必要性がなかったのだ。
金持ちしか乗れない電車のある国って何処だ? と、修は知る限りの国外を思い当たってみるが、おそらく該当しないだろう。
「遊真、くん……もしかして、電車に乗ったことないの?」
「ないよ? だっておれはネ――「だぁぁっ! そっ、そうだえーっとなんでお前達、一緒にいたんだ?」
大声で遮るメガネボーイ。何しろ、隠す理由も彼にとっては無いからだ。
「えっと、待ち合わせの橋の下で知り合って……」
「自転車を押してもらって川に落ちた」
「風邪ひくからストーブでも探そうと……」
「……さっぱりわからん」
それぞれの証言を繋げて読めば、一応文にはなる。
自分で聞いておきながら理解していないのもどうかと思うが。
「まぁいい、ひとまずお互いを紹介しておこう。こっちは雨取千佳、うちの学校の二年生。ぼくが世話になった先輩の妹だ」
「よろしく……」
少し照れながら挨拶。控えめな性格は、彼女のいい所。
「千佳のクラスメイトの、仮峰鮎。ボーダー隊員ではないけど、運動神経もぼくより良いし、いざって時に頼りになる……と思う」
「……なんだそのビミョーな説明」
煮え切らない紹介に、ジト目で修を見る。
彼は下級生としての仮峰しか知らないので、当たり前なのだが。
「いやその、嘘じゃないだろ?」
「……まぁいいが。よろしく、ゆーま」
あまり気にしない事にして、遊真に手を差し出した。
握手を交わす時、お互い口角は少し上がっていて。
期間は短いといえど、既に他人ではなかった。
*