code.6【数撃ちゃ当たる:前編】
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次の日。昨日は木曜日であったので、本日は金曜日。
そしてたまたま祝日だった為、アユにとっては二連休である。
「おいあの野郎、聞いてないぞ……」
がしかし、朝の早めな時間から既に外出していて。
白のダウンジャケットと藍のジーンズ、髪はいつものポニーテール。
人通りの無い住宅地で、角から様子を伺っているという。
何故、隠れるようにしているのか。
修と約束した訳では無いので、彼の家前で堂々と待てないのがひとつ。
そして、ネアとしては知り合いだが、仮峰としては初対面。
A級七位、三輪隊隊長、三輪秀次と隊員、米屋陽介が張っていたからだ。
「(なんでみわ隊がいるんだよ……あのバカの事だから視えてるだろうに、昨日一言も……)」
単調な理由で約束を取り付けてきたくせに、全ては話さない。
そういう所に苛立つから、つい手という名の拳が出てしまう。
脳裏にヘラヘラしている腐れ縁が浮かび、目付きが険しくなった。
そんな彼女の背後に、何者かの影。
抜き足差し足でゆっくり近付き、伸ばした右手は下の方。
目標は、壁に張り付いて気付かない少女のお尻。
あと一センチで、指が触れる……心中したりと無意識に口角を上げた男。
しかし世の中、というか彼女相手、そう簡単に上手くいくわけがなく。
「じーん? 今なら通りすがりにセクハラされましたと、みわ達に進言できるんだが……どうする?」
視線は向けず、利き手でないのに異性の手首をしっかりひねりあげるネア。
「痛い痛い痛い痛いごめんなさい許してそれだけは痛い痛い痛い痛い!!」
セクハラ未遂の好きなものは女子のおしりという最低野郎、迅悠一は涙目で訴えてきた。
生身なのもあって、相当痛いようである。
因みに修の家とは距離があるので、気付かれてはいない。
もうひとつ、ぼんち揚のパッケージは左手。
「ったく、嫌なら最初からやるなってんだよ」
おもむろにお菓子をアユに渡して、赤くなった肌をさする彼に舌打ち零しで向き直り、腕を組んで見上げる。
ぼりぼりと一枚かじりながら。
「だって〜、つい出来心で――「あ゙ぁ?」
「すみませんでした」
ぶりっ子みたいなノリで謝罪しようとしたが、油に火は注がれた。
ドスの効いた低音に対し、即土下座。
本当に誰も居なかったので、好奇の目は無し。
「(にしても、ダウン越しでも分かるくらいおっぱいデカい……)」
チラリと視線を胸元に向けた迅は、懲りずに殺される案件を考えていたが、心を読む副作用なんか持ってないので、バレなくて良かったですね。
「……で、あれは一体どういう事だ」
話を戻し、腕組み解除から所謂グーサインで自らの左側を差す彼女。つまり、方向は修の家。
「あぁ〜……ごめん、昨日伝え忘れて」
頬を掻きながら立ち上がり、差し出された袋からぼんち揚を口に運ぶ迅。
こんな感じだが、どうやら本当に忘れていた様子なので、大きな溜息の後、壁に寄りかかった。
「……まぁいい。それで、お前の考えは」
「これ使う」
ピラリとどこからともなく取り出した、一枚の紙。
最上部には、命令書。背景にはボーダーのエンブレム。
隊員にとって、必ず実行しなければならないものである。
「……用意周到なこった」
「でしょう? 実力派エリートだからさ」
「誉めてねぇよ」
再び息を吐くアユ。漢数字の三の目で照れ始める彼にもピシャリと。
すると、遠くで金属が擦れる音が耳に入る。
角から顔だけ覗かせると、修が家から出て、反対方向へ歩いて行く背中が見えた。
自分らより近い三輪と米屋も、気付いたようで。
「それじゃ、秀次達にこれ渡して退散させるから。メガネくんにバレない距離で、ついてきてくれる?」
「ん」
その場は動かず、左腕を横に伸ばす。手には、ぼんち揚。
通り過ぎる際に受け取り、迅は、よろしく~、と後ろ手で道に出ていった。
暫く様子を見ていると、突然現れておどかしたり、命令書をさらっと渡して自分は先へ。
つい最近、正体を知る人間が一人増えたが、彼等にはバレていない。
あくまで通行人としてすれ違おうと、アユも一歩進んだ。
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