code.5【似非双子の災厄:後編】
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時は遡り、午後八時半を過ぎた頃のこと。
「お疲れ様です、嵐山さん」
「お疲れ様です」
「充、木虎、お疲れ!」
本日の業務を終え、時枝と木虎を先に帰した嵐山。
ある程度の片付けをした後、自分も換装を解き、隊室を出る。
「副も佐補もまだ起きてるかな……」
大好きな弟妹達を想い、自然と歩み早めた彼。
エレベーターへ乗るため、廊下の角を曲がった所。
「あれ、沢村さん?」
「あら、嵐山くん」
ちょうど反対方向から、バインダーを片腕に持つ本部長補佐、沢村響子が歩いてきたのだ。
嵐山自身、忍田派である関わりで、交流は多い方である。
「遅くまでご苦労様ね、嵐山くん」
「沢村さんこそ、こんな時間まで仕事ですか?」
「今日はイレギュラー門問題の会議もあって、ネアの報告書がまだ出来てないの。自分でするとは言ってくれるんだけど、あの人も頑張ってくれたからね。それが終わったら帰るつもりよ」
「あぁ、ネアの……あ」
彼女がネアのオペレーターも兼任していることは、少なくともA級全員が知っていて。
これに関して驚くことはないのだが、忙しさで忘れていた事を思い出した。
「どうかしたの?」
「……沢村さん、ネアの連絡先を教えてもらう事はできますか?」
「……えっ!?」
瞬間、顔を引き攣らせた響子。しかしすぐに持ち直したので、嵐山は気付かない。
ネアの正体は、あんなトリオン体から察せるわけがなく、謎に包まれている。
というか総司令からの命令で、ネアの素性は秘密厳守なのだ。
だが、彼が問うたのは、何者かではなく、連絡先を知りたい。
「急に何を言い出すのよ、貴方……」
容易に判断しかねる内容だったため、そもそもの理由を探ることにした。
「中学校で、三雲くんとは別に近界民の撃退を行っていたんですよね? あの人は」
「えぇ、そうよ。オペレーターとして、私も対応したから」
「その時に、俺の弟と妹を助けてくれたって、二人に聞いたんです。俺自身、礼を言いたいですし、弟達ももう一度会って御礼したいと……頼むだけでも頼みたいんです!」
最後は少し声量大きめで。真っ直ぐな意志は、その言葉と曇りの無い瞳でこれでもかと伝わってくる。
連絡先を教えてはいけないとは命令されていないが、教えることで、正体がバレる確率が上昇するだろう。
しかし、悪意のない人間を無下にするのは心が痛い。嵐山ならば尚更だ。
「……連絡先は規定で教えられないけど、あの人が居る場所なら知ってるわ」
ということで、敢えて彼女の部屋を教えることにした。
スマホに変声機能はないため、確認もせず出られでもされれば即バレ。
アユはそういう所がある。
「ネアにも殲滅処理課の隊室みたいな部屋があるの。本部にいる時は、大体そこに居るから。ただし、こんな時間だから必ず居るとは限らないわよ。(居るも何も寝てるでしょうけど、あの子は)」
表向きの設定を述べながら、彼女なら既に寝ているだろうと考える。
それに嵐山が部屋に行くことになっても、彼が向かう間に連絡をとれれば何とかなるであろうから。
「沢村さん、隊室の場所を教えていただけますか?」
「……行くのね。分かったわ、ちょっと待ってね」
十中八九、教えて欲しいと言ってくるのは予想していた。
内心少し安堵しながら、手持ちのバインダーからメモを取り出し、階数と番号をさらさらと。
「はい、この場所へ行ってみなさい」
「ありがとうございます! 早速行ってきます!」
「えぇ、いってらっしゃい」
最後に、失礼します! と頭を下げて、踵を返した彼。
太陽のような眩しい笑顔で。
若干目を細めながら、響子は手を振って見送る。
そして嵐山が角を曲がっていなくなった瞬間、ポケットからスマホ。
一旦切ってはまたかける、を二回ぐらい繰り返したが、一向に応答の気配はなし。
「念のために伝えておきましょうか……」
鮎へのトーク画面を開き、大体のあらましを打ち込んで送る。
暫く様子を見たが、やはり既読は付かない。
「まぁ、寝てるなら大丈夫かしらね?」
直接部屋に向かえば、間違いなく嵐山と鉢合わせするだろうし、生憎まだ仕事が残っている、ネア関連の。
これ以上考えても仕方がないと思い至り、沢村は自分の仕事場へ戻っていったとさ。
*