code.4【似非双子の災厄:前編】
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突然だが、おれには未来が視える
いや、冗談とかそういう類じゃなくてね
優れたトリオン能力を持つ人間には、副作用が宿るもんなの
まぁおれ、実力派エリートだから
話を戻すけど、おれの副作用は【未来視】
目の前にいる人間の、少し先の未来が視れる
一度でも見た事がある人なら、傍にいなくても大丈夫
……なんだけど。
「テスト期間って聞いてたから、全然玉狛に来れないのは分かってたけど……寂しかったよ~」
今、おれの目の前にいる大人びた女の子、名前は仮峰鮎
何だかんだでもう七年くらいの付き合いになるんだけど、これから彼女がどうするか、未来が視えないんだ。
全くって訳じゃなくて、確率でいうと、良くて三十パーセントってとこかな
理由は以前に聞いたんだ。同時にそれが、どうしようもできないことも分かってる
だから、久し振りに会って変わらない姿を見ると、顔に出さないけどめちゃくちゃ安心するんだ
でも、この後どうなるかは運良く視えてたんだ……おれを蹴り上げようとする未来が
だから一歩下がって避ける……あ、舌打ちされた
でも、身体強化煌術のアパが付与された顎蹴りなんて、トリオン体でも大ダメージが――
なんてことを考えてたのが、つい数秒前
達人級の攻撃って、痛みがあとから来るってのは本当だったんだな……
だってまさか、顔面パンチが続けてくるとは思わなかったし読み逃した
踏ん張ったんだけど、じわじわ鼻先辺りから痛くなってくる
なんでこの術、痛覚オフにしてるのに痛くなるんだろう……って今は関係ないや
周りに誰もいないし、アユちゃんに掴みかかる勢いで抗議する
「お前の心なんか知るか。それにアパだと? 当たり前だろう。お前トリオン体なんだから、そうじゃないと痛くないだろうが」
「わざとなの知ってた!!」
「なら聞くな」
全く動じず、両腰に手を当ててふんぞり返りながらおれを見上げる彼女
いやまぁ、ちょっと可愛いとか思っちゃったけどそれどころじゃないんだよな!
「挨拶はこれくらいにして……何の用だ、じん」
えー、挨拶なのこれ~……っと、気を取り直して……
「防衛任務で、ここ一帯はおれの担当なんだけど、今からかなりの数のトリオン兵が現れるって、おれのサイドエフェクトがそう言ってる。単刀直入に言うと、殲滅を手伝ってほしいんだ」
「何故だ?」
「えっと……念の為、かな。おれがその後、本部に呼ばれるのが視えたから、遅れて城戸さんに怒られんの嫌だし」
おれ自身の未来は誰かしらの未来じゃないと視れないから、今回はボスのやつで
その呼ばれた所に、彼がいたからね
でもアユちゃんに手伝ってもらわないと遅れる、とかは視えない
だからこれは、おれの予想ってか……わがままだな
折角だし、どんな形であれ、もうしばらく一緒に居たいから
「それで、頼める――」
おれの言葉を遮るように、電気が弾けたような音が鳴る
今出るなんて視てないよ……あ、そうか。アユちゃんがいるから視えなかったんだ!
人が話してる時に……おれは一旦納刀した風刃を、再び抜こうとした、とほぼ同時。
「月よ、力を……」
アユちゃんの足元に銀光の魔法陣、みたいなものが表れる
そこから自然と風が上昇して、ちいさな光の粒と共に、彼女の長い一括りの髪が靡く
おでこの紋様もちらちら見えて、綺麗だなぁ……にしても、おれの役目はないな、これ。
まず出てきたのは、バンダーか。大体は砲撃した後のスキを狙うんだけど、銀って確か……
思ってた通り、ちょうどアユちゃんの横に光粒が集まっていき、形成していく
やがて立体のひし形を、長細く伸ばしたものになり、光の状態から鉄の様に
そして彼女はバンダーの急所、口内の眼球を、左手で銃を撃つような感じに指さして
「ジェダ」
そう零した瞬間、弾丸の様に飛んでいった銀柱
ダーツの的真ん中へ当てるみたいに、見事命中した
銀の煌術は確か、当たれば即死する効果があるって前言ってたな
トリオン体とかトリオン兵でいうなら緊急脱出と機能停止だけど。
暴れる前に事切れたバンダーは、ゆっくりと横に倒れていった
「トリガー、起動」
ズボンのポケットから出した左手には、彼女専用の銀トリガー
言葉を紡ぎながら上へ投げて、それが浮いたまま換装していく
「これでさっきの借りは返した」
轟音を背景にだけど、アユちゃんの声は、おれの耳にしっかり入ってくる
「だから今からの貸しは、後日改めて払ってもらうぞ、じん」
長いバッグワームに、顔を被うペルソナ
槍の専用武器、白銀孤月を携える“この人”は、仮面の奥でニヤリと笑った気がする
「了解、ネア」
こういう所は、昔からなにも変わってない。おれが彼女に惹かれる部分のひとつ
アユちゃんはアユちゃんで、おれはそんな彼女が好きだって事
今までも、これからも、絶対に変わらない
実はアユちゃんが、近界民であろうとも。
*