code.18【それぞれの正義】
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十二月十五日、日曜日。時刻は午前八時を回った頃。
鮎の予想した通り、迅は玉狛第一の三人へ中学生組三人の師匠になるよう指示していた。
腐れ縁だからなのか、彼の考えていることが大体分かるのだろう……本人は認めないだろうが。
「そういえば、迅さんはコーチやらないの?」
支部長の命令と聞いて途端に大人しくなった小南に、相変わらずだなと思いながら、扉横の壁に背を預けて中の様子をちらりと見る。
どうやら宇佐美も気になったらしく、彼に聞いてみたようだ。
因みにどら焼きの件は、割って入るより頃合を見た方がいいと判断した。
「ん? おれ? おれはアユちゃんの愛のコーチ……」
冗談か本気か知らないが、本人が居ても居なくてもドン引きものの発言。
そして運の良い? いや悪いことに、その本人がじとーっと睨んでいるのと目が合ってしまった。
「……っていう冗談は置いといて、今日は抜けさせてもらうよ。いろいろやることがあるからな」
結局冗談で片付け、自分は最初に部屋を出ようとする。
「じゃあ後でね」
ドアをくぐったことによる死角で、その場を動いていないアユに声をかける。
もちろん小声で、軽く手を振って。
「あ、アユちゃん」
次に出てきたのは宇佐美。その次はレイジと千佳。
栞はそれ以上何も言わず、こちらも手を振ってから先に行ってしまった。
おそらく訓練の準備があるのだろう。
「またな、ちか」
「うん!」
頑張れとはさっき言ったので、ご飯時にでもまた会おう的な意味を込めて見送った。
レイジの方は一瞥しただけだったが、普段から冷静な彼はこれが普通。
そして次は、京介と修。
先頭の師匠(仮)は彼女に軽く頭を下げて、後ろの弟子(仮)は冷や汗をかいた顔で若干俯いてる。
烏丸の行動には気付かなかったようだ。
「こなみさん、ちょっと」
残るメンバーは、桐絵と空閑と陽太郎。
親友達には特に不思議がられることなくやり過ごせたので、周りを気にせず目的が果たせる。
念のため、名字呼びで部屋を出る前に止めた。
「な、なによ……あ、あんた」
嘘をつくのが苦手な彼女は、ボロが出ないよう言葉を選んでいるようで。
後輩をチラチラ見ながら、冷や汗をかいている。
「……ふっ、今は普通でいいよ、きりえ。ゆーまは私の正体知ってるからな」
「なっ!? じゃあ最初からそう言いなさいよ! 無駄に緊張しちゃったじゃない!」
実は反応が面白くて、わざと焦らしていたとは言わないでおく。
因みに遊真の方は、黙って成り行きを見守ったまま。
「で、わざわざ呼び止めてどうしたのよ」
腕を組み、ぷいっとそっぽを向きながらも、続きを待ってくれている。
可愛いところもあるなと思いながら、ほい、これ、と後ろに隠していたものを掲げた。
「昨日じんに言われて買っといたんだ。お前の分だから、食べられないようにしろよ」
『和菓子 鹿のや』と書かれた紙袋の中身は、勿論どら焼き。
なんやかんやでやっと渡すことが出来た。
「あ……アユ〜〜〜!!」
「お、おいきりえ、どら焼き落とす……」
本日二度目のハグ。先程は横から、今のは正面から。
身長は鮎の方が少し高いので、ちゃんと受け止めてくれた。
「(なるほど、この二人は仲良いのか)」
特に何も言わず、目も口も三にして空気状態の白少年。
迅と仮峰が仲良いのか悪いのか結局分からなかったので、こっちはそうでもないのだなと自己完結。
「……こなみとアユ、なんでさっきはよそよそしかったんだ?」
そして大きな欠伸をしながらも、未だに状況を理解していなかった陽太郎。
「あんたねー、昨日うさみから聞いてなかったの?」
「……ぐぅ」
「寝てないで聞きなさいよっ!!」
自分で質問したくせに、もう鼻ちょうちんを作って夢の中。
再び逆さにされるが、起きる様子はない。
いつも通りのようで少し違う、よくある日常。
きっとこれからは、人数が増えるのだろう。
その中に自分が入れる日は来るのだろうか、なんて。
ガラにもなく、不安になった。
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