code.13【心臓と副作用】
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坂を上がりきり、続いて階段も上がりきると、山守神社と刻まれた鳥居。
社がひとつだけの小さな所で、建物はボロボロ。
どうやら神主も、神様も居ないようだ。
「おぉ〜、いい感じのところだな」
「そうかな……人が来ないし、場所もちょうどいいから、ときどき隠れ家に使わせてもらってるの」
「ほほう、しぶいね」
木は伸び伸び、落ち葉は落ち落ち、鳥の羽根もふわふわ。
夜だと怖そうだが、昼なのでそっちの心配は無し。
思ったより高評価だったので、千佳は照れている。
「あぁ、確かに……良い所だ」
隠れ家、という親友の言葉に喝を入れるかと思ったら、それよりも。
一番後ろで振り返り、髪が靡く中、景色を見つめる。
「……こういうとこ好きなのか?」
「高い所が好きなんだ」
ぐるりと見回してから、変わった趣味だな、みたいな漢数字の三の目をされる。
さっきいい感じと言ったくせに。
放っておくと誤解を生むので、ちゃんと訂正しておいた。
彼女の好きな物は、高い所とミルクティー。
三門市で一番高いボーダー本部の屋上は、お気に入りのひとつだ。
「ま、オサムを待とうぜ」
三人で賽銭箱前の階段に座り、各々頼んだバーガーやジュースを出す。
普通のハンバーガー、チーズハンバーガー、てりやきバーガーなど。
後はポテトもシェアしながら、ふと千佳が口を開く。
「遊真くんって……本当に近界民なんだよね?」
「ほうだよ」
「食いながら喋るな」
「んむ……どうも」
遊真を挟んで食べる面々。
行儀が悪いと注意ついで、ほっぺたについたソースを備え付けのナプキンで拭いてあげた。
彼が歳上なのに、どうしても見た目と身長は逆。
まるで姉のようだと、なんだか微笑ましくて心中で零す。
「あ、でもおれは、この街を襲ってるやつらとはカンケーないよ」
「うん、修くんにそう聞いた」
「チカとアユはそれを信じるのか?」
「うん、修くんは信じられる人だし……それに、遊真くんは怖くない」
「グルなら私達を助けないだろ。この目で見たから尚更な」
「……そうか」
敵と判断していたなら、千佳の副作用が発動する筈。
兆候はないし、自覚もない。
何より全く危害を加えられていないし、むしろ守ってくれている。
隠れ隊員から見ても確実。
「あのね……遊真くんに、訊きたいことがあるんだけど……」
「ふむ?」
意を決して、コップを握りながら千佳は切り出す。
様子から何を知りたいのか、察しはついている。
でもここで止めるなど野暮なので、黙ってバーガーに被りついた。
「ネイバーにさらわれた人は、ネイバーの戦争に使われるって言ってたでしょ? それって、どんなふうに使われるの?」
「ふーむ。それは、さらわれた国によるかな」
「国?」
まさか近界民の世界も、こちらのようにいくつもあるとは知らなかったので驚く。
「そう。あっちの世界にもたくさんの国があって、それぞれの国でスタイルがちがうんだよ。こっちの世界に来ているネイバーも、同じに見えて別々の国のネイバーだったりする」
「そうなんだ……」
「ふーん。(何処で見分けるかは知らんが)」
殲滅歴は長いものの、特徴とか見分け方とかは聞いていない。
多分教えられても面倒がるだろう、彼女の場合。
もしかしたらエンジニアあたりが把握してるかもしれないが、そこまで躍起になる案件でもない。
政治や国柄でよく聞く話だと思う。
都市が発展している所、未だに戦争している所、逆に全く戦争していない所。
共通事項は、強者か弱者か、ということ。
「じゃ、じゃあ、さらわれた人がむこうで生きてるってことも!」
「ふつうに、あると思うよ」
「そっか、そうなんだ……」
彼女も明るい性格ではなく、静かな方だと思う。
表情はほとんど変わらないが、何かに安心したように見えた。
「なんだ? だれか知り合いがさらわれたのか?」
「ううん、ちがうの。ちょっと気になっただけ……なんでもない!」
「……おまえ、つまんないウソつくね」
「えっ!?」
三輪隊の時と似たような、確信をつく口癖。
ただ、興味本位で済まないのだと。
「こっちにだけしゃべらせて、そっちはヒミツかー。まぁいいや、あとでオサムに訊こう」
「えぇ!? わぁごめん、待って待って!」
「クッ……」
眉を下げて三の目、ふい〜っと溜息もひとつ。
やり取りが面白くて、つい口角が上がる。
コイツらといると飽きないな、と実感しながら。
*