code.12【パンかご飯か】
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三輪隊の面々が退散して、ひと段落。
話を切り出したのは、一番年上の青年。
「さてと、三輪隊だけじゃ報告が偏るだろうから、おれも基地に行かなきゃな……メガネくんはどうする? どっちにしろ呼び出しはかかると思うけど」
「あ、じゃあぼくも行きます。空閑と千佳と鮎は、どこかで待っててくれ」
一視点からの状況では、どうあっても抜けが出る。
今回の場合でいうと、例えるなら被害者と加害者。
性格にもよるが、自分達に有利な誤報をされても困るので。
「千佳、鮎。空閑はまだ日本のことよく知らないから、面倒見てやってくれ」
「うん、わかった」
三雲からのお願いに、仮峰も無言で頷く。
自分も最初そんなだったな、とほんのり思い出しながら。
「じゃあ三人とも、またあとで」
お先に駅を出ることになった二人。必然的に、迅と目が合う。
正確には、自分を見つめていた彼と。
迅悠一という男は、普段から口角が少しでも上がっているタイプ。
悪くいうと作り笑いなのかもしれないが、良い所でもある。顔が良いので尚更。
だからいつもの笑みを返したつもりだったのだろう、その時は。
「(なんだ? じんのやつ……)」
大人びた少女の反応で自覚する。
微妙な違和感が、隠しきれていなかったことに。
踵を返した彼からすれば救いの。
無人の駅では目立つお腹の音が、隣から聞こえる。
その間に、迅と修の姿は見えなくなっていた。
「んぉ、これはおはずかしい」
「……そういやそろそろ昼飯時だな」
「じゃあ、おさむくんが戻ってくるまで、何か食べて待ってようか」
当事者も居なくなったため、考えるのをやめる。
流れ的にごはんタイムの方が頭を占めた。
「うん、だったらチカとアユの好きなものがいいな。チカはなにが好きだ?」
「えっと、白米かな」
「はくまい?」
「うん、白いご飯!」
「(可愛いなおい)」
人間、好きなものが目の前にあったり想像したりすると自然と笑顔になると思う。
親友の満面笑顔が心臓に刺さり、誰も居ない方を向いて悶えた。
そろそろお気付きだろうが、仮峰鮎は案外と可愛いものが好きなのである。
「ふーん。じゃあ、アユは?」
「私か? 食べ物は特に好き嫌いが無いんだが、飲み物ならミルクティーだな」
「みるくてぃー?」
「紅茶っていう飲み物に、牛乳を足したやつだ」
なんとか持ち直して、自分の好物を教える。
前の世界でも、同じようなのはあった。違うのは、使う葉と名称。
サプの葉というのを使った、サプ茶。こっちでいうハーブティーに近い。
「ふむ、よし……ほい」
何に納得したのか、頷いてポケットを漁る。
取り出したのは、一万円札の束。
公衆の面前で取り出すなと、修からあれほど言われたろうに。
他に誰も居ないからギリギリセーフだが。
突然の大金に驚く千佳と、呆れ顔のアユ。
「はくまいとみるくてぃーは、どこへ行ったら食べられるんだ?」
「うーん……白米は、定食屋さん。ミルクティーは、カフェかな」
「食べるんじゃなくて飲む、な」
「ていしょくとかふぇじゃなくよ、はくまいとみるくてぃー!」
なんとも低レベルな会話になっているが、まだまだ玄界初心者なので仕方がない。
何しろ肉や魚ならまだしも、目的が難しいので。
「白米だけを食べさせてくれるお店は……ありそうで無いかも」
「ミルクティーはまぁ、コンビニとかにもあるだろうがな」
「……やっぱり紙のお金のチカラではムリな注文だったか」
あれやこれやと論争する中学生達。
一人勘違いしているが、既に慣れたので指摘は無し。
「……そうだ! アユちゃん、ちょっといい?」
「ん、なんだ?」
すると何か思いついたのか、いつもとは逆の親友が手招き。
身長差的に千佳が背伸びしないといけない内緒話。
今日は電車のホームと線路でかなりの高低差。
膝を折る少女の丁度口元が頭なので、鮎が寄って提案を聞く。
「……なるほど、それは良いな。賛成だ」
「じゃあ、わたしは一旦家に戻るね」
「分かった、後で連絡する」
作戦とは大袈裟なものの、流れは固まったようで、一足先に少女が駅を後にした。
精一杯手を振る友に、微笑みながら振り返した。
「二人だけで何はなしてたんだ? ちかは?」
取り残された感満載の遊真は、口が数字の三になっている。
膨れてるというより、よく見るのでクセなんだろう。
仲間外れにした訳でなく、彼の為。
「おうゆーま、ちょっと私に付き合え。まずはミルクティーがどんなものか、教えてやるよ」
玄界歴は七年長い先輩として、案内役を請け持ったのだ。
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