code.11【暗黙の信頼】
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高度な駆け引きは、一瞬の判断で結末へ近付く。
「遊真くんのうでが!」
戦況を見守る中、一番慣れていない千佳の顔が青ざめる。
次いで、ずっと繋いでいる手に力が込められた。
一瞥した仮峰は、安心させる為にも握り直す。
「(ならさかほどの腕なら、即死させる為に頭を狙えたはず……それを空中で避けたのか)」
攻防の最中、追い詰められてしまった白少年。
左右がダメなら上に逃げる、道はそこにしかないから。
完全な不意打ちだった筈なのに、右腕が飛んだだけ。それでも充分な援護である。
「あ〜あ、やっぱ一対一で戦りたかったなー。反撃がなきゃ、イジメみたくなっちゃうじゃん」
欠損した部位から、先程のような煙が空に上がる。
線路上の遊真を見下ろす三輪と米屋。
余裕そうな口調の割には、隙を感じさせない。
同時に彼の言葉にもあるが、戦闘に対しての違和感。
「……そうだ、空閑にしてはおとなしすぎる。空閑はなんで反撃しないんだ? 空閑の強さはあんなもんじゃないはずだろ」
独りでに喋っているかと思えば、修の首元から黒い球体が。
見覚えのある顔が浮き出て、それがレプリカだと理解した時、横のアユは無言で目を見開いた。
分裂出来るのかと、小さくても可愛い、の二重の意味で。
彼曰く、理由はふたつあるという。
ひとつめは、相手の位置取りが上手く、隙や死角を逃さず突けるところ。
更に狙撃手も相まって、広い場所に出ようとジャンプした遊真は、かっこうの的。
「ゆーまがどんな手を使おうと、臨機応変に対応出来るってことか」
「おそらく」
とても分かりやすい解説をしてくれるレプリカ。
実際その通りの戦法なので、何も間違いがない。
「じゃあ普通に、手も足も出ないってことなのか!?」
「いや、確かに手強いが、ユーマが勝てない相手ではない。ユーマが反撃しないふたつめの理由は、オサムの立場を考えているのだろう」
「ぼくの?」
ピンと来ていない本人はさておき、年数上察しのいいカリューネアは理解した。
「オサムがせっかくB級に上がったのに、自分を匿っていたせいで、それが無に帰すかもしれない。そう思って平和的に交渉しようと試みたが、相手は聞く耳を持たなかった」
「(禁句言ったのもあると思うが、あれは仕方ないよな。元はと言えばアイツのやり方の問題だし)」
無駄な発言はせず、聞き専に徹する。
途中、腐れ縁の所業を噂したが、彼は今トリオン体なので、くしゃみなどしないだろう。
「オサムの立場を悪くしたくはないが、かといっておとなしく殺されるわけにはいかない。いまユーマは、いかに穏便に相手を無力化するかと考えてるだろう」
「穏便に……そんなやり方で勝てるのか!?」
「私は難しいと思うが、決めるのはユーマ自身だ」
あくまで判断は本人に任せる主義らしい。
教育的に素晴らしいと思う。
それはさておき、不安ややるせなさが混ざり合い、歯を食いしばる修。
「シルザード。今すぐ動く必要は無いが……万が一、ちか達に危険が及ぶようであれば……生身でも討てるよう、準備しておけ」
戦況に集中しているだろうが、念の為小声で指示を出す。
トリオンを使わない攻撃方法くらい、彼女は心得ているから。
ふと、今まで黙っていた親友が一歩踏み出し、口を開いた。
「遊真くんって、本当に近界民なの?」
千佳にとっての近界民は友人や、恐らく兄を攫った存在。決して好印象ではない。
だからこそ、疑問が浮かんだのだ。『空閑遊真』という人間に。
「……そうだ。でも他の近界民とはちがう。ぼくは何度も空閑に助けられたし、近界民だけど、空閑は友達だ。千佳と鮎は、どう思うんだ?」
思えば待ち人は共通していたのだから、同じ場所で鉢会うのは必然だったのだろう。
ただ、集合時間より早く来てしまって。
不安な自転車の練習に付き合い、川に落ちた。
運悪く、トリオン兵が現れる。
絶体絶命のピンチに、助けてくれたのだ。
「……うん、わたしも……近界民でも、遊真くんは怖くない」
お互い名は名乗った。少なくとも、顔見知りより知り合い寄り。
話していて嫌悪感はあったのか?
ならば自転車を押したりなんかしない。
だって、面白くて、楽しかったのだから。
「近界民だのなんだの言う前に、アイツは私達を助けてくれた。信じる理由は、それだけで充分だろ。それに、レプリカと約束したしな」
一切表情の変わらない黒豆を一瞥する。
勿論心得ているし、無言は肯定ともいうから気にしない。
遊真と会った時から決めていた。
いつか、自分の世界の話をしたいと。
きっと実現出来る日を何処か確信しながら、少年を見守る。
*