Crerk.4【常識の相違】
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部屋の整理や家の簡単な説明は、就寝するまで続いた。
次の日、朝ご飯を食べた後に部屋へ戻ってから改めて見渡す。
「そういえば、わたしのにもつって……」
腕を組み、首を傾げて記憶を遡る。
今腰に付けているケアルリングを、何処から取ったかを。
とことこと廊下を出て、キッチンの手前にあるリビングへ。
入口から見えるソファーの上に、お目当ての古めかしい鞄を見つけた。
「あったあった、ポシェットもいっしょにはいってる」
昨日は緊急事態だったため、置いたままで。
元々腰に付けていたポシェットも確認し、中身は部屋で確かめようと肩紐を持った。
「……おもい」
ぐいぐい引っ張っても、ビクともしない。
持ち上げようとしても、全く動かない。
わたし、こんなおもいかばんもってたのか……と、大人の力を改めて思い知った。
それはさておき、ここで広げれば邪魔になるし、どうしようかと考え始めた時。
「あ」
若干睨みつけていた鞄が、目線より上にいく。
一瞬驚くものの、ごつごつした大きな手が見えて、納得した。
「これを部屋に運べばいいのか?」
「シグさん! わるいがたのむ」
「分かった」
振り返ると予想通り、逞しい身体のシグが、今の自分では重かったものを軽々と持っている。
鍛えられた筋肉が引き締まって、見るからに強そうで。
再び部屋へ戻り、真ん中辺りに置いてもらった。
「ありがとう、たすかったよ」
「いつでも言えよ」
「うん!」
最後に撫でてくれたシグは、部屋を後にする。
明日の仕込みの為に、店で作業するらしい。
実は一緒についてきていたイズミは、後ほど合流するとか。
「あの人には慣れた?」
「さいしょはおどろいたけど、シグさんやさしいひとだから、もうぜんぜん」
「そっか、良かった。もう心配ないね」
見ててもいいかい? とマリの隣にしゃがむ彼女。
いいよ、と返し、早速中身を床に並べていく。
「えーっと、ませき五しゅるいと、冒険記と……」
まずポシェットから、赤・青・紫・金、それぞれの玉が埋め込まれたアクセサリと、白の玉。
ここに昨日使った翠のケアルを足して、合計六色。
次に、鞄から装飾の凝った一冊の本。
といってもタイトルの表記はなく、所々擦れていたりとボロボロ。
長く使い続けていたのが伺える。
「あんたが着てた服は、洗濯して片付けてるよ。あと、ラケットもね」
「ありがとう、イズミさん。ふくはどうせおおきいし、ラケットも……いまはいいや」
身体が縮んだ影響もあり、どちらも使いこなせないだろう。
しばらくお休みである。
「これは……本?」
次々に確認しながら広げていく中、イズミは先程の書籍を手に取った。
「ううん、にっきだ。たびのおもいでとして、なにかあったらのこすようにしていたんだ」
正体は日記であり、マリの世界では冒険記と呼ばれていたもの。
クリスタルキャラバン皆が持っており、今までの出来事は大抵書き記した。
へぇー、中見てもいい? と聞くと、いいよ、と快く返事が来る。
まだ少し鞄の中身が出せていないので、視線は動かさずだが。
「ありがとう。なになに……みどりの美しい丘の間をぬうようにして、リバーベル街道を行くとベル川に出る。ベル川の水の流れはサラサラとおだやかで、張り詰めた気をいくらかほぐす。小鬼たちを退けつつ先へ進むと、虹のかかる美しい滝のある広場に出た。こんなに綺麗な場所なのに、まさかここでジャイアントクラブと戦うことになるとは……あれ、読めてるわね」
「そういえばそうだな……げんごはいっしょなのかも」
何枚か捲ったページに書かれていて、違和感を感じることなく読み上げた。
理由は不明だが、言葉の勉強はしなくていいみたいである。
「ふむ、しかし本当に魔物とかいるんだね。ジャイアントクラブに小鬼とは……」
ペラペラと他の日記を見ても、モルボルだとかクアールだとか。
改めて、彼女の経験は生半可でないことが窺える。
いつの間にかほとんど整理が終わったらしく、最後に一枚の丸めた紙が出てきた。
「わたしたちキャラバンでたびをはじめたとき、さいしょにでくわしたボスだ。おおきなはさみとするどいつめがやっかいだったな……お」
「ん、絵か?」
「あぁ、まんなかがわたしで、あとのよにんといっぴきはクリスタルキャラバンのなかま。せがひくいおんなのこはクレア=ギルダ。わたしとおなじかみのながいこはル・ジェ。かぶとのやつはシーベーグ。おとなしそうなおとこのこはフォックス。そらにういてるのが、このまえいったモグだ」
モノクロだが、絵描きさんの腕が良いのだろう、写真と並べてもおかしくない出来。
といっても、写真という技術が元から無かったのだろうが。
やっと全て出し終えた鞄を窓際でひっくり返すと、砂ゴミがバラバラと。
表面もはたいて、ソファに置く。
床には様々な荷物が、若干いびつに並んでいた。
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