Crerk.1【湿原の生命樹】
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今自分は、何故か真っ白な世界にいる
どうしてここにいるのか、いつ来たのか、全然覚えていない
でもこれは現実じゃないのだろう
こんな世界は見たことがないし、存在しないはずだ
そう思い始めた時、唐突に誰かの高笑いのような声が聞こえてきた
なんだ、これ……周りには誰もいないのに
次は、赤ん坊……怖くて泣いているような、聞いていて悲しくなる
次は悲鳴……うっ、頭が痛い……
何なんだこの声は……どんどん増えていく
男の声、女の声、子供の声、動物の鳴き声
何かを斬った音、爆発したような音、聞いたこともない短くて大きい音が繰り返される
耳を閉じても響いてくる……何故だ!
こんな所から出ないとっ……あ、とびら、扉が見える! あそこに行けば――
――マリ!!――
* * *
「もぉ〜、いつまで寝てるの? マリ」
「ル・ジェ……」
カラコロ、と軽やかな車輪の音が響く、ある街道。
青くて丸い草食動物、パパオの引く馬車の荷台で、彼女は目を覚ました。
「出発してからお昼過ぎたのに、ぜんっぜん起きないんだから!」
蒼い長髪に露出度高めな服に身を包む女の子、ル・ジェ。
種族は『我』の民、セルキー。
己を第一に考え、身軽な者が多いので、盗賊として名を馳せるものもいる。
彼女の場合は少し乱暴な面も多いが、故郷の特色もあり、仲間思いな所もちゃんとあります。
「まぁル・ジェ、マリは昨日の戦闘が響いてるんですよ。私達のために頑張ってくれたんですから、もう少しくらい休んで貰っても……」
荷台の外、パパオの手綱を操る、曲がった一本角のついた仮面に、人ではない手足と尻尾の青年、シーベーグ。
種族は『智』の民、ユーク。
彼の不可思議な容姿は、仮の姿であるから。
魔力に秀でているユークは、魂のみの存在であるが為、このような姿をとっているのだという。
因みに実家が(この世界での)錬金術師だからか、とても研究熱心で頭はいいが、たまにおちゃめな実験で仲間を振り回すこともある。
「えぇ〜! でもマリじゃないと、裁縫のノウハウ分かんないでしょ!? 村に帰るまでに母さんからのノルマ仕上げないと、吊るされるのよ!!」
「……どうせバレても吊るされるくせに」
ル・ジェの実家は裁縫屋。
しかし跡取りにしてはこれっぽっちも腕が上達せず、母親に叱られる日々。
そんな彼女を呆れた目で見るのは、身長は低いものの、槍を携え立派な鎧を着る女の子、クレア=ギルダ。
種族は『武』の民、リルティ。
赤と黄のグラーデーションに、頭頂部のみが長い髪型なのは、種族的特徴。
実家は鍛冶屋で、既に一人前の仕事をこなすクレアは、ル・ジェと度々喧嘩することが多かったり。
「何か言ったぁ!? ナイト・オブ・タマネギ!!」
「言ったわねこの牛乳女!!」
「また始まった……」
他にも多々理由はあるが、やはり喧嘩が始まる。
「ちょっちょっと二人とも……マリの身体に響くし、落ち着こうよ――『フォックスは黙ってて!!』
「えぇ〜……」
止めに入ろうとした茶髪の男の子、フォックス。
種族は『温』の民、クラヴァット。
四種族の中で温厚であり、争いごとを好まない考え方。
パーティの中に一人いれば、雰囲気を和ませてくれる……のだが、女子の圧力が強く。
「だめだめクポ……」
彼の傍で翼を羽ばたかせ、宙に浮く丸々した白い生き物、モーグリのモグ。
フォックスの家に住んでるようなものなので、気心の知れた仲。
ついでにツッコミもこなすので、いると助かる。
「フッ、ククッ……全く、お前達は……」
今まで黙って成り行きを見ていた女は、遂に笑い出した。
他の者達より、年長者と伺える容姿。
髪は腰に至るまで長く、色は水色と、毛先だけ茶色。
まるでル・ジェとフォックスの色を足したような。
それだけでなく、瞳は右が黒、左が緑。
理由は彼女、マリ・ヒンが、二種の血を持つハーフ。
クラヴァットの母と、セルキーの父の間に生まれた者だからだ。
出産して間もなく母親は死去し、残った父は娘と共に、自らの故郷、ルダの村へと赴く。
しかし、我の民というだけあって、男はまだしも、狭間の娘は疎がられた。
そして八年経ったある日、父は病気で、突然母と同じ元へ。
守ってくれる人間が居なくなり、マリはいとも簡単に村を追い出される。
元々離れ小島にあり、脆い船に無理やり乗せられ、転覆の危険に何度も遭遇しながらも、大陸へ座礁。
海岸に倒れ、薄れゆく意識の中で死を覚悟した少女の元に、ひとりの老人が駆け寄り、助けてくれた。
彼こそがマリ達の住むティパの村の村長であり、育ての親。
そして、マリ・ヒン、ル・ジェ、シーベーグ、クレア=ギルダ、フォックス。
彼女等は、クリスタルキャラバン。
つい数ヶ月前まで、この世界に蔓延していた瘴気から故郷を守るため、ミルラの雫を求めて旅をする者達の総称。
現在は根本の原因を絶ったため、平和になった世界を観て廻ろうということになり、旅を続けて、今に至る。
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