貴族の令嬢

「助けていただき、ありがとうございます。」

「ありがとう。」

「礼などいらん。私はただ邪魔物を片付けただけだ。それよりもそこで倒れているゴリラ顔(隊長)とアソパソマソ(ディック)の心配をしてやれ。虫の息だが二人共、生きているぞ。」

「「!?」」

「う……うぅ……」

「うっ……くっ……」

「ディック!!隊長!!」

「く、クイン……」

「お嬢様は……?」

「私とクインも大丈夫です。あの方のおかげで。」

「………」

パァァァ・・・

「「「「!?」」」」

ネスは無言で右掌から魔力を放出し、隊長とディックに流し込む。

すると次の瞬間、二人の傷はあっという間に完治する。

「!?傷が……!?」

「これはあなたの魔法ですか!?」

「勘違いするな。私が斬った訳でもないのに目の前で勝手に死なれたら寝覚めが悪いと思っただけだ。」

完治した自分の身体を見ながら隊長がそう困惑の声を上げるなか、そう尋ねる令嬢に対し、ネスは無表情のままそう言う。

「ッ!!ダインは!?」

「ダイン?アレのことか?なら、諦めろ。アレは流石に無理だ。」

そう言うネスが指差す先には色々とグチャグチャになっている騎士の死体があった。

「クイン。ディック。」

「はい……」

「ッ……」

隊長の意図を察したクインとディックはダインの遺体を布で包み、即席の棺桶代わりの木箱に入れ、馬車に積み始める。

「遺体を馬車に積むのか?」

「ダインはお嬢様を守るために勇敢に戦い、あなたという救世主が来るまでの時間を稼ぎ、命を散らせました……せめて、きちんとした場所に埋葬してやりたいのです。」

「………」

パァァァ・・・

「「「「!?」」」」

ネスは何も言わずにダインの遺体入りの木箱に氷属性の魔力を纏わせる。

「そのままだと何時、腐るかわからんからな。少なくともこれで一週間は持つ。」

「本当に色々とありがとうございます。私、ブルッグル家の長女、メイリー・ブルッグルと申します。」

「……ネス……」

その後、そう自己紹介してくる令嬢、メイリーに対し、ネスもそう自己紹介する。

「ネス様。あなたのおかげで被害を最小限に抑え、私達は助かることができました。何かお礼をしたいのですが、私達はこれからサンヨウの町で領主と会談する約束をしておりまして……」

「ほぅ……なら、ちょうどいい。私もその町に用があるからそこまで乗せていけ。それを礼として受け取ろう。」

「本当ですか!?わかりました!!」

「どうぞこちらに。」

こうしてネスはメイリー一行の馬車に乗り込み、サンヨウの町へと向かった。
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