身体強化と近接戦について

それから一週間、ネスは基礎魔法の担当の新人教師にも事情を説明し、授業時間も魔力のコントロールの訓練に当ててもらってキャリー達の訓練を診ながら協力者の影を追った。

一週間後、グラウンド・・・

「それじゃあネス君。君の研究発表を聞かせてもらっていいかな。」

「はい。」

魔法実技の担当教師に呼ばれた後、ネスはそう返事しながらルドカーやキャリー達を含む生徒達の前に立つ。

「私の研究発表は『身体強化の使い道と近接戦対策について』です。」

「身体強化の使い道と近接戦対策?」

「はい。私がこれまで見てきたなかで身体強化の一般的な使い方は防御と回避のみです。しかし、この身体強化に属性を付与させることで攻撃に活かすことができます。」

「なるほど・・・」

「並びに一般的に魔導士の弱点とされる近接戦にも対応できるようになります。」

「何をバカなことを!!近接戦は野蛮な兵士がすること!!我々、魔導士には不要なスキルだ!!!」

真剣な表情でそう発表するネスに対し、貴族であろう男子生徒がそう言って噛みついてくる。

「ふぅ……確かに共に戦ってくれる前衛の騎士がいる者には不要なスキルかもしれません。が、何が起こるかわからないのが戦場というもの。詠唱している間、前衛の騎士が捌ききれない程の強大な魔物の群れと遭遇した場合、或いは腕利きの剣豪と一対一で勝負せざるを得なくなった場合、近接戦のスキルを持たない魔導士は生き残ることが難しい。」

「ッ……」

「尚、この属性を付与した身体強化は基礎さえできていれば簡単に習得することができ、また、発想次第では複雑な魔法式の構成が苦手な者でも高度な魔法式を扱える魔導士にも劣りはしない技を会得することが可能です。」

そう言うネスの言葉にキャリー達、基礎魔法組を始め、複雑な魔法式の構成を苦手とする者達が反応する。

「口で説明しても理解はできない人もいると思いますので……マルチス先生。お願いします。」

「まさか、自分の担当じゃない授業に出ることになるとはね。」

パァァァ・・・

事前にネスに頼まれていたマルチスはそう言いながら大量のゴーレムを造り出し、ネスを取り囲むように配置する。

「………」

バチッ!!・・・バチッ!!

ネスは雷の身体強化を使い、雷を帯び始める。

「いくよ!!ネス君!!」

マルチスがそう言った瞬間、ゴーレム達は一斉に一流の剣士並の動きでネスに襲いかかってくる。

対するネスは無駄のない動きでかわしながら、雷を纏わせた手刀や蹴りでゴーレムを斬り倒していく。

まるで舞を舞っているかのようなその動きに先生や生徒達は魅了されていく。

(残りは七体……一気に決める!!)

そんななか、ネスはそう思いながら全身に行き渡らせた雷の魔力を右腕に集中させる。

バチッ!!バチチチチチッ!!

次の瞬間、ネスの右腕を包み込む程の“雷の刃”が形成される。

「はあああぁぁぁーーーっ!!」

ズバアアアァァァンッ!!

次の瞬間、ネスはそう言いながら右腕の刃で一閃。

残り全てのゴーレムを一掃した。

「俺……近接戦対策に少しだけ身体強化を使った戦い方をマスターしようかな……」

「おまえ、本気か!?」

「だってよぉ……あれを見たらよぉ……」

「身体強化か……」

「それなら私達も……!!」

その後、授業が終わった後、生徒達からそう言う声がちらほらと聞こえてくる。

そんな声を他所にネスはキャリー達と合流し、いつも通りの訓練をしに森の中へと入っていった。
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