領主とエルフ

(瞳に光が宿っていない……例の制限とやらで感情が抑え込まれているのか……)

「エルフの奴隷ですか。」

「えぇ。流れの奴隷商から一目で気に入り、購入しました。エーテル。挨拶しなさい。」

ネスがそう思いながら観察するなか、そう言うメイリーにそう答えながら領主はエーテルに挨拶を促す。

「………」ペコリ

対するエーテルは無言のまま、会釈するだけだった。

「もしかして、彼女は喋れないんですか?」

「如何にも。奴隷商から提示された契約の絶対条件として首輪に制限をかけられ、感情も抑え込まれています。エルフは詠唱を必要とする高位の術を得意とするものが殆んどですからそのせいでしょうな。」

「……領主様は何処の商会で此方のエルフの奴隷を購入されたのですか?」

「え~と、確か、エーテルを連れていたあの男は『ヴィアイン商会』と名乗っておりましたな。あまり聞き慣れない名前ですがもし、エルフの奴隷に興味がおありなら今度、来た時にメイリー嬢のことを紹介しますよ。」

「……それはありがたいですね……」

そう言うメイリーはありがたいというよりシリアスな表情を浮かべていた。

(メイリー嬢はエルフ奴隷に興味がある訳じゃなさそうだな……一体何が目的なんだ?)

「それでご相談というのは」

「一つ、質問してもよろしいですか?」

「何ですか?ネフティス嬢。」

「領主様はこちらのエルフとは正式な手順を踏んで契約をされたんですか?」

「?何を藪から棒に……当たり前でしょう?」

ネスの質問の意図がわからなかった領主は首を傾げながらそう答える。

「(クスッ)嘘はいかんなぁ……嘘は……」

そんな領主の答えを聞いて、ネスは不敵に笑いながら、そう言いながらゆらりと立ち上がる。

(その笑顔は怖ぇな。おい。)

「う、嘘だと?」

「フフフ……私は少しばかし人の悪意には敏感でね。先程から僅かだが感じるんですよ。そのエルフの首輪から人間の薄汚い欲望の感情がね……」

そんなネスの笑顔にルドカーが密かにそう思うなか、そう言いながらたじろぐ領主に対し、ネスはエーテルに着けられている首輪を指差しながらそう指摘する。

「な、何をバカなッ!?」

この時、領主はネスから放たれる魔力と殺気に威圧される。

「フフ・・・」

「き、貴様は一体ッ!?」

ネスから放たれる魔力と殺気に威圧されるなか、領主はネスの特徴に気が付く。

「赤い髪に黒い瞳……まさか、貴様が……!?」

「安心しろ。貴様が知っていることを正直に話せば、命は助ける。」

「な、何の話だ?私はただ流れの奴隷商からエーテルを買っただけだぞ!!」

「ほぅ……」

ネスはそう言いながら領主に歩み寄る。

「ん?」

「………」

が、エーテルが領主を庇うように立ちはだかる。

「随分と強い制限をかけたようだな。」

「………」

「……状況がここまで極まってしまった以上、私達の本当の目的も話さなければなりませんね……」

「!?ほ、本当の目的!?」

ネスがエーテルを見ながらそう言うなか、そう言いだしたメイリーの言葉に領主はそう言って反応する。

「私達は父、ブルッグル伯爵の命を受け、ここ十年辺りで不自然に増加したエルフの奴隷の出元を調査するためにこの町に来たのです。」

そんな領主やネス達に対し、メイリーは真剣な表情でそう明かした。
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