お願い

その後、固まったルドカーを放置して、リリーから話を聞いたところ、リリーの母親が今、不治の病に冒されているらしく、上流貴族の出で帝都にある魔導学園では天才とも呼ばれているルドカーの回復魔法でも症状を和らげるのが精一杯とのこと。

尚、ルドカーとリリーは腹違いの兄妹でルドカーは自分の義理の母に当たるリリーの母親、マリアの治療を無償で行っていた。

「虫の良い話なのはわかってる。お金も何をしてでも払うからお願い……お母さんを助けて……」

「いや。金は俺が出す。実家の金じゃなく、ギルドで稼いだ俺自身の金でな。」

一通りの説明をした後、リリーとルドカーは真剣な表情でネスを見つめながらそう言う。

「……金はいらん。リリーにはさっき、店に案内してもらった借りがあるからな……その母親の所に案内しろ。余計な仕事はさっさと終わらせたい……」

「ネスちゃん……ありがとう!!」

「ッ……すまねぇな……」

そうしてネスはリリーとルドカーと共に家へと入る。

リリーの案内で二階の寝室に入るとリリーによく似た、痩せこけた女性がベッドで寝たきりになっていた。

「あら?ルドカー。治療は一昨日、してもらったばかりだと思うけど?」

「マリアさん。今日、治療するのは俺じゃない。こいつだ。」

首を傾げながらそう尋ねる女性、マリアに対し、ルドカーはネスを指差しながらそう答える。

「?あなたは?」

「ただの通りすがりの旅人だ……覚えておかなくていい……」

首を傾げながらそう尋ねてくるマリアに対し、ネスはそう答えながらマリアの容態を診始める。

(診たところ、腎臓が酷く弱ってるな……なら、腎臓を中心に回復魔法をかけていくか……)

パァァァ・・・

ネスはそう思いながら腎臓がある部分に両手を当て、魔力を流し込み始める。

「お、おい。本当に大丈夫なのか?」

「黙ってろ。集中している。」

恐る恐るそう尋ねるルドカーにネスがそう言うなか、マリアの顔色がみるみる内に良くなっていく。

「お、おぉ……?」

「お母さん……」

そのことに困惑の声を上げながら、マリアは立ち上がる。

「ふぅ……治療は終了だ……」

「立った……お母さんが立ったあああぁぁぁーーーっ!!!」

ガバッ!!

次の瞬間、リリーはそう言いながらマリアに抱きつき、親子は喜び合った。
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