『希望の翼』・・・

「フェンさん。あの人は大丈夫ですか？」

セッテを連れて戻ってから一時間後、セッテの容体を診たフェンに対し、ノゾミはそう尋ねる。

「たいしたケガもしてなかったから大丈夫だよ。ノゾミちゃん。気を失っているのは多分、精神的な疲労によるものだと思う。」

「そうですか……じゃあ私、ちょっとあの人の様子を見てきますね。」

対するフェンからの答えを聞いた後、ノゾミはそう言いながら、二階の寝室で眠っているセッテの元へと向かう。

「気付いているか？にとり。私達が運んだあの少女……」

「うん。エンジニアの私から見てもあの子は多分、阿号と同じ、いや、それ以上に人間に近く造られた存在だと思う……」

ノゾミがセッテの元へ向かった後、真剣な表情でそう言う阿号に対し、にとりも真剣な表情でそう言う。

「ノゾミはこのことには気付いているのか？」

「……多分、気付いていると思う……」

「………」

二階、寝室・・・

「うっ……ここは……」

その頃、二階の寝室で眠っていたセッテはそう言いながら目を覚ます。

ガチャッ！！

「あ。目を覚ましたんですね。」

「！？」

すると次の瞬間、ノゾミがそう言いながら入ってくる。

「あなたは……？」

「あ。そういえば、こうして会うのは初めてでしたね。はじめまして。私はノゾミ・ナカムラって言います。あなたは？」

「私は……」

笑顔でそう自己紹介するノゾミに対し、セッテはそう言いながら名乗ろうとする。

(あれ？私って……何て名前だったっけ……？)

「……セッテ……」

それでもなんとか浮かびはした『セッテ』という名を名乗る。

「セッテ……それがあなたの名前ですか？」

「……わからない……」

「え？」

「今、ふと浮かんだ言葉を言っただけでそれが自分の名前なのかどうか……」

「！？もしかして、あなた……記憶がないんですか！？」

「あぁ。だから、教えてほしい。ここは何処なんだ？なんで私はここに……？」

ゼウスに乗っ取られていた後遺症からか、セッテが記憶喪失になっているということにそう困惑の声を上げるノゾミに対し、セッテはそう尋ねる。

「あ。はい。ここは異世界、『ウェズペリア』の『アトラン王国』にあるギルド、『希望の翼』でーーー」

対するノゾミはそう言いながら自分達が今、いるギルド、『希望の翼』に関することやここに来る経緯について、説明した。