動き始める闇

「おや?Dr.スカリエッティにトーレさん。ここで何をしているのですか?」

そんななか、白衣を着た、人工キメラ制作者で転生者でもある黒髪の少年、御劔みつるぎりんを連れた加頭がそう尋ねながら歩いてくる。

「加頭……なに、ちょっとした世間話をしていただけだよ……君達こそ、こんな所で何をしているんだい?」

そんな加頭に対し、スカリエッティはそう答えながら逆に尋ねる。

「あぁ、どうもゼウス……セッテさんの捜索が難航してましてね。これから燐君にも捜しに行ってもらうところだったんですよ。」

「俺は部屋で寝ていたかったんだがなぁ……面倒くせぇ……」

対する加頭がそう答えるなか、燐は頭を掻きながらそう言う。

「?よく彼を部屋から連れ出せたね。確か、彼は自分で作った人工キメラと憎悪を向けている異世界、『ムンドゥス』、最高傑作を倒した少女以外には基本、興味がなく、部屋から出すには食事関連で釣るしかないんじゃなかったかい?」

「その食事関連で釣ったんですよ。最近、『ウェズペリア』の『アトラン王国』にある喫茶店、『Sweet』で新作スィーツが出たのでセッテさんを捜しに行くついでに食べに行ったらどうですか?と言ってね。」

そんな燐の様子を見て、首を傾げながらそう尋ねてくるスカリエッティに対し、加頭はポーカーフェイスのまま、そう答える。

「なるほど………」

「そうそう。折角ですからトーレさん。あなたも燐君と一緒に行ってきてくれませんか?」

対するスカリエッティがそう言って納得するなか、加頭はそうトーレに話しかける。

「私もか?」

「えぇ。燐君だけでは少々、心配ですし、あなた自身、ここ最近、セッテさんを捜しに行きたそうでしたので……」

「………」

「待て。俺も行く。」

そんななか、奥の方から燐と同じ転生者で幹部である白髪赤目の青年、白馬零斗がそう言いながら歩み寄ってくる。

「おや?零斗君。君にしては珍しいですね。」

「先程、部下の怪人共から時空管理局の『エースオブエース』、高町なのはと『雷光』、フェイト・テスタロッサ・アーチャーが『ウェズペリア』に入ったと報告があった。奴らは異世界、『ミッドチルダ』では英雄と呼ばれている……俺にとってはターゲットだ……」

「なるほど……では、燐君とトーレさん、零斗君の三人にお願いするとしましょう……」

「トーレ。セッテの捜索、頼んだよ。」

「了解です。ドクター。」

「あぁ、それと燐君。零斗君。ちょっと……」

「ん?」

「なんだ?」

スカリエッティとトーレがそう話をするなか、加頭はそう言いながら燐と零斗を手招きして、スカリエッティとトーレから少しだけ離れた所に移動する。

「(コソッ)今回はゼウスシステムに使っている三枚のコアメダルの回収を最優先に動いてください。そのためなら最悪の場合、セッテさんを犠牲にしても構いません。」

「……りょーかーい……」

「……わかった……」

スカリエッティとトーレには聞こえないよう、小声でそう言う加頭に対し、燐と零斗はそう返事をする。

こうしてトーレ、燐、零斗の三人はセッテを探しに『ウェズペリア』に向かうことになった。
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