思い出の断片

「!?」

声が聞こえてきた方を見てみると、隣の部屋のベランダにパジャマ姿のノゾミが出ていた。

「ノゾミ!?起きてたの?」

「うん。なんか眠れなくて。そういう時はこうして夜風に当たったりするの。」

「そうなんだ………」

「セッテは?」

「あ、あぁ、私もそんなとこ。」

「ふぅ~ん………」

その後、二人は一緒に夜風に当たる。

「……ねぇ。ノゾミ……」

「ん?」

「……ノゾミは私のこと、『Xマジンラー』に何処からか連れ拐われ、そいつらが造り出したライダーシステムの実験台にされた被害者かもしれないって言ってたけど……」

「………」

「もし、そうじゃなくて、私が……『Xマジンラー』のメンバーの一人だとしたら……どうする?」

「!?セッテ。もしかして、記憶が!?」

「いや。名前以外、まだ何も思い出せてない。けどさっき、妙な夢を見てな。」

「それって……もしかして、過去の記憶の……?」

「……多分……な……」

首を傾げながらそう尋ねるノゾミに対し、セッテは悲しみと不安が入り交じったような表情で俯きながらそう答える。

その後、二人の間に少しだけ沈黙が流れる。が、

「……それでも……セッテはセッテだよ……」

「え?」

「例え、セッテが『Xマジンラー』のメンバーの一人だとしても、私はセッテを助けてたと思う。ギルドでも言ったけど、やっぱりセッテのこと、悪い人だとは思えないし。『Xマジンラー』のメンバーだからって少なくとも、私はセッテのこと、嫌いになったりしないよ………だって私達、『友達』だもん!!」

思わずそう呆けた声を上げるセッテに対し、ノゾミは嘘偽りのない、純粋な笑顔でそう言う。

「?友達?私が?」

「え!?違うの!?もしかして、私の片想い!!?」

が、セッテからのまさかの言葉にノゾミは思わず慌てふためきながらそう言う。

「……ぷっ……あはははははははっ!!」

そんなノゾミを見て、セッテは思わず笑い始める。

「へ?」

「ご、ごめん。なんかノゾミが面白くてつい……」

「もぉーーーっ!!なにさ!?それぇーーーっ!!」

笑いながらそう言うセッテに対し、ノゾミはそう言って噛みつく。

そうして二人の少女は互いに笑い合う。

「あはは……なんかこんなに笑ったのは初めてな気がする……」

「?初めて?久しぶりじゃなくて?」

一頻ひとしきり笑い合った後、笑顔でそう言うセッテに対し、ノゾミは首を傾げながらそう尋ねる。

「うん。何故かはわからないけど、久しぶりというより、初めてな気がするんだ。」

「ふぅーん………」

「でも、おかげで気持ちが少しだけ楽になった……ありがとう。」

「……フフ♪どういたしまして♪じゃあ、私は眠くなってきたから寝るね。」

「あぁ、おやすみ。」

そうしてノゾミは笑顔でそう言いながら、自分の部屋に戻っていく。

「……私も寝るか……」

その後、セッテもそう言いながら自分の部屋に戻り、ベッドで横になる。

「……ありがとう……ノゾミ……」

横になった後、セッテは笑顔でそう言いながら眠りについた。
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