幻想入り。そして、出逢い・・・

「あれ?紫さん。こんなところに来るなんて珍しいですね。」

突然、現れた女性、八雲やくもゆかりに対し、にとりは首を傾げながらそう尋ねる。

「まぁね。ちょっと彼の様子が気になってね。」

対する紫はそう答えながら、阿号の方を見る。

「貴様。人間じゃないな……何者だ……?」

「フフフ……そんなに警戒しないでちょうだい。あなたを助けてあげたんだから……」

警戒しながらそう尋ねる阿号に対し、紫は手にしていた扇子で口元を隠しながら、不敵な笑みを浮かべながらそう言う。

「助けただと?どういうことだ?」

「フフフ……あなた……時を駆ける列車の終着駅、ターミナルで砂になって消えかかったでしょ?そんなあなたを砂からできるだけ元の状態に戻して、この『幻想郷』に連れてきたのは私よ。もっとも、完全に元通りとはいかなかったから、にとりの家の近くの森の中に置いて、にとりに後の修理を任せたんだけどね。」

「えぇ!?じゃあこの人、外来人なんですか!?」

「?幻想郷?外来人?」

紫の説明を聞いて、にとりがそう驚きの声を上げるなか、阿号は首を傾げながらそう言う。

「あぁ、まずはこの世界のことについて、説明しないといけないわね……」

そんな阿号に対し、紫はそう言いながら『幻想郷』について、説明を始める。

「ここは『幻想郷』と言って『外の世界』、あなたが今までいた世界とは“結界”で隔離された世界よ。」

「“結界”で隔離された世界だと?」

「えぇ。そして、『外の世界』では存在を忘れ去られたモノ達が行き着く世界よ……」

「因みにあなたみたいに『外の世界』から来た人のことをここでは『外来人』って呼ばれているの。」

「なるほど……」

『幻想郷』や『外来人』に関する紫とにとりの説明を聞いた後、阿号はそう言って理解する。

「そういえば、まだ名乗ってはいなかったわね。私は八雲紫。スキマ妖怪よ。」

「あ。私は河城にとり。見てわかる通り、河童だよ。」

「……私は阿号。ホラーを狩るために造られた人型魔導具だ……」

(?ホラー?)

「八雲紫と言ったか……何故私をこの世界に連れてきた?」

阿号が言った『ホラー』という単語ににとりが首を傾げるなか、阿号はそう紫に尋ねる。

「そうね……あなたをあのまま砂にするのは惜しいと思ったから……後は面白そうと思ったからよ……クスクス……」

対する紫は扇子で口元を隠しながら、不敵な笑みを浮かべながらそう答える。

「………」

「そんなに警戒しないでくれないかしら。別にあなたを取って食おうって訳じゃないんだから……とりあえずは明日、『博麗神社』に行きなさい……そこで『スペルカード』が貰えるから……」

「?スペルカード?何だ?それは……」

「フフフ……この世界で生きていくのに必要なものよ……」

クパァ

紫はそう答えながら、自身の背後にスキマを作り出す。

「!?」

「それじゃあね♪」

スキマを見て、阿号が驚くなか、紫はスキマに入って去っていった。

「もう。紫さんは相変わらずなんだから……」

「にとり……」

「ごめんね。阿号。紫さんは時々、あなたみたいな人を面白半分に連れてくることがあるの……帰りたかったら明日、『博麗神社』に行ったら、そこにいる巫女さんに帰してもらえるから……」

「そうか……」

(それにしては先程の八雲紫の口振り……まるでもうこの世界からは出られないみたいな言い方だったが……)

にとりの説明を聞いた後、阿号はそう答えながら思案する。

「ねぇ。阿号。今日はとりあえずここで休んだら?」

そんな阿号に対し、にとりはそう提案する。

「良いのか?にとり。」

「うん。正直こうして会ったのは何かの“縁”だしね。」

「では、お言葉に甘えさせてもらう……」

阿号はそう言いながら壁にもたれ掛かる形で腰を下ろし、瞳を閉じる。

「ちょっ、ちょっと阿号!!布団はちゃんと用意するから布団で……」

「………」

「ってもう寝てる!?はぁ~、仕方ないなぁ……」

にとりはそう言いながら、阿号に毛布をかける。

「私も疲れたから今日はもう寝よ……おやすみ。阿号。」

にとりはそう言いながら、二階にある寝室に向かう。

こうして阿号の『幻想郷』での最初の一日目は終了した。
4/4ページ
スキ