辿り着いた一つの答え

現在、本殿・・・

「……妖術、弐の型、“氷地槍剣”。」

「!?」

パキィィィンッ!!

夜見がそう言った瞬間、地面から槍のような“氷の剣山”が現れ、影アリスに襲いかかる。

影アリスは意表を突かれながらも、その攻撃をなんとかかわす。

「なっ!?まだ抵抗する気なの!?それにあなた、今、弐の型って……」

「ずっと考えてたんだ。おまえに『ジャック』を止めさせる方法と……おまえを『憎しみ』から救い出す方法……」

「……は?」

「私は聖に拾われるまでの約一月ひとつきの間だけだけど、もし、それが何年、何十年と続いたら、『怖い』とか『悲しい』とかに自分の心が耐えきれなくなって、『怒り』や『憎しみ』に形を変えて、きっと誰かにぶつけたくなる……今のおまえがまさにそうだ……」

「ッ!!聖!!」

「………」

「行かせませんよ!!聖さん!!夜見さんは今、彼女を救おうとしてるんです!!かつて、あなたが『半妖』である夜見さんと出会った時のように!!『影の国』のアリスさんに今、必要なのは『自分を理解してくれる人』なのです!!もう少しだけ、足止めさせてもらいますよ!!禁忌、『レーヴァティン』!!!」

ズガァァァンッ!!

フランはそう言いながら、聖に『レーヴァティン』を食らわせる。

「さっき、おまえが私を仲間に誘ったのも『理解者』が欲しかったからだろ。自分の気持ちを理解してくれるのは同じ『半妖』である私だけだと思ったから……違うか?」

「……同情なんていらないわ。私は単にあなたの“力”が欲しかっただけよ……どうして、あなたはそこまでして、この国を救おうとするの?あなたも私と同じ、人間にも妖怪にもなりきれない半端者……この世界は偽善者ばかりよ。誰も私達の気持ちなんて理解してくれない……そんな善人ぶってる連中を憎いと思わないなんてあり得ないわ……」

「……『憎しみ』は……何も生み出さない……私は聖に、ううん、おまえが『偽善者』だと言う人間や妖怪の皆に教えられた……私もここに来て、皆と出会わなければ……おまえみたいになっていたかもな……だったら……」

バッ!!

夜見は今まで口元を隠していたマントを外し、綺麗な素顔をさらけ出す。

「私がおまえのことを理解してやる!!おまえのこと、『憎しみ』や『悲しみ』から……私が全部、救ってやる!!それが今、私がここに生きている意味だ!!!」

「また訳のわからぬことを!!妖術、弐の型、“不知火”!!」

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

影アリスは苛立ちを露にしながらそう言った瞬間、二十弾の炎弾が夜見に襲いかかる。

「……妖術、弐の型、“氷地槍剣”。」

「!?」

パキィィィンッ!!

が、夜見は“氷地槍剣”で影アリスの“不知火”をかき消しながら、影アリスの身体も多少なりとも凍りつかせる。

「ま、また弐の型……あなたは壱の型しか使えない筈なのに……」

「別に使えない訳じゃないんだ。ただ凄く疲れるのと威力が強すぎて、ケガさせるから、なるべく使いたくなかっただけ……」

「……目の前にいる敵に情けをかけた上に手加減するなんて……あなた、絶対、早死にするわよ……」

「……心配してくれてるのか?」

バキィィィンッ!!

「違う!!私はあなたの態度と言葉にイライラしてるのよ!!言ったでしょ!!心や感情なんて邪魔なだけ!!!」

影アリスはそう言いながら、自分の身体に凍りついた氷を破壊する。

「憎い……同じ半妖なのに、人間と妖怪を憎まず、恨まず……『手を取り合う世界』だなんて儚い幻想を創ろうとしているあなたが……私はあなたのように……あなた達のようには生きられない……他人への『憎しみ』なしでは……もうこの世界を生きていけないのよ!!!」

「誰かを憎いと思う感情が生まれるのも心だ。おまえの『憎しみ』の根本にあるのは『虐げられる恐怖』と『誰も自分の気持ちを理解してくれない悲しみ』。でも、聖や私達が目指している『手を取り合う世界』なら、おまえを虐めるような奴なんていないし、仮に虐められたとしても、周りがおまえを助けてくれるぞ。気持ちを素直に伝えれば、時間はかかるだろうけど……おまえのことを理解してくれる奴だってきっと出てくる。私もおまえが頑張るのなら、協力するしな……おまえもこんなことはやめて、私達と一緒に目指さないか?」

「……無理よ……私にはもう……」

優しい笑顔でそう言う夜見に対し、影アリスは一筋の涙を流しながらそう言った。
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