辿り着いた一つの答え

本殿・・・

「禁忌、『クランベリートラップ』!!」

パキィィィンッ!!

「………」

フランはそう言いながら、弾幕の檻に聖を閉じ込める。

「思い出してください!!聖さん!!人間と妖怪が手を取り合う夢を!!あなたが本当に創りたかった国を!!!」

「妖術、壱の型、“白雷”!!」

バチィィィンッ!!

一輪はそう言いながら、影アリスに“白雷”を食らわせる。

「無駄よ。いくら語りかけたところで壊れた感情は元に戻らないわ。そして、『純潔の妖怪』のくせして、随分非力な妖術じゃない。」

「なっ!?どういうことです!?直撃したのに無傷とは……!?」

「……もう種明かししてもいいかしらね。あなた達の妖術が私に効かないのは私自身の『理』が『私の知る妖術全てを受け付けない身体』になっているからよ。そして、私は壱から参の型……全ての妖術が使える半妖……『私が知らない妖術』があるのなら話は別だけど、あなたじゃ私を止めることはできないわ。諦めることね……」

「……『諦めろ』って言われると、余計に挑みたくなっちゃうんですよね……なので夜見さんや聖達、この国の人々のためにも……全力で悪足掻きをさせていただきます!!雲山!!」

「………」

「!?」

ガシィィィンッ!!

一輪がそう言った瞬間、雲山が影アリスに纒わり付いてくる。

「知らない妖術が効くんでしたら、これでどうですか!!妖術、“纒雷閃まといらいせん”!!!」

「!?」

バチバチバチバチバチィィィンッ!!

一輪がそう言った瞬間、雲山が帯電し、その帯電した雷が影アリスにも流れ込む。

「ぐぅぅぅっ!?こ、こんな妖術をまだ隠し持ってたのね……聖!!」

バキィィィンッ!!

「!?弾幕の檻を素手で壊した!?」

「……南無三。」

ドカカァァァンッ!!

フランの『クランベリートラップ』を破った直後、聖はそう言いながら、フランと一輪を殴り飛ばす。

それにより、影アリスに対する雲山での拘束も解かれる。

「どうやら『悪足掻き』も無駄だったようね……どんな奴だろうと『大きな力』の前では皆、等しく潰されるということよ。『人間と妖怪が手を取り合おう』なんて、そんな甘い理想じゃ何も変えられない。必要なのは『大きな力と統率力』。他人の感情にいちいち流されてたら、そこから一気に崩れるのよ……あなたならわかるでしょ?……『柳下夜見』………」

「うっ……フラン……一輪……」

「私の話を聞いてから、随分手応えがなくなったじゃない。漸く私の言葉が理解できたのか、それとも大好きな人が敵になったことによる戦意喪失か……どちらにせよ、あなた達はここで終わりよ。全てを知られたあなた達にはここで消えてもらうけど……あなたは私と同じ『虐げられる側』の存在……最後に一つだけ、選ばせてあげるわ……ここで一生、叶うことのない理想と共に消えるか……私と一緒にこの醜い世界を塗り替えるか、選択しなさい……」

「………」

「あなたの“力”と才能、ここで失くすには惜しいのよ。『ジャック』の効かないあなたの感情を壊して、聖みたいな『人形』にすることもできないし……あなたの“意思”で決めなさい。手負いのあなたに残されたのは二択……これが私のせめてもの“慈悲”よ……」

「………」

「そうね……私と一緒に来るなら、この国の仲間の命だけは保証するわ。『外の世界』から来た連中は論外だけど、あなたの愛する人達が誰も死なない好条件に今まで虐げてきた、憎い人間や妖怪達に復讐する好機……良い返事を期待してるわ……」

「……私は……『半妖』になってからの約一月ひとつき、確かに酷い目に遭ってきた……元は同じ人間達からは石を投げられ、妖怪達からは『半端者』として、理由もなく襲われたりもした……」

自分を仲間に誘ってくる影アリスに対し、夜見は自分の過去と本音を語り始める。

「だけど……そうだけれど……『憎い』とは……思わなかった……ただ……ただただ『怖かった』……自分を見る者の全ての目が……」

「………」

「朝になっても……夜になっても……例え、その日、自分以外の存在に出くわなかったとしても……眠りに着く度に……目を閉じる度に……瞼に焼き付いた、あの目を思い出すんだ……憎しみ、怒り、恐怖、快楽、狂気……色々な感情が入り交じったたくさんの目……」

「………

「日に日に削れていく私の心には『自分以外の存在に対する怖れ』と『言い様のない悲しみ』だけが残った……いっそ、死んで空っぽになってしまった方が楽だと、どうやって自分の命を絶とうか、考えたりもした……」

「………」

「そんな私に手を差し伸べてくれたのが聖だった……『醜い』と忌み嫌われてきた私を……聖は『醜くない』と言ってくれた……生きる意味がわからなかった私と一緒に生きる意味について、考えたりもした……毎日、忙しいのに……いつも、真剣に私と向き合ってくれて……」

夜見はそう言いながら、聖やナズーリン達との日々を思い起こした。
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