異変

「なっ!?見つかった!!急いでここから逃げないと!!」

響子に見つかり、応援を呼ばれたことに対し、夜見は慌てながらそう言う。

「夜見さん、あなた……頭が痛くは……ないのですか?」

が、一輪が少し苦い表情をしながら、そう尋ねてくる。

「え?頭?……全然痛くないけど?」

「ナズーリン。やはりこの頭痛は……」

「あぁ。ボクらも相当回ってきているみたいだね……」

「?何の話だ?」

「夜見さん。残念ながら、私達は一緒に行けそうにありません。」

「!?どういうことなんだ?」

「恐らくこの術は妖怪と管理者にしか効果がないものだと思われます。」

「一輪とナズーリンも『ジャック』の進行がかなり進んでいます……例え、一緒にこの国から出れたとしても、私達があなたを襲ってしまうのも時間の問題でしょう……」

「なっ!?そんな……ここまできて……」

「先程のあなたの説得のお陰で一時的に解けましたが……次も上手くいくとは限りません……」

「すいません。夜見さん……せっかく助けて頂いたのに……こんな形になってしまいまして……」

「……逃げて。夜見……キミができるだけ遠くに逃げれるよう、ボク達があいつらの気を引き付けるから……」

「で、でも、そうしたら、ナズーリン達が……」

「……次に会う頃には……キミの敵になってるだろうね……」

「そんな……嫌だよ。ナズーリン……私は……また帰る場所を失うの?……また一人ぼっちになるの……?」

「夜見……」

真剣な表情でそう言うナズーリンに対し、夜見は涙を流しながらそう言う。

「……キミはもう……“一人”じゃないよ……」

「え?」

「キミが帰る場所も、ボクらが帰る場所もこれから先だってずーーーっとここしかないんだから……さっき、キミがボクを信じたみたいにボクもキミのこと、信じても……良いかな?」

「ナズーリン…………うん……必ず……助けに戻るから……」

ナズーリンと夜見がそう話をするなか、響子が呼び寄せた、『ジャック』に支配された妖怪達が向かってくる。

「来ました!!」

「逃げてください!!夜見さん!!」

「ここから一番近い国だと……『影の国』かな。山を三つくらい越えなきゃならないけど……頑張って……」

「『影の国』か……わかった……じゃあ、皆。気を付けて……」

夜見はそう言いながら、その場から『影の国』に向かって駆け出す。

「さて、ボクもあまり時間がないみたいだね……」

「私もです。ですが、私は最後の最後まで諦めませんよ。」

「夜見さんならきっと……私達を助けに戻ってくる筈です……」

「ですから、ここから先は……絶対に通しません!!」

夜見が『影の国』に向かって駆け出した後、その場に残ったナズーリン、一輪、寅丸の三人はそう言いながら、妖怪達と戦闘を開始した。

「……これは少しマズいことになったわね……」

その様子を物影から密かに見ていた、今はノゾミの使い魔になっている阿号とにとりと同じ『幻想卿』から『Xマジンラー』を追ってこの国に来ていたスキマ妖怪、八雲紫は真剣な表情でそう言う。

「多分、彼女達だけじゃ、この騒動を解決するのは難しい……『彼女達』の“力”が必要ね……」

クパァ

紫はそう言いながら、スキマを作り、その場から姿を消した。
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