折れぬ心、斬り裂く刀

居住区、鈴蘭・・・

「フフ……ウフフフフアハハハハハハハハッ!!」

「……そんなに何がおかしいの?『影の国』であれだけ暴れて、人を傷付けて……まだ足りないって言うの?」

対峙した後、そう高笑いする影霊夢に対し、こいしは真剣な表情で睨み付けながらそう尋ねる。

「はぁ~、そんなのどうだって良いのよ……ゴミなんていくら潰してもゴミはゴミ……結局、虚しいだけなのよね……」

(この人も心が読めなくなってる……これもサイキックの“力”なの……?)

「毎日毎日、色んなゴミや物を潰してきたけど……潰したその瞬間に満たされる感情はあっても……“幸せ”にはなれなかったのよね……このまま、奴の言い様に使われるままで良いのか……こんな私でも悩んだりする訳よ……“幸せ”って何なんだろうな?ってさ……ねぇ。帽子ちゃん……あなたにとっての“幸せ”って何?」

「う~ん……お姉ちゃんやフランちゃんと毎日、一緒にいられることかな……もう、こんなこと、やめたら?それじゃあ、“幸せ”になんて絶対になれないよ……」

「素敵な答えね。人間の私には理解できないくらい……そうね。もう辞めちゃった方が“幸せ”になれるかもね……」

「じゃ、じゃあ」

「だから私、『人間』を辞めることにしたの。」

「……え!?」

「!こいし!!影霊夢から離れなさい!!」

「う、うん!!」

さとりに言われた後、こいしはそう言いながら、影霊夢から距離を取る。

「『人間』のままじゃ満足できない……“幸せ”になれない……あぁ、憎い……憎いわ……幸せそうなあんた達が……この国が……世界が……化け物になって……幸せなもの全部、潰したら……きっと私が一番“幸せ”なんでしょうね……」

パリィィィンッ!!

影霊夢がそう言った瞬間、影霊夢の身体の表面がガラスのように砕け、中から霊夢の服の赤の部分が紫に、髪が茶髪になった・・・邪悪な雰囲気を醸し出す霊夢の姿に変わる。

「私にとっての“幸せ”は……『他者にとっての“幸せ”を潰すこと』……『人間』の身体なんてもう良いわ。あの身体じゃ“幸せ”になれないから……そう思って、『人間』としての理まるごと全部、塗り替えたら、すっかり色が付いてしまったわ……ほんと、笑えるわ……『人間と妖怪が手を取り合おう』なんて……ゴミが集まったところで目障りなのよ……それを必死こいて護ろうとするあんた達もね!!」

「お、お姉ちゃん。どういうこと?『人間を辞めた』って……」

「……強さを欲しし過ぎたようね。『人間』のままじゃ、私達に勝てないから、自分自身の理を自分のイメージする『憎悪や力』に塗り替えて……容姿もそれに伴って、変化したってところでしょうね……あの人はもう人間でも妖怪でもないわ……ただの『憎悪と力の塊』……二人で止めるわよ!!こいし!!」

「う、うん!!」

「『止める』だなんて生温い言葉、使うんじゃないわよ……あんた達、全員の四肢を潰して、この国の“終焉”を傍観させてあげる……大切な仲間と国一つ、潰されたくなかったら、殺す気で来なさい……大結界、『博麗重力結界』!!」

こうしてさとりとこいしと、影霊夢改め闇霊夢の戦いが始まった。
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