ルーミアの秘密ともう一人の半妖

ルーミアの心の記憶・・・

ドカァァァンッ!!

「キャハッ!!キャハハハッ!!キャハハハハハッ!!ねぇねぇねぇねぇっ!!痛い!?痛い!!遺体!!イタイ!!イタイよね!?死んじゃうよ!!早くしなきゃ!!あんたも私もおまえもこいつも!!殺したい!?殺されたい!?死にたくない!?いいや、違うね!!あんたはボクを殺せないし、キミも死ねない!!そういう理なんだよ!!テメェだってわかってんだろ!?だから、さっさと絶望しろよ!!管理者ぁ~~~!!」

「くっ……ルーミアさん……ではないですね……あなたは……何者ですか!?……ルーミアさんから……今すぐ離れなさい……!!」

「ひ、聖!!大丈夫か!?この辺りの住民達には本殿へ避難するよう、指示は行った!!もうすぐ応援も来る筈だ……それまで持ちこたえるぞ!!」

『あのルーミアは……確かに私達の知っているルーミアではないわね……言葉使いや一人称がバラバラ、異常なまでの死や絶望への執着……複数の死者の魂に乗っ取られてるようにも見えるけど……なんか引っ掛かるわ……』

右手に炎、左手に水、右足に雷、左足に風を纏った、明らかに狂喜に満ちた表情でそう言いながら、暴れるルーミアを見ながら、そう言う聖に慧音がそう話しかけるなか、能力でその様子を視ていたさとりは真剣な表情でそう言う。

「ルーミア!!落ち着け!!私のことがわかるか!?慧音だ!!私達はおまえを殺そうだなんて思ってはいない!!だから……」

『あっ!!ダメ!!それ以上、近づいちゃ……』

「離れてください!!慧音さん!!」

ドカッ!!

「痛っ!?」

自分に近づいてきた慧音を、ルーミアは雷を纏った右足で蹴り飛ばす。

「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!!イタイィィィッ!?死にたいの!?殺したいの!?早く死と絶望を集めて還りたい!!還りたいの!!あんたのパパとママも向こうで待ってるんだよぉ~~~!!どうせ、こんなちっぽけな世界も用が済んだら、グシャグシャポイッさ!!今すぐ消えちゃっても同じだよ!!痛いのは嫌だよね!!解放してあげる!!この『ちっぽけで醜い世界』からさあああぁぁぁっ!!!」

「……だ……」

「キャハ?」

「そんな『ちっぽけで醜い世界』を私は……私はおまえと一緒に歩きたいんだ!!ルーミア!!」

「!?」

「私は……私はおまえや聖に助け出されるまで何時、実験体として引き渡されるか、不要となって処分されるか、地下牢の冷たさと牢の扉が開く音に怯える毎日だった……」

「………」

「しかし、私の中に流れる『白沢の血』は私に牢の外の世界の美しさを教えてくれた。豊かな自然、人や妖怪を含めた多くの生き物、空の蒼さ……私はそれに焦がれた……何時か、それを自分の眼で見てみたいと……あぁ!!ちっぽけだとも!!たった一人の半妖に知識として知られてしまう世界だ!!半妖は差別され、常に人と妖怪が争い合う残酷で醜い世界だ!!」

「『………』」

「しかし、私はそれにただただ焦がれた!!父や母が見ていた世界を……何時か、自分のこの眼で見てみたいと!!そして、おまえと共に牢の外へ出て、生まれて初めて、私はこの眼で外の世界を見た!!空は蒼く澄み渡り、人間と妖怪がお互いに手を取り合おうと歩み寄る姿を……聞け!!ルーミア!!そして、ルーミアの中にいる『邪心王』よ!!おまえがちっぽけで醜いといった世界の全てが……私は愛しい!!この『広大で美しく、愛しい世界』を……私達から奪わないでくれ!!」

「うっ!?……あぁ……ぐぅ……っ!!」

「慧音さん……」

『………』

「あぁ……あ……けー……ね………」

「!?ルーミア!!」

【バカな……我が精神支配に抗い、自我を取り戻しただと……たかが一妖怪の……何処にそんな“力”が……!?】

『え!?なに!?この声……』

「ソウダ……った……や……くそく……いっしょに……このせかい……を……うっ……うぅっ!?ぐぅ……っ!!」

「……聖。頼む……」

「……わかりました……すいません。ルーミアさん……“諸行無常”。」

パァァァ・・・ドサッ!!

「………」

「一時的に全妖力を霧散させました……急いで寺に戻りましょう……」

『………』

【ほぅ……こんな所にネズミがいるとはな……】

『え!?この声は……さっきの……』

【あまり余計な真似をしないでもらおうか……予想外に予想外が重なって、我らも対応するにも手一杯なのだ……】

『!?』

ザザッ!!・・・ザーーーッ!!

謎の声がそう言った瞬間、さとりが今、能力を使って視ている記憶の景色にノイズが入り始める。

『あ……マズいわ……記憶が掻き乱され……!!』

【ここで視た、貴様の記憶を消してやる……ルーミアには『何も視えなかった』と言うがいい……フフフ……】
10/12ページ
スキ