ルーミアの秘密ともう一人の半妖

居住区、雑貨・蜂蜜屋前・・・

「はぁ……はぁ……蜂蜜屋……前……彼女は……」

隙を見て、牢から自身の教え子である人間の少女、本居小鈴と共に脱走した白沢の半妖、上白沢慧音はそう言いながら五十年前、『幻想卿』から『妖怪の国』に迷い込んだ妖狸、二ツ岩マミゾウが営む雑貨・蜂蜜屋の前まで辿り着く。

「……留守か……くそっ!!」

「あなた達がこの国から出ることはできないわ。逃げ回るのはやめて、大人しく牢へ戻ってもらえないかしら?」

「そうそう。別に今すぐ取って喰おうって話でもないし……あんた、半妖でしょ?今からでもこっち側に着いたらどうよ?」

店にマミゾウがいなかったことに思わず舌打ちしながらそう言う慧音に対し、追手として追ってきた影狼とはたてがそう言いながら、その場に現れる。

「今まで雑に扱ってきた人間達に復讐する良い機会じゃない。私達は反抗する妖怪や人間を捕まえろとは命じられてるけど、半妖はどうしろとは言われてないしさ。こっちもその方が手間かからないのよ。なんだったら、後ろのその子の命も上手いこと、口利きして」

「断る!!私は……私はそちら側に着く気などない!!」

「残念な回答ね。先生。0点よ。」

ドゴッ!!

「ぐふっ!?」

「やっぱ半端者はダメね。人間なんかを庇ってケガした挙げ句、自分が助かる道でさえ捨てるなんて……愚鈍な半端者相手なら、妖術を使うまでもないわ……」

ドカッ!!

「がはっ!?」

自分達の提案を蹴った慧音に対し、はたてと影狼はそう言いながら痛めつける。

「もういいよ!!慧音先生!!これ以上、私のことを庇ったら本当に……だから、慧音先生だけでも!!」

「……ここでおまえを見捨てでもしたら……どっかの誰かにぶん殴られそうでな……」

「え?」

「確かに昔は人間達にも差別され、実験体扱いされたり……辛いこともあった……だが、私はこの国で多くの人間や妖怪の心の温かさに触れた。いや、私だけじゃない。私達を追ってきた彼女らもそうだ……生まれは違えど、私達には同じ感情があり、心がある!!それをおまえ達、人間と妖怪が教えてくれたから今、私はここに立っているんだ!!女は度胸!!私は……私は決して諦めない!!私に心がある限りな!!」

「あぁ~、はいはい。もう良いわ。仲間になる気ないんでしょ~?影狼。『反抗的で尚且つ使えない半端者』はどうするんだっけ?」

「『目障りなゴミは掃除しろ。』……まぁ、そうなるわね。あなたに恨みはないけど、これも全ては国のため……悪く思わないでね!!」

はたてと影狼はそう話しながら、戦闘体制を取る。

「おっとっと。盛り上がってるところ、失礼にごさんす。」

「「「「!?」」」」

が、そんな二人の間にいつの間にか、茶髪のロングヘアーの人間の女性に化けた二ツ岩マミゾウがそう言いながら現れた。
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