平和な日常
「……どうせ私はお飾りのお付き妖怪ですよ……何か問題が起こっても、聖が一人で行って解決してしまいますし……」
「あ。なんかごめん……」
「夜見さぁーん!!ナズーリン!!もうお昼ご飯ができて、他の皆さんも食べ始めてますよぉ~~~♪」
なんか落ち込み始めた寅丸に対し、夜見がそう言って謝るなか、空色の髪に紺色の頭巾を被り、灰色がかった黒目の妖怪の女性、雲居 一輪 がそう言いながら、その場に現れる。
「なに!?もうそんな時間なのか!?急ぐぞ!!ナズーリン!!お昼ご飯が無くなってたら、ナズーリンのせいだからな!!」
「ちょっ!?なんでボクのせいになるのさ!?って置いてかないでよぉ~~~!!!」
そんな一輪の言葉を聞いた夜見とナズーリンはそう話しながら、急いで寺の方へと駆けていった。
「……夜見さん……最近、よく笑うようになりましたね……」
「えぇ。数ヵ月前、聖に拾われて来た時は何かと怯えながら、ずっと警戒してましたもんね……」
「私は夜見さんが半妖だということ以外、聖に拾われる前の夜見さんのことをあまりよく知らないのですが……寅丸は聖から何か聞いてます?」
二人が駆けていった後、聖に拾われる前の夜見のことについて、一輪はそう寅丸に尋ねる。
「………」
「?寅丸?」
「……聖が夜見さんを拾ってくる一ヶ月前、とある小さな村で村人全員が死亡するという事故が起きました……原因究明のために私と聖が現場に急行した時はそれはもう悲惨なものでしたよ……」
聖に拾われる前の夜見のことについて尋ねる一輪に対し、寅丸は何故か聖が夜見を拾ってくる前に起きた事故のことを語り始める。
「最初は人間を狙う妖怪の仕業かと思われましたがその形跡はなく、流行り病によるものでもありませんでした……」
「?それじゃあ、原因は一体何だったのですか?」
「原因は残念ながら、未だにわかってはいません……ですが、問題はそこではなく、死亡者の数なんです……」
「?死亡者の数?」
「……合わないんですよ……国で管理しているその村の村人の数と死亡した村人の数が……」
「………」
「あの時、現場に遺体すらなかったその村人の名前は『柳下夜見』……」
「!?ということは夜見さんはその事故の唯一の生き残りだということですか!?」
「生き残り……というのは語弊がありますね……正確に言えば、夜見さんはあの事故で一度、死んでいるんですよ。そして、半妖として生き返った……」
夜見が聖に拾われる前に起きた事故と夜見の関連性について、そう尋ねる一輪に対し、寅丸は真剣な表情でそう説明する。
「半妖として生き返った直後、両親も含む村人達の無惨な遺体を見た彼女はあまりにも悲惨な現場に恐怖し、その場から逃げ出し、色々な場所を転々としていたそうです……」
「!聖が拾ってきたあの夜、夜見さんは私達妖怪や寺と親交が深い人間達に対して、酷く怯えてましたが……もしかして……」
「おそらくですが、行く先々で人間や妖怪に襲われたのでしょう……人間にとっては半妖も妖怪と同じ化け物……妖怪にとっては半端者として忌み嫌われることが多々ありますから……」
「元は同じ人間だったのに……その人間から『化け物』呼ばわりされて、襲われるなんて……夜見さん………」
まだ寅丸の憶測の範囲内だが、ほぼ真実であろう夜見の過去を知った今、一輪は胸が締め付けられるような気持ちになる。
「ここに来てから彼女の心の傷は大分癒えたようですが……これからも彼女に温かく接してやってくれませんか?」
「フフフ……そんなの決まってるじゃないですか。それに私達には聖の教えがあるじゃないですか。」
「フフフ……そうですね。いらぬ心配でしたね……」
これからの夜見への接し方について、寅丸と一輪は笑顔でそう話をする。
「さてと、それじゃあ帰りましょうか。さすがにお昼抜きだと身体が持ちそうにありません。」
「ところで今日はどういったご予定で?」
「なんですか!?あなたまで私が年がら年中暇人みたいに!!」
「いや、何もそこまで怒らなくても……」
「ふ、ふぅーんだ!!今日はもう一輪とは口も聞きませんからね!!」
「あ。待ってくださいよ!!寅丸!!」
寅丸と一輪はそう話しながら、寺へと帰っていった。
「……どうやら行ったみたいですね。」
「全然動いてくれないから、バレたんじゃないかとヒヤヒヤしたわ。」
その後、近くの茂みから白い服を着た、オールバックの黒髪にポーカーフェイスの男、『Xマジンラー』のエージェントにして幹部の一人、加頭順と影がそのまま実体化したかのような姿の少女、『影の国』のアリス・マーガトロイドがそう言いながら現れる。
「さて、それでは邪魔が入る前に最後の結界装置を設置するとしますか。」パチンッ!!
パァァァ・・・
加頭がそう言いながら指パッチンした瞬間、銀のオーロラが現れ、そこから出てきた何体かのマスカレイドドーパントやイマジンがなにか機械的な装置の設置を始める。
「……本当にこの結界装置とやらで私のサイキックが強化されるのよね?」
「えぇ。この国の四方に設置したこの結界装置によって、あなたのサイキック、『ジャック』は最大限に引き上げられ、明日にでもこの国はあなたのものになるでしょう。」
マスカレイドドーパントやイマジン達が設置している結界装置を見ながら、そう尋ねるアリスに対し、加頭はそう答える。
「フフフ……明日が待ち遠しいわね……さぁ、偽善者な妖怪も人間も……皆、私の掌の上で躍りなさい……フフフ………」
対するアリスは不敵な笑みを浮かべながらそう言う。
(フフフ……我々にとってはあなたも我々の掌の上で躍る人形 ですがね……アリス・マーガトロイドさん……)
そんなアリスを見ながら、加頭は密かにそう思った。
「あ。なんかごめん……」
「夜見さぁーん!!ナズーリン!!もうお昼ご飯ができて、他の皆さんも食べ始めてますよぉ~~~♪」
なんか落ち込み始めた寅丸に対し、夜見がそう言って謝るなか、空色の髪に紺色の頭巾を被り、灰色がかった黒目の妖怪の女性、
「なに!?もうそんな時間なのか!?急ぐぞ!!ナズーリン!!お昼ご飯が無くなってたら、ナズーリンのせいだからな!!」
「ちょっ!?なんでボクのせいになるのさ!?って置いてかないでよぉ~~~!!!」
そんな一輪の言葉を聞いた夜見とナズーリンはそう話しながら、急いで寺の方へと駆けていった。
「……夜見さん……最近、よく笑うようになりましたね……」
「えぇ。数ヵ月前、聖に拾われて来た時は何かと怯えながら、ずっと警戒してましたもんね……」
「私は夜見さんが半妖だということ以外、聖に拾われる前の夜見さんのことをあまりよく知らないのですが……寅丸は聖から何か聞いてます?」
二人が駆けていった後、聖に拾われる前の夜見のことについて、一輪はそう寅丸に尋ねる。
「………」
「?寅丸?」
「……聖が夜見さんを拾ってくる一ヶ月前、とある小さな村で村人全員が死亡するという事故が起きました……原因究明のために私と聖が現場に急行した時はそれはもう悲惨なものでしたよ……」
聖に拾われる前の夜見のことについて尋ねる一輪に対し、寅丸は何故か聖が夜見を拾ってくる前に起きた事故のことを語り始める。
「最初は人間を狙う妖怪の仕業かと思われましたがその形跡はなく、流行り病によるものでもありませんでした……」
「?それじゃあ、原因は一体何だったのですか?」
「原因は残念ながら、未だにわかってはいません……ですが、問題はそこではなく、死亡者の数なんです……」
「?死亡者の数?」
「……合わないんですよ……国で管理しているその村の村人の数と死亡した村人の数が……」
「………」
「あの時、現場に遺体すらなかったその村人の名前は『柳下夜見』……」
「!?ということは夜見さんはその事故の唯一の生き残りだということですか!?」
「生き残り……というのは語弊がありますね……正確に言えば、夜見さんはあの事故で一度、死んでいるんですよ。そして、半妖として生き返った……」
夜見が聖に拾われる前に起きた事故と夜見の関連性について、そう尋ねる一輪に対し、寅丸は真剣な表情でそう説明する。
「半妖として生き返った直後、両親も含む村人達の無惨な遺体を見た彼女はあまりにも悲惨な現場に恐怖し、その場から逃げ出し、色々な場所を転々としていたそうです……」
「!聖が拾ってきたあの夜、夜見さんは私達妖怪や寺と親交が深い人間達に対して、酷く怯えてましたが……もしかして……」
「おそらくですが、行く先々で人間や妖怪に襲われたのでしょう……人間にとっては半妖も妖怪と同じ化け物……妖怪にとっては半端者として忌み嫌われることが多々ありますから……」
「元は同じ人間だったのに……その人間から『化け物』呼ばわりされて、襲われるなんて……夜見さん………」
まだ寅丸の憶測の範囲内だが、ほぼ真実であろう夜見の過去を知った今、一輪は胸が締め付けられるような気持ちになる。
「ここに来てから彼女の心の傷は大分癒えたようですが……これからも彼女に温かく接してやってくれませんか?」
「フフフ……そんなの決まってるじゃないですか。それに私達には聖の教えがあるじゃないですか。」
「フフフ……そうですね。いらぬ心配でしたね……」
これからの夜見への接し方について、寅丸と一輪は笑顔でそう話をする。
「さてと、それじゃあ帰りましょうか。さすがにお昼抜きだと身体が持ちそうにありません。」
「ところで今日はどういったご予定で?」
「なんですか!?あなたまで私が年がら年中暇人みたいに!!」
「いや、何もそこまで怒らなくても……」
「ふ、ふぅーんだ!!今日はもう一輪とは口も聞きませんからね!!」
「あ。待ってくださいよ!!寅丸!!」
寅丸と一輪はそう話しながら、寺へと帰っていった。
「……どうやら行ったみたいですね。」
「全然動いてくれないから、バレたんじゃないかとヒヤヒヤしたわ。」
その後、近くの茂みから白い服を着た、オールバックの黒髪にポーカーフェイスの男、『Xマジンラー』のエージェントにして幹部の一人、加頭順と影がそのまま実体化したかのような姿の少女、『影の国』のアリス・マーガトロイドがそう言いながら現れる。
「さて、それでは邪魔が入る前に最後の結界装置を設置するとしますか。」パチンッ!!
パァァァ・・・
加頭がそう言いながら指パッチンした瞬間、銀のオーロラが現れ、そこから出てきた何体かのマスカレイドドーパントやイマジンがなにか機械的な装置の設置を始める。
「……本当にこの結界装置とやらで私のサイキックが強化されるのよね?」
「えぇ。この国の四方に設置したこの結界装置によって、あなたのサイキック、『ジャック』は最大限に引き上げられ、明日にでもこの国はあなたのものになるでしょう。」
マスカレイドドーパントやイマジン達が設置している結界装置を見ながら、そう尋ねるアリスに対し、加頭はそう答える。
「フフフ……明日が待ち遠しいわね……さぁ、偽善者な妖怪も人間も……皆、私の掌の上で躍りなさい……フフフ………」
対するアリスは不敵な笑みを浮かべながらそう言う。
(フフフ……我々にとってはあなたも我々の掌の上で躍る
そんなアリスを見ながら、加頭は密かにそう思った。