裏切りの影魔理沙

「まず、『ジャック』を使って、この国の管理者と妖怪を操ってるのは『アリス・マーガトロイド』。私と同じ『影の国』出身の奴でサイキックで『人や妖怪の意識に潜り込んで、操る力』を持っている。感情の操作や記憶の塗り替え等、あいつのサイキックにやられた奴はあいつの思いのままに動く人形にされちまう。まぁ、そこの傘の妖怪みたいに個人差があるみたいだがな。」

「『ジャック』にやられても、自分の意思で動ける奴もいるってことね。そこまで意思が強いようには見えないけど………」

「その言い方だとまるで私が気の弱いダメ妖怪だって言われてるように聞こえるんですけど………」

「でも、それだと私やフランにも『ジャック』の影響が出るんじゃないの?それに今、人間にも効果があるって………」

「それはおまえさん達がこの世界の住人じゃないからだろうな……サイキックというのは言うなれば、『この世界のルールをねじ曲げる力』。例えば、私はこの箒に乗って、空を飛ぶことができる。おまえさん達は自由に空を飛んでいるが、普通の人間が自力で空を飛ぶなんてできないだろ?つまり、私はサイキックを使ってる間、この世界の『重力』という『ルール』をねじ曲げて空を飛んでいるんだ……だが、おまえさん達は違うだろ?」

「「………」」

「おまえさん達はこの世界の重力に縛られず、自由に空を飛ぶ。更には私達の使うサイキックとよく似た能力や弾幕、スペカといった自力達の世界で発揮できる“力”も最際なく使えている……つまり、おまえさん達はこの世界の理に全く縛られない、この世界の『人間』とも『妖怪』とも違う存在だということなんだぜ。だから、この世界の『人間』と『妖怪』にしか効かない『ジャック』の影響を受けないんだろうな……」

「同じ『妖怪』でも、根本的に違うってことね。」

「それと『ジャック』で操れるのは人間か妖怪、どちらか片方だけみたいよ。管理者は例外で効かない人と効く人がいるみたいだけど……」

「だが、『ジャック』で完全に支配できるのは一人までなんだ。それを奴らが自分達が作った結界装置でこの国全体の妖怪を支配できる程にまで強化したんだ。」

「?奴ら?」

影魔理沙が言った『奴ら』という単語にレミリアは首を傾げながらそう言う。

「そいつらの名は『Xマジンラー』。おまえさん達と同じく、『外の世界』から来た連中でメンバーの殆んどが怪人達で構成された組織……何が目的か、そいつらは突然、現れ、アリスに今回の『ジャック』によるこの国の乗っとりを持ち掛けたんだぜ……」

「?Xマジンラー?何処かで聞いたことあるような……」

「私も以前、洗脳される形で所属していた組織の名前よ。レミリア……夜見から話を聞いた時から連中の気配を感じてたけど案の定、連中が黒幕だったのね……」

「……この先、北の方に連中がアリスに提供した結界装置がある……そいつを私がこれからブッ壊しに行く!!」

「え!?一人で大丈夫なの!?あなた、所々、ケガしているみたいだけど……それに私達に協力して、結界装置を壊したことがもし、バレたら……」

「……他人のために命を投げ捨てるなんてバカのすることだ……私もそう思っていたが、本当にバカなのは目の前にある救えるモノも救おうとしない、手を差し伸べられない私の方だったんだ。人様の大事なもん、奪うばっかでそんなことにも気付けなかったぜ……心配してくれてありがとよ。ピンクのお嬢さん。それと霊夢。」

「なにかしら?」

「……おまえさん達の『信じる力』と『揺るがない決意』はこの国を『ジャック』から、いや、『Xマジンラー』から救える筈だ……じゃあな……」

影魔理沙はそう言うや否や、結界装置を破壊しに向かっていった。

「……行っちゃいましたね……」

「えぇ、あの人、本当に元々、敵だった人なのかしら?全然そんな風には見えないんだけど……」

「……私が差し伸べた手を掴んだのはあなたの意思よ。今度は自分が手を差し伸べる側になれるよう……頑張りなさい……」

(敵の心さえも掴んでしまう……やっぱりこの宇宙人、ただ者じゃないわ……)

「あぁ、そうそう。レミリア。あなたは妖夢からの“声”が聴こえているかしら?さっきから全然、聴こえなくなってるんだけど……」

「……霊夢もなのね。私もあなた達と別れてからここに来るまでの間、一回も妖夢からの指示を聴いていないわ……もしかしたら、敵に見つかって、戦ってるのかも……」

「……その可能性は否定できないわね。こっちの世界の魔理沙も『私以外にも伏兵がいる。』って言ってたし。」

「伏兵?妖怪じゃなくて?」

「えぇ。なんでもそいつらは人間で『重力を操る』サイキックと『理を塗り替える』サイキックが使えるそうよ。それに『Xマジンラー』からも何体かの怪人が貸し与えられているという話だし……妖夢、大丈夫かしら……?」
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