裏切りの影魔理沙

森の中の稽古場・・・

「……ん?……なんで私、倒れてんだ?私は確か、ここで『外の世界』の博麗霊夢と戦って」

「あ。漸く目が覚めたようね。」

「うぉっ!?な、なんでおまえ、ここにいるんだよ!?」

「なんでとは失礼ね!!あんたが私にボコボコにやられて、倒れちゃったから、ケガの手当てまでして、目を覚ますまで側にいてあげたんじゃない!!」

「……へ?そうなのか?」

「あんた、大丈夫?倒れる時、頭を強く打ち過ぎたんじゃない?」

「う~ん……ダメだ。さっぱり思い出せん……おまえさんの『信じる力』がどうのこうのというのまでは覚えているんだが……」

「はぁ~……まったく……流石にそこまでは面倒みきれないわよ……」

「………………なんで助けたんだよ?私はおまえさん達の『敵』だぜ?生かしといて良いのかい?」

「………」

「それともあれか?私が本当におまえさん達に情報を流すと本気で思ってるのかい?ははは!!だったら、期待さしといて悪かったな。おまえさん達にくれてやる情報なんて何も」

「あああああああああっ!!うるっさいわね!!あんた、助けてくれた相手に『ありがとう』の一言も言えないの!?なんだったらもう一発、『夢想封印』をぶちかましたって良いのよ!!」

「は?な、なに怒ってるんだぜ?それに『助けてくれ』だなんて一言も」

「助ケテクレテアリガトウデショ!?」

「た、助けてくれて……ありがとう……」

「………」

「な、なんなんだぜ?」

「……フフ……どういたしまして……」

「じゃあ、私は行くけど、あんたの箒と帽子はそこに置いといたからね。多分、もう少ししたら、ここにピンクの吸血鬼みたいなのが来ると思うけど、怪我人のあんたじゃ、絶対に勝てないと思うから、黙って通してあげてね。後、それとあんまり無理に動いちゃダメよ?治してあげた傷口が開いたら、面倒だから。」

「………」

「それと、泥棒稼業も大概にしときなさいよ?盗まれた側の気持ちも少しは考えなさい。あんたが今までどんな環境で生きてきたか知らないけど、少なくとも『今の生き方』は正しい選択ではないわ……これからは誰かの役に立てるようなことを探しなさい。自分も含めて、皆が“幸せ”になれるようなことをね……」

「……な、なんでそんな優しくするんだよ?……や、やめてくれ……」

「なに泣いてるのよ?私、そんな特別なこと、言ったかしら?」

「う、うるせぇ……『影の国』の……掃き溜めみたいな地下で育った私に……傷の手当てしてくれたり……叱ってくれたり……心配してくれたり……優しくしてくれたりするなんて初めてなんだよ……」

優しい笑顔でそう言う霊夢に対し、影魔理沙は涙を流しながら、自分の生い立ちや本心について、語り始める。

「地下で生まれた私には最初から……親もいなければ、住む場所もない……そんな地下で生きていくには……『盗賊』になるしかなかったんだ……」

「………」

「でも……本当は私だって……上の連中みたいに……うっ……うぅ……」
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