希望の魔法使いと立ちはだかる友

寺への道・・・

「……姉上と霊夢さん、大丈夫でしょうか?やっぱり私達も加勢しに戻った方が」

「あの二人のことなら、心配するな。レミリアはシュガーにぶん投げられてもピンピンしているくらい頑丈だし。霊夢は私と同じくらい強いんだぜ?あんなこそ泥に負けるなんてありえないぜ。」

「……そうですね。何時までも後ろの方ばっか見ている訳にはいきませんよね。今はあの二人を信じて、先に進まないと……」

「まったく。全部、私に任せてくれたって良いのに、なんで皆、我先に戦いたがるんだか……」

「……そんなの、『守りたいもの』があるからに決まってるだろ。シュガー。今のおまえに何か一つ、自分の命に代えてでも『守りたいもの』があるか?」

フランと魔理沙が笑顔でそう話をするなか、若干ふて腐れながらそう言うシュガーに対し、夜見は真剣な表情でそう尋ねる。

「な、なんだよ?急に……」

「確かにおまえは強い。だが、レミリア、霊夢、魔理沙、フランのような『何かを守りたい』という強い想いがない……おまえのようにただ戦いたがる強さは何時か、周りを傷付けることになる……そのことを覚えておけ……」

「ふ、ふん!!強いんなら強いで良いじゃんか!!強いから戦う……それがいけないことなのか?」

「………」

「お、おい。二人とも。今は喧嘩している場合じゃないんだぜ。」

「そういえば、妖夢さんからの指示があれからないのですが……」

険悪な空気になっているシュガーと夜見に対し、魔理沙がそう言いながら仲裁に入るなか、妖夢からの指示が途切れていることに気付いたフランは首を傾げながらそう言う。

「そう言われてみれば来ないね。あまり遠くにいるから、聞こえなくなったとかか?」

「さぁな。妖夢からそこまで詳しい話は聞いていないが……とにかく、ここからは妖夢の指示なしで進むしか……ッ!?皆!!伏せろ!!」

「「「!?」」」

バチイイイィィィンッ!!

夜見がそう警告した瞬間、何処からか、強力な雷が落ちてくる。

「久しぶりだね。夜見……今日という日をずっと待っていたよ……」

「相変わらず、妖怪以上に良いカンをしてますね。夜見さん……日頃からの修行の成果がしっかり出てますよ……」

次の瞬間、『ジャック』に完全に支配されたナズーリンと寅丸がそう言いながら現れる。

「ナズーリン!!寅丸!!」

「え!?じゃあ、この人達が夜見さんを信じて逃がした……」

「なるほど。ということはあなた達が夜見さんが連れてきた『外の世界』から来た方々ですか。手荒い歓迎を失礼しました。」

「……思いきり真上から狙って、雷を落としておいて、失礼もないだろ。私達ならともかく……夜見にまで当たっちまったらどうするんだよ!?」

困惑しながらそう言うフランにそう言う寅丸に対し、魔理沙は睨みつけながらそう言う。

「裏切り者に当たったところでどうってことはないよ。ボクらが目指す『強い国』の考え方が理解できないのだから……攻撃されても、文句はないよね?」

「……あぁ。おまえらが『ジャック』にやられてることもわかった上で戻ってきたんだ……覚悟はできてる……助けに来たぞ!!ナズーリン!!寅丸!!」

「アハハハッ!!ほんと……キミはバカだね。態々、自分から死にに戻ってくるなんてさ……」

「……せめてもの情けです。夜見さん。今一度、あなたに問います。妖怪と人間が手を取り合おうなどという脆弱な考えは捨て、私達と共に妖怪主権の『強固な国』を創る意思は?」

真剣な表情でそう言う夜見に対し、ナズーリンが嗤いながらそう言うなか、寅丸は不敵な笑みを浮かべながらそう尋ねる。

「……私が見たいのは『妖怪と人間が互いに手を取り合う世界』だ……聖も寅丸も、ナズーリンも一輪も……皆、助ける!!それが私の“答え”だ!!」

「……ならば、私自ら、引導を渡してあげましょう」

「必殺!!“爆砕エルボー”!!」

話の最中、シュガーがそう言いながら、寅丸にエルボーを食らわせようとする。

が、寅丸はまるで来るのがわかってたかのようにひらりとかわす。

「……かわされちゃったか……一撃でも入れば、沈められるのに……」

「ふぅ~ん。そっちが連れてる助っ人の中にも強そうな人がいるね。でも、そんな単調な攻撃じゃ、ボクらには通用しないよ。」

「フッ!!せいっ!!おらっ!!」

普通な感じでそう言うナズーリンに対し、シュガーは連続で殴りかかる。

が、ナズーリンはそれらの攻撃を易々とかわしていく。

「この!!避けるな!!」

「おいおい……シュガーは人間状態で強化されてるのに、その攻撃を全部、かわすとか……この国の妖怪はどんだけ反射神経が良いんだよ!?」

「さっきの寅丸さんに対する不意討ちに近い攻撃もまるで来るのがわかっていたみたいにかわされてましたし……これも妖術なんでしょうか?」

シュガーの攻撃がことごとくかわされることに対し、魔理沙とフランはそう困惑の声を上げた。
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