奪われないために奪うもの

居住区、空き家内・・・

「一つ先の曲がり角で霊圧を確認。さとり達はちょっとそこで待機だみょん。敵かどうか確認できたら、また連絡するみょん……ふぅ。夜見ちゃん達は……無事だみょんね。霊夢が残って、影魔理沙と戦闘中……あいつも今回の『ジャック』の件に関係してるのかみょん?」

人間達の救出に向かっているさとり、こいし、ルーミアの三人に“天艇空羅”でそう指示した後、妖夢は首を傾げながらそう言う。

「……でも、おかしいみょん……確実に敵に気付かれないよう、指示していたのに、影魔理沙はまっすぐ霊夢達に接近してきたみょん……一体どうやって……ッ!?近くに殺気立った霊圧が一つ、これは……霊夢?」

ゴゴゴゴゴ・・・ッ!!

「わっ!?建物が軋んでるのかみょん!?やべぇみょん!!急いで外に……」

居住区、通路・・・

ズガァァァンッ!!

「さて、何処に隠れているのかしら?ここまで来たら、“声”が大きく聴こえたし、近くにいるのは間違いないんだけど……」

影魔理沙と同様、偶然、妖夢の“天艇空羅”を聞き付けた影霊夢がそう言いながら、自身のサイキックで空き家になった建物を一軒一軒、潰していく。

「……一軒一軒、潰していくのも飽きたわね……もうこの辺り一帯をまとめて潰しましょうか……」

「せやっ!!」

「!?」

影霊夢のサイキックで建物ごと潰される前にギリギリ脱出した妖夢はみょん鉄剣で影霊夢に斬りかかる。

が、影霊夢は紙一重でかわし、距離を取る。

「霊夢とよく似た霊圧の“正体”はおまえかみょん!!危なくみょんまでぺしゃんこになるところだったねぇかみょん!!」

「うるさいわね。隠れてる方が悪いのよ。それよりも……あんた、一人だけ?仲間は何処かしら?」

「……内緒だみょん……」

(こいつ、もしかして、みょんの“天艇空羅”が聴こえてたのかみょん?こいつの霊圧が霊夢と似ているせいで指定した相手だけに送った筈が、混線してこいつや影魔理沙にも指示が漏れてたのかみょん……皆、ごめんだみょん。これ以上サポートはしてあげられないみたいだみょん。でも、周囲に他の霊圧はないみょん……単機戦なら、みょん一人でも!!)

「話す気はないようね……良いわ。あんたで『準備運動』してあげる。すぐに潰されないように精々、頑張って足掻きなさい……」

「それはこっちの台詞だみょん!!おまえなんか……『みょん一人』ででも蹴散らしてやるみょん!!」

みょん鉄剣・精神世界・・・

『妖夢!!妖夢!!……こら!!私の話を聞きな!!……あのバカ、また一人で突っ走る気かい……まったく。世話の焼ける主人だねぇ……妖忌とそっくりだよ……にしても、あの影霊夢の霊圧、なんかおかしいね……『付け焼き刃で手に入れた力』じゃない、『生まれ持った純粋な力』……まるで『幻想卿』の『博麗の力』みたいじゃないか……』

妖夢が影霊夢と戦闘を始めた頃、精神世界で妖夢の斬魄刀、みょん鉄剣は首を傾げながらそう言った。
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