序章:電王

「今日は珍しく嫌なことが起きないなぁ~」

青年、野上良太郎は今、そんなことを呟きながら、配達先から『ミルクディッパー』に向かって、自転車で帰っているところだった。

「なんだか最近、あのイマジンとの戦いが嘘みたいに思える程、平和だなぁ……モモタロス達、元気にしてるかな……」

良太郎はかつて共に戦った仲間のことを思いながら、自転車で走っていると、

「ん?」

「………」

橋に差し掛かった辺りで橋の手刷りに手をかけて、なにやら黄昏たそがれている女性を見つける。

「何してるんだろう?あの人……」

良太郎がそう言いながら、女性を見ているなか、

「グオオオォォォッ!!」

「!?」

突然、モールイマジンが現れ、女性を襲おうとする。

「まずい!!」バッ!!

良太郎はすぐさま変身しようとする。

「ッ!?」

が、ライダーベルトとライダーパスは戦いが終わると同時にオーナーに返したがために変身できなかった。

「くっ!!うわあああぁぁぁっ!!」

「!?」

ドカァァァンッ!!

やむを得ず良太郎は自転車でモールイマジンに体当たりをする。

「グオオオォォォッ!?」

「逃げてください!!ここは僕が……」

モールイマジンに体当たりした後、良太郎はそう女性に言う。

ガッ!!

「!?」

「…………」

が、女性は無表情で良太郎を首を掴み、持ち上げる。

「ど……どうして……?」

(まさか……この女性にはイマジンが……?)

「引っ掛かったな。電王……そいつは端っから俺達の仲間だ……」

「電王、野上良太郎……我々の“障害”になる前に……貴様を消す……」グググ…

良太郎が困惑しながらそう思っているなか、モールイマジンがそう言い、女性は無表情でそう言いながら、良太郎の首を更に強く締め上げる。

「ガッ……あ……」

(まずい……この……ままじゃ……)

女性に首を締め上げられ、良太郎の意識が遠退きかけたその時、

ズガガァンッ!!

「グオオオォォォッ!?」

「ぐわっ!?」

何処からか、二弾の“光弾”が放たれ、モールイマジンと女性に命中。

同時に女性は持ち上げていた良太郎の首を離し、モールイマジンと共に後退する。

ドサッ!!

「うっ……」

「良太郎!!」

「じいちゃん!!」

女性から解放され、尻餅を着く良太郎にかつての仲間である契約イマジン、モモタロスと“未来”から来た良太郎の孫である野上幸太郎ことNew電王がそう言いながら駆けつける。

「うっ……モモタロス。幸太郎。テディ……」

「良太郎!!無事か!?」

「うん。幸太郎が助けてくれたおかげでね……でも、どうして三人がここに……?」

モモタロスにそう答えながら、なんとか自力で立ち上がりながら、良太郎はモモタロスとNew電王、銃剣、『マチェーテディ』としてNew電王に装備されている派遣イマジン、テディがこの時代にいる理由について、そう尋ねる。

「説明は後だ。今は……」

「あいつらを片付けないとな……」

そんな良太郎に対し、モモタロスとNew電王はそう答えながら、モールイマジンと女性を睨み付ける。

「貴様ら!!」

「電王のイマジンとNew電王か……」

対するモールイマジンと女性はそう言いながら睨み返す。

「モモタロス。あの女の人は……」

「良太郎。残念だが、あの女にイマジンは憑いてねぇ……」

「だけど、あの女は人間じゃないよ。じいちゃん。」

「え?」

モモタロスとNew電王の言葉に良太郎が思わずそう言うなか、

「ふん……」スッ

女性はそう言いながら、自分の顔の前で両腕をクロスさせる。

「グオオオォォォーーーッ!!」

次の瞬間、女性は黒い悪魔のような怪人に姿を変えた。

「!?」

「本性を現してきたか……」

「良太郎。ほらよ。」ブンッ!!

「わっ!?」パシッ!!

女性が怪人化したことに良太郎が驚愕の表情を浮かべ、New電王がそう言うなか、モモタロスは良太郎にライダーベルトとライダーパスを投げ渡す。

「!?モモタロス……」

「へっ!!久し振りに一緒にやろうぜ!!良太郎!!」

「うん!!」ガチャンッ!!

良太郎はそう言いながら、ライダーベルトを装着し、赤のボタンを押し、ライダーパスをセタッチする。

「変身!!」

『ソードフォーム』

パキィィィンッ!!

次の瞬間、良太郎はモモタロスが憑依した仮面ライダー電王・ソードフォームに変身した。

「へっ!!俺、久し振りの参上!!」

「じいちゃん達はあの黒い奴を頼む!!」

『イマジンは俺と幸太郎が!!』

(わかった!!行くよ!!モモタロス!!)

「おう!!行くぜ行くぜ行くぜぇ~~~!!!」

そうして電王とNew電王はモールイマジンと謎の怪人に向かっていった。
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