「あぁ、それはこういうのに頼っててね。」

対する梨紗はそう言いながら着物の裾を軽く捲り、右足に装着している補助装置を見せる。

「！？」

「見ての通り、補助装置よ。痛みなんて滅多にしないのだけど………」

「三日前の無理がきたんじゃないんですか？PAユニットじゃない、その子で走ったんですから……」

補助装置を見て千束が困惑の表情を浮かべるなか、梨紗と千景はそう言う。

「！？あの……梨紗さん、PAユニットは？」

「今は任務中じゃないから専用ケースに入れて、更衣室のロッカーに入れてあるわ。三日前のあの時は運悪くメンテナンスに出していたから使えなかったけど……」

「？PAユニット？」

たきなと梨紗がそう話をするなか、千束は首を傾げながらそう尋ねる。

「私がリコリスとしての仕事をする際に装着する、特殊仕様の補助装置よ。今着けているのは日常用の一般的なもの。」

「ほえぇ…………どんなものか見てみたいなぁ……」

「そこの生真面目っ子には『マシーンレッグ』なんていうサイボーグ疑惑を生みそうな名前を付けられかけたわ。」

「わ、忘れて下さいっ！そのことは！！」

「うわぁ……たきな、流石にそれは……っていうか二人は親しいの？」

「一年前、私が京都から異動して初めての任務で一緒に仕事をさせて頂いたんです。因みに私の前に梨紗さんはフキさんとコンビを組んでました。」

首を傾げながらそう尋ねる千束に対し、たきなはそう説明する。

「へぇ～～。ねぇねぇ。梨紗から見たフキってどんな感じだったの？」

「そうね………堅いけど、頼りになる子よ。」

カランカラーン♪

「っとお客様がきたみたいよ。」

「えっ、あっ、い、いらっしゃいませぇー！」

「やっほぉーっ。千束ちゃん♪」

「あっ。SNSで見た三人の子達もいますね。」

そんななか、二人の女性…常連客の漫画家の伊藤と担当編集者の北村が来店する。

「ほら。三人もご挨拶♪」

「いらっしゃいませ。喫茶店『リコリコ』へようこそ。」

「いらっしゃいませ。」

「い、いらっしゃいませ……」

千束に笑顔でそう促された梨紗と千景、たきなの三人もすぐさま立ち上がり頭を下げながらそう挨拶する。

「それじゃあ、私は厨房に入るから接客頑張ってね。」

「は、はい……」

「おぉ……SNSで見た通りな大和撫子な三人………絵になる……」

「確かに……大正喫茶の話もアリですね……」

そう言いながら厨房に入る梨紗にたきながそう言うなか、伊藤と北村の二人はそう話しながら座敷席に座る。

「まぁ、その前に締め切りは守って下さいよぉ～。先生？」

「うっ……だ、大丈夫！今までだって締め切りに間に合わなかったことないし！！」

「そう言っていっつもギリギリで千束ちゃんに泣きついてますけどねぇ～。」

「うぅ……」

「失礼します。こちら、メニューになります。」

座敷席に座った後、そう話をする二人に対し、千景がそう言いながらメニューを手渡す。

「あぁ、ありがとうございます。」

「ん～？お酒が切れた……」

「いや、そこら辺でやめとけよ。酔っ払い。」

北村がそう言いながら受け取るなか、いつの間にかビール瓶一本を飲みきっていたミズキに対し、千束は容赦なくそうツッコミを入れる。

「あ！そうだ！梨紗、試しにコーヒーを一杯淹れてよ！！どれくらいの腕か、味見してあげる！！」

対するミズキはスルーしながらそう言う。

(酔ってるわね……)

「別に良いけど、種類の注文は？」

「おまかせするわ！」

「ふむ……」

ミズキからそう注文された梨紗は改めて厨房内を見渡す。

(あ。あれは……)

「マスター(ミカ)。ちょっと……」

「？」