理想と現実

「同じく、相方の郡千景です。よろしくお願いいたします。」

「あぁーっ!!貴女、あの時の子だよね!!ねぇねぇ!あんな映画みたいな芸当、何処で覚えたの!?」

その後、続けてそう挨拶してきた千景に対し、千束は興奮しながらそう尋ねる。

「え~と、姉さんから……」

「お姉さんから!?」

「いや、そういう意味じゃ……」

「ふぅ……落ち着きなさい。千束……」

そんな千束に千景が困った表情を浮かべるなか、ミカがそう言って窘める。

「あっ……ごめんね。つい興奮しちゃって……」

「はぁ……」

「すまないな。店の仕事着はこちらで用意してある……千束。案内してあげなさい。」

「はぁーい♪こっちですよぉー♪」

「行くわよ。千景。たきなも。」

「はい。姉さん。」

「わかりました……気になったのですが、お二人は姉妹なのですか?」

千束の案内で更衣室に向かう途中、たきながふとそう尋ねる。

「いえ。私が敬愛を込めてそう呼ばせて頂いているだけです。」

「そうですか……」

「はい♪とうちゃ~く♪」

そんなたきなに千景がそう答えるなか、四人は更衣室に到着する。

「それじゃあ、着っ替えましょ~♪」

「あっ……!?」

「ちょ、ちょっと……!?」

着いた後、千束は笑顔でそう言いながら、千景とたきなの背中を押しながら中に入る。

「ふぅ……」

そんな三人の様子を見て、梨紗は軽くため息を吐きながら後から入った。

十数分後、フロア・・・

「うおおおおっ!可愛いぃぃぃっ!!」

パシャパシャッ!!

十数分後、仕事着である着物に着替えた千景とたきなを見て、千束はそう言いながら携帯のカメラで激写する。

「着物は慣れないわね……少し落ち着かないわ………」

「こんなことしていて良いのでしょうか……」

対する二人はそう言いながらソワソワしている。

千景は紅い着物、たきなは蒼い着物に身を包んでいる。

更に言えば、髪型もたきなはツインテール、千景はポニーテールに(千束に)変えられている。

「ほぅー……二人とも似合ってるじゃない。って後の一人はどうしたの?」

「梨紗さんはまだ着替えてます。」

「ふむ……今の梨紗は確か右足に障害があるからな……」

「えっ!?そうだったの!?じゃあ、手伝ってあげないと」

ガチャッ!!

「今、終わったから大丈夫よ。」

千束がそう言いながら更衣室に向かおうとした瞬間、着替えが終わった梨紗はそう言いながら戻ってくる。

「「「「「………」」」」」

着替え終わった梨紗に千束達五人は思わず見惚れる。

「……なに?」

そんな五人に対し、梨紗は怪訝そうな表情で首を傾げながらそう言う。

今の梨紗は空色の着物に身を包み、髪型も下ろしてフキ達からのプレゼントであるバレッタを身に付けている。

「すっごい似合ってる!大和撫子みたいっ!!」

パシャパシャパシャパシャッ!!

そんな梨紗を見て、千束はそう言いながらさっきまで以上に激写する。

「♪」

「それじゃあ、仕事の配置決めに入って良いか?」

その後、千束が撮った三人の写真を店のSNSに上げているなか、ミカはそう三人に言う。

「はい。お願いします。」

「痛っ……」

「!?梨紗さんっ!?」

そんなミカに千景がそう言うなか、梨紗が右足に痛みを感じたのか体制を崩しかける。

そんな梨紗をたきなが支えようとする。

が、それよりも早く千景が支える。

「ありがとう。千景。」

「いえ……」

「あ、あの……」

「少し無理をさせてしまったようだな。配慮が欠けてすまない。座ってくれ。二人も。」

「ありがとう。」

「ありがとうございます。」

「………」

ミカにそう促された梨紗と千景はそう言いながらカウンター席に座り、たきなも頭を下げながら座る。

「では配置決めなんだが、たきなと千景は千束と同じ接客担当。梨紗は右足のこともあるから調理担当で良いかな?」

「はい。よろしくお願いします。」

「私も大丈夫です。」

「私もそれで良いわ。」

配置決めについて、そう確認してくるミカに対し、たきなと千景、梨紗の三人はそう返事をする。

「?ねぇ。梨紗はその足でリコリスとしての仕事はどうしてたの?」

そんななか、梨紗は首を傾げながらそう尋ねた。
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