理想と現実
三日後、DA本部、司令室・・・
「本当に良いのか?」
たきなの機銃掃射で商人の捕縛が失敗に終わった銃取り引きの日から三日後、司令室にて楠木司令は真剣な表情でそう梨紗に尋ねる。
梨紗の後ろには相方の千景もいる。
「元々、本部勤めだと私の目的は果たせないと思ったから異動願いを出していた。私の希望を通すにも、上を納得させるにも丁度良い建前になる筈……」
「………」
「……確かに今までは優秀なスナイパーであるおまえを手放したくなかった上層部も今回の件で渋々了承したな……彼奴は納得しないだろうが……」
コンコン
そんななか、司令室のドアをノックする音が聞こえてくる。
「入れ。」
ガチャッ!!
「失礼します……ッ……梨紗。千景……」
楠木司令が許可した直後、フキがそう言いながら入ってくる。
「用件は何だ?フキ……」
「……梨紗達も『リコリコ』に異動になるというのは本当なんですか……?」
「あぁ、本当だ。」
「ッ……問題を起こしたのはたきなです!!それなのに何故、梨紗達まで……っ!?」
平然とそう答える楠木司令に対し、フキは思わず声を荒げながらそう尋ねる。
「どのみち誰かが今回の件の責任を負わなければならない。問題を起こしたたきなは勿論、ファーストであるおまえか梨紗か………チームのまとめ役であるおまえよりも、スタンドプレーの多い梨紗と千景のコンビの方が都合が良いだろう。」
「ですが!!」
「フキ。」
冷静にそう説明する楠木司令に尚引き下がろうとするフキに対し、梨紗が静かに声をかける。
「貴女はリコリスを引っ張っていくのに必要な存在よ。私と千景にはそれぞれ目的があって、それは本部に居ては果たせない……」
「ッ……」
「本部の子達のこと、任せたわよ。フキ……」
梨紗はそう言いながら踵を返して退室しようとする。
「……偶然だと思うか?」
「?」
「あの日、私達が乗り込んだ時には情報にあった千丁の銃は何処にもなかった。そのことに気付いてから殆んど間もないタイミングで通信障害が起き、作戦に更なる混乱が生じた……
エリカが人質に取られたのは私が至らなかったせいだ。だけど、ここまでトラブルが重なったのは偶然だと思うか?」
が、フキが真剣な声色でそう尋ねてくる。
「……それは私にもわからない。千丁の銃取り引き自体、誤情報だったのかもしれないし。通信障害に関しては、DAが使っている周波数をジャミングされてたのかもしれないわね。」
対する梨紗は静かな声色でそう答える。
「………」ピクッ
「……そうか……」
「それじゃあ、私達は行くわね。」
「あぁ、既にたきなもリコリコへ向かって出ていった……くれぐれも、無茶はしないようにな……」
そう言いながら扉に向かっていく梨紗に対し、楠木司令はそう声をかける。
「………」
「……フキ、貴女はもっと自信を持って良いわ。貴女の指揮で、私も何度か助けられた。だからこそ……いざという時、本部ではなく自分の判断を信じなさい。貴女ならきっと、最善の手段を導ける筈よ。」
対する梨紗は楠木司令ではなく、フキにそう声をかけてから退室する。
相方の千景もその場で一礼してから退室する。
「……私は……おまえのようにはできない……」
「……情に厚い奴だとはわかっていたが、おまえのそんな表情を見るのは十年振りだな……」
二人が退室した後、既にいない梨紗に対してそう言うフキは今にも泣きそうな表情を浮かべていた。
十数分後、DA本部、正面玄関前・・・
キキィ……ッ!!
各々の荷物や装備を纏めた梨紗と千景の前に一台の黒いシボレー・ブレイザーが停まる。
ガチャッ!!
「お待たせしました。お嬢様。」
直後、運転席からオペレーター服に身を包んだ、黒のロングヘアーに黒目のスタイルが良い女性がそう言いながら下りてくる。
「えぇ、ありがとう。深沙希 。」
対する梨紗はそう言いながら、自分と千景の荷物を女性…籠目 深沙希に手渡し、深沙希はそれらを車のトランクに仕舞い込む。
その後、二人も後部座席に乗り込んだ車は異動先の支部、『喫茶店 リコリコ』へと向かって走り出した。
「本当に良いのか?」
たきなの機銃掃射で商人の捕縛が失敗に終わった銃取り引きの日から三日後、司令室にて楠木司令は真剣な表情でそう梨紗に尋ねる。
梨紗の後ろには相方の千景もいる。
「元々、本部勤めだと私の目的は果たせないと思ったから異動願いを出していた。私の希望を通すにも、上を納得させるにも丁度良い建前になる筈……」
「………」
「……確かに今までは優秀なスナイパーであるおまえを手放したくなかった上層部も今回の件で渋々了承したな……彼奴は納得しないだろうが……」
コンコン
そんななか、司令室のドアをノックする音が聞こえてくる。
「入れ。」
ガチャッ!!
「失礼します……ッ……梨紗。千景……」
楠木司令が許可した直後、フキがそう言いながら入ってくる。
「用件は何だ?フキ……」
「……梨紗達も『リコリコ』に異動になるというのは本当なんですか……?」
「あぁ、本当だ。」
「ッ……問題を起こしたのはたきなです!!それなのに何故、梨紗達まで……っ!?」
平然とそう答える楠木司令に対し、フキは思わず声を荒げながらそう尋ねる。
「どのみち誰かが今回の件の責任を負わなければならない。問題を起こしたたきなは勿論、ファーストであるおまえか梨紗か………チームのまとめ役であるおまえよりも、スタンドプレーの多い梨紗と千景のコンビの方が都合が良いだろう。」
「ですが!!」
「フキ。」
冷静にそう説明する楠木司令に尚引き下がろうとするフキに対し、梨紗が静かに声をかける。
「貴女はリコリスを引っ張っていくのに必要な存在よ。私と千景にはそれぞれ目的があって、それは本部に居ては果たせない……」
「ッ……」
「本部の子達のこと、任せたわよ。フキ……」
梨紗はそう言いながら踵を返して退室しようとする。
「……偶然だと思うか?」
「?」
「あの日、私達が乗り込んだ時には情報にあった千丁の銃は何処にもなかった。そのことに気付いてから殆んど間もないタイミングで通信障害が起き、作戦に更なる混乱が生じた……
エリカが人質に取られたのは私が至らなかったせいだ。だけど、ここまでトラブルが重なったのは偶然だと思うか?」
が、フキが真剣な声色でそう尋ねてくる。
「……それは私にもわからない。千丁の銃取り引き自体、誤情報だったのかもしれないし。通信障害に関しては、DAが使っている周波数をジャミングされてたのかもしれないわね。」
対する梨紗は静かな声色でそう答える。
「………」ピクッ
「……そうか……」
「それじゃあ、私達は行くわね。」
「あぁ、既にたきなもリコリコへ向かって出ていった……くれぐれも、無茶はしないようにな……」
そう言いながら扉に向かっていく梨紗に対し、楠木司令はそう声をかける。
「………」
「……フキ、貴女はもっと自信を持って良いわ。貴女の指揮で、私も何度か助けられた。だからこそ……いざという時、本部ではなく自分の判断を信じなさい。貴女ならきっと、最善の手段を導ける筈よ。」
対する梨紗は楠木司令ではなく、フキにそう声をかけてから退室する。
相方の千景もその場で一礼してから退室する。
「……私は……おまえのようにはできない……」
「……情に厚い奴だとはわかっていたが、おまえのそんな表情を見るのは十年振りだな……」
二人が退室した後、既にいない梨紗に対してそう言うフキは今にも泣きそうな表情を浮かべていた。
十数分後、DA本部、正面玄関前・・・
キキィ……ッ!!
各々の荷物や装備を纏めた梨紗と千景の前に一台の黒いシボレー・ブレイザーが停まる。
ガチャッ!!
「お待たせしました。お嬢様。」
直後、運転席からオペレーター服に身を包んだ、黒のロングヘアーに黒目のスタイルが良い女性がそう言いながら下りてくる。
「えぇ、ありがとう。
対する梨紗はそう言いながら、自分と千景の荷物を女性…
その後、二人も後部座席に乗り込んだ車は異動先の支部、『喫茶店 リコリコ』へと向かって走り出した。