プロローグ

たきなside

これが、京都支部から念願の本部に異動した私、井ノ上たきなと
DA最強と畏怖されていた鳴護梨紗さんとの出会いと初任務だった。

「そうだ梨紗、珈琲を淹れてくれるか?」

「あ!私はカフェラテー!!」

「えっと私は…カフェモカを…!」

「………せめて統一してほしいんだけど……」

右脚に障害を抱えながらも、機械の補助を受けてまで戦う彼女……

「たきなは何にする?」

「何に…と言いますと?」

呆れ顔でフキさん達の注文を聞いている彼女を見ているなか、そう話しかけてくるフキさんに私は首を傾げながらそう尋ねる。

「コイツは過去が一切不明で本人も言わないが、料理とか珈琲とかがプロ並みに美味い。」

「だから、私達もよく作ってもらうの。」

「はぁ………」

高い実力と周りを突き放すような態度とは裏腹に、不器用ながらも優しい面と家庭的な面を持っている……

「………折角だからたきなも注文しなさい。淹れてあげるから……」

「で、では、ブラックで……」

「ブラックね。わかったわ。」

私がそう注文すると、梨紗さんはそう言いながら何処からか専用の器具を取り出し、空いているテーブルに並べる。

「すいません。また豆をお借りします。」

「あいよ。遠慮なく使ってくれ。
豆はあっても私らでは嬢ちゃん並みにはできないからな……」

「ありがとうございます。
後で皆さんにもお作りします。」

「あぁ、楽しみにしてるよ。」

「……結構本格的ですね……」

梨紗さんと料理長さんがそうやり取りをするなか、私は並べられた器具を見ながらそう言う。

どれも年季が入っているもののよく手入れがされていて、使い込まれてるのが素人目でもわかる。

「最初はここにあったのを借りてやってたけど、頼まれる頻度が増えたから持ってきたのよ。」

梨紗さんはそう言いながらコーヒーメジャースプーンで珈琲豆を計り、コーヒーミールで挽いていく。

ゴリ…ゴリ…

「最初は初めてのたきなから淹れるけど良い?」

「あぁ……」

「OK!」

「大丈夫だよ。」

豆が挽かれる音が心地好く響くなか、そう尋ねる梨紗さんにフキさん達は快く了承する。

ある程度挽き終わると、今度はドリップペーパーとドリッパーでドリップ。

セットされたサーバーに抽出されていく。

「……よし。」

ある程度抽出した後、梨紗さんはサーバーからドリッパーを外し、注ぎ口をカップに向けて傾ける。

するとサーバーから珈琲が泡も音も立てずにカップへと注がれていった。
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