ジン・前編

夕陽Side

『夕陽はひなたと一緒に先に美術館の出入口付近でミズキと合流してくれ。』

「了解。」

「千束さん達、大丈夫でしょうか……」

マスターからインカム越しにそう指示を受けるなか、ひなたが不安そうにそう呟く。

「伊達にファーストじゃないだろう。とはいえ、今回は梨紗もその後ろの助けもない。その事をちゃんと分かっていれば良いんだが……!」

「………夕陽さん、千束さん達の支援に向かって下さい。ミズキさんとの合流には私が一人で向かいますので。」

「だが………」

俺が最優先すべきは巫女ひなたの護衛。それを放り出す訳には……

「大丈夫です。行ってください!」

「………分かった。何かあれば必ず連絡しろ。」

一歩も引く気のないひなたに背中を押される形で、俺は千束達の方へと向かうのだった。

第三者Side

『ミズキ、急げぇ~。そのドローンがないと何もできないぞぉ~。』

「ゼェ……ゼェ……ッ!あんたも!現場に出てサポートしなさいよ!!」

その頃、インカム越しにそう言うクルミに悪態を吐きながら、ミズキは予備のドローンが入ったアタッシュケースを抱えながら合流地点である出入口へと向かって全力疾走する。

ドカァァァンッ!!

「へぶぅっ!?」

「………」

カタンカターンッ!!

が、動きを読まれていたのか、道中で先回りしていたジンに襲撃され、アタッシュケースを手放してしまう。

『どうした?』

「ッ……ジンだっ!!」

「………」

ミズキはそう言いながらその場から逃げようとする。

ガッ!!

「あ……っ!?」

「………」

が、ジンに片手を掴まれ、捕まってしまう。

「………」

「こん!にゃろ!めっ!!」

トスッ!トスッ!トスッ!

「………」

「誰かぁぁぁっ!!変質者がいまっ!?」

「………」シィー

『ミズキ?どうした?ミズキ、応えろ』

パキンッ!!

暴れるミズキの口を塞いだ後、ジンはミズキが最初の不意討ちで落としたインカムを踏み潰した。

ひなたSide

「?ミズキさんは……」

夕陽さんを千束さん達の方へと向かわせた後、合流地点である美術館の出入口付近に辿り着いた私はそう言いながら辺りを見渡す。

が、何処にもミズキさんの姿がない……まさか……何かあった!?

「ッ……『神樹様』……どうかミズキさんが何処にいるかを教えて下さい……っ!!」

私はそう思いながら瞳を閉じ、祈りを捧げる。

すると、何処かのロッカーの映像イメージが浮かんでくる。

ここからそう遠くない。

「ッ……」

『神樹様』からお告げを受けた私はすぐさま駆け出した。

第三者Side

ガンガン……ッ!!

『誰かぁーっ!助けてぇーっ!!』

屋外に設置されたロッカーの内側から激しく叩く音と助けを求めるミズキの声が聞こえてくる。

「ッ!ミズキさんっ!!」

ガタンッ!!

「うわっ!?」

ドサッ!!

そこに巫女としての能力チカラを使って駆けつけたひなたが扉を開けて救出する。

「うぅ~、助かったわ。ひなた……」

『はい。こちら、喫茶リコリコ。』

「ひなたです!ミズキさんが屋外のロッカーに閉じ込められてました!!」

ロッカーからミズキを救出した後、ひなたは自身のスマホでクルミとミカに連絡を取る。

『なんだ。ミズキ、生きてたのか……』

「なんだとはなんだ!?聞こえてるぞ!!ゴラァァァッ!!」

「クルミさん……」

『ひなた。アタッシュケースが近くに無いか?』

スマホ越しにそう言うクルミにミズキがツッコミを入れるなか、ミカがスマホ越しにそうひなたに尋ねる。

「アタッシュケース……ありましたっ!!」

『中にあるドローンを指示通りに操作して電源を入れてくれ。』

「わかりました。」

『クルミ。操作手順の指示を頼む。』

『はいよー。』

そうしてひなたはクルミからの指示に従って操作し、起動させたドローンを飛ばした。
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