プロローグ

(……だけど……)

たきなは改めて思い起こす。

ここまでの戦闘で垣間見た梨紗の凄まじさを…

対物ライフルの持つ圧倒的な破壊力に加え、1500mも距離のある人間や装甲車輌を撃ち抜いてみせる程の命中精度。

フキの言っていた『状況予測からの狙撃』。
それは相手の動きを読んでの狙撃であり、
突然仲間が撃たれた事へのリアクションすら予測していたということ。

それらを用いた最大限の支援に、緊急時には自ら前線に出て戦える程の行動力と胆力。

その全てが同じセカンドリコリスである自分よりも上であることをたきなは瞬時に理解する。

「………」

理解した後、たきなは改めて梨紗を観察する。

先程の戦闘で天井に空いた大穴等から入ってくる夜風に髪を靡かせ、月明かりに照らされる美しさーーー

それでいて対峙した相手には容赦なく『死』を穿つその姿からーーー

「……『告死天使』……」

「なに?」

思わずぽろっとそう呟くたきなに対し、梨紗は怪訝な表情でそう話しかける。

「いえ……改めて、よろしくお願いします。梨紗さん……」

「……よろしく……」

対するたきなはそう誤魔化しながら手を差し出し、梨紗はその手を握りながらそう挨拶を返す。

ブロロロ……ッ!!

「あっ!回収班がきたよ!」

そんななか、本部からの回収班の車が到着し、清掃員のような格好をした男達がぞろぞろと降りてくる。

「リコリスの皆さん、お疲れ様です。
後のことはお任せください。」

「お疲れ様です。廃ビルの屋上は梨紗の狙撃で大変かもしれませんが、よろしくお願いします。」

敬礼しながらそう言う回収班のリーダーに対し、フキも敬礼しながらそう言う。

「あぁ……また派手に殺ったんですね……」

「………」

対するリーダーは苦笑いしながらそう言い、梨紗は自覚があるのかそっぽを向く。

「わかりました……帰りの車を用意しましたので、どうぞお使いください。」

「ありがとうございます……行くぞ!皆!!」

そうして後始末は回収班に任せ、五人のリコリスは本部へと帰還した。 
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