復活の歌姫
「みんなー!盛り上がって行くよー!」
ワァァァーーーッ!!
その頃、『鳴護アリサ』としてステージの上に立っていた梨紗が笑顔でそう言った瞬間、会場内は更に盛り上がりを見せる。
「宙に浮かんだ君の言葉はいつも
当たり前に僕を救ってくれた」
「梨紗のやつ、アイドルみたいな事が出来るなんてな………」
「意外、なんですか…?」
そんな歓声を受けながら歌う梨紗を見ながらそう言うフキに対し、詩柰は首を傾げながらそう尋ねる。
「はい。いつものアイツはあんな屈託ない笑顔を見せる事は無いですし、指揮を取ることはありますが、ああやって呼び掛けることも無いですから……」
「そう、なんですね……」
「何か気になる事でも?」
「本当に、今の彼女は『彼女』なんでしょうか?」
「………どういう意味です?」
詩柰の言葉の意味について、フキは真剣な表情でそう尋ねる。
「私には………舞台袖に居た時の彼女と、今歌っている彼女が別人に感じます……」
対する詩柰はステージの上に立つ梨紗を見ながら、真剣な表情でそう言う。
「いろんな角度で見た君の目は
穏やかに真っ直ぐ前向いて」
「ああ、思った通りだ……」
その頃、VIP席からライブを観ていた吉松はそう感嘆の声を上げながら、ステージで歌う梨紗を見下ろす。
「並んで歩く いつもの道も
君が隣にいてくれるから輝くの」
「君はそこ にいたのだね、『アリサ君』……」
「続いていくメロディ 描いてた夢を繋ぐ
君のもとへ思い乗せ届けこのハートビート
絡み合う旋律の様に運命はきっと複雑で
消えない道標 君と歩いていこう」
吉松がそう言うなか、歩きながら手を振る梨紗の動きに合わせて、観客達のペンライトも大きく振られる。
「ああ………やはり、君が『表』にいるべきだ……」
そんな会場全体の様子を眺めながら、吉松は恍惚 の表情を浮かべながらそう言う。
「はーい!みんなぁー!こんにちはぁー!!」
そんななか、梨紗は『アタリマエの距離』を歌いきったところでそう観客に話しかける。
『こんにちはぁー!!』
「突然ですが、鳴護アリサでーす!!」
『イエェェェーイ!!』
「はーい、ありがとうー!何年ぶりのライブかな。当時の私のライブ、覚えてる人っている?」
『はーーい!!』
「わっ、いるんだっ!?嬉しいなぁ。当時じゃないけど、観たことある人っている~?」
『わぁあああああああっ!!』
「うわぁ、皆、見てくれてるんだ!本当にありがとう!!もう十何年も前だよねぇ………えっとね。実は私、病気で少し前までコールドスリープで眠ってましたぁ~!!」
『ええええええっ!?』
「驚きだよね。病気は治ったけど、浦島太郎状態でビックリしちゃったの。だから、活動復帰は難しいかなって思ってたんだ。でも今日、私に憧れて歌手になった二人のピンチって聞いてね、今日限りの復活です!!」
『イエェェェーイ!!!!』
「それでは次の曲はこれ!『Brand New Bright Step』!!」
♪~♪~
「……梨紗の奴、よくもまぁあんな作り話を即興で堂々と言えるな……」
梨紗がそう言いながら次の曲を歌い始めるなか、舞台袖でフキが呆れた様子でそう言う。
「………本当に、同じ人なのかな」
「そう思っても仕方ないかと。付き合いが長い私もそう想いますから…」
「そうじゃなくて…!…いえ、何でもないです…」
「?」
フキの言葉に銀髪の女性は何かを言い掛けるも、首を横に振って言葉を濁らせる。その彼女にフキが首を傾げるが、彼女はジッと舞台で歌っている『彼女』を見つめる。
(この子は、私と同じ感覚を持ってない。彼処で歌ってるあの子と何処かへ出ていった子の二人は、多分持ってる。だから二人ならこの感覚を分かってもらえるだろうけど………)
フキの視線に構わず、女性は思考を巡らせる。自身の持つ『感覚』を梨紗と千景も持っていると確信しつつも、方や舞台、方や席を外していると確認のしようが無かった。
(それにしても、この感覚………やっぱり、開演前の彼女と似てるけど『別人』の感覚だ……二重人格?でも周りの子達の反応からして違う………
私は結城詩奈。貴女は………?)
銀髪の女性ーー結城詩奈ーーはステージの上で歌う『彼女』へ、心の中でそう投げ掛けた。
ワァァァーーーッ!!
その頃、『鳴護アリサ』としてステージの上に立っていた梨紗が笑顔でそう言った瞬間、会場内は更に盛り上がりを見せる。
「宙に浮かんだ君の言葉はいつも
当たり前に僕を救ってくれた」
「梨紗のやつ、アイドルみたいな事が出来るなんてな………」
「意外、なんですか…?」
そんな歓声を受けながら歌う梨紗を見ながらそう言うフキに対し、詩柰は首を傾げながらそう尋ねる。
「はい。いつものアイツはあんな屈託ない笑顔を見せる事は無いですし、指揮を取ることはありますが、ああやって呼び掛けることも無いですから……」
「そう、なんですね……」
「何か気になる事でも?」
「本当に、今の彼女は『彼女』なんでしょうか?」
「………どういう意味です?」
詩柰の言葉の意味について、フキは真剣な表情でそう尋ねる。
「私には………舞台袖に居た時の彼女と、今歌っている彼女が別人に感じます……」
対する詩柰はステージの上に立つ梨紗を見ながら、真剣な表情でそう言う。
「いろんな角度で見た君の目は
穏やかに真っ直ぐ前向いて」
「ああ、思った通りだ……」
その頃、VIP席からライブを観ていた吉松はそう感嘆の声を上げながら、ステージで歌う梨紗を見下ろす。
「並んで歩く いつもの道も
君が隣にいてくれるから輝くの」
「君は
「続いていくメロディ 描いてた夢を繋ぐ
君のもとへ思い乗せ届けこのハートビート
絡み合う旋律の様に運命はきっと複雑で
消えない道標 君と歩いていこう」
吉松がそう言うなか、歩きながら手を振る梨紗の動きに合わせて、観客達のペンライトも大きく振られる。
「ああ………やはり、君が『表』にいるべきだ……」
そんな会場全体の様子を眺めながら、吉松は
「はーい!みんなぁー!こんにちはぁー!!」
そんななか、梨紗は『アタリマエの距離』を歌いきったところでそう観客に話しかける。
『こんにちはぁー!!』
「突然ですが、鳴護アリサでーす!!」
『イエェェェーイ!!』
「はーい、ありがとうー!何年ぶりのライブかな。当時の私のライブ、覚えてる人っている?」
『はーーい!!』
「わっ、いるんだっ!?嬉しいなぁ。当時じゃないけど、観たことある人っている~?」
『わぁあああああああっ!!』
「うわぁ、皆、見てくれてるんだ!本当にありがとう!!もう十何年も前だよねぇ………えっとね。実は私、病気で少し前までコールドスリープで眠ってましたぁ~!!」
『ええええええっ!?』
「驚きだよね。病気は治ったけど、浦島太郎状態でビックリしちゃったの。だから、活動復帰は難しいかなって思ってたんだ。でも今日、私に憧れて歌手になった二人のピンチって聞いてね、今日限りの復活です!!」
『イエェェェーイ!!!!』
「それでは次の曲はこれ!『Brand New Bright Step』!!」
♪~♪~
「……梨紗の奴、よくもまぁあんな作り話を即興で堂々と言えるな……」
梨紗がそう言いながら次の曲を歌い始めるなか、舞台袖でフキが呆れた様子でそう言う。
「………本当に、同じ人なのかな」
「そう思っても仕方ないかと。付き合いが長い私もそう想いますから…」
「そうじゃなくて…!…いえ、何でもないです…」
「?」
フキの言葉に銀髪の女性は何かを言い掛けるも、首を横に振って言葉を濁らせる。その彼女にフキが首を傾げるが、彼女はジッと舞台で歌っている『彼女』を見つめる。
(この子は、私と同じ感覚を持ってない。彼処で歌ってるあの子と何処かへ出ていった子の二人は、多分持ってる。だから二人ならこの感覚を分かってもらえるだろうけど………)
フキの視線に構わず、女性は思考を巡らせる。自身の持つ『感覚』を梨紗と千景も持っていると確信しつつも、方や舞台、方や席を外していると確認のしようが無かった。
(それにしても、この感覚………やっぱり、開演前の彼女と似てるけど『別人』の感覚だ……二重人格?でも周りの子達の反応からして違う………
私は結城詩奈。貴女は………?)
銀髪の女性ーー結城詩奈ーーはステージの上で歌う『彼女』へ、心の中でそう投げ掛けた。
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