復活の歌姫
その後、連絡を受けたフキ達が会議室に戻ると、梨紗は既にプロデューサーとイベント主催者と話をしていた。
梨紗の提案を聞いたのか、二人は困った様に腕を組んで考え込んでいた。
「開演まで後10分しか無い。中止も出来なければツヴァイウイングは間に合わない。開演しつつ誰かが時間を稼がなければならない。それも来場者に気付かせないように楽しませる必要がある」
「しかし……無名の君が出ても……」
「私は、鳴護アリサの一人娘です」
「「ええっ!?」」
そう言う梨紗の言葉に二人は困惑の声を上げる。
(梨紗の奴、『自分が歌って時間を稼ぐ』としか言わなかったんだな……)
そんな三人の様子にフキが推察するなか、フキの隣でサクラとヒバナが口をあんぐりとさせ、エリカは目をぱちくりさせながら梨紗の方を見つめる。
「歌や振り付けも母に仕込まれました。昔から周りには顔つきが母に似ていると言われてます。ウィッグとカラコンを着ければ分からないでしょう。歌の方も、気掛かりなら奥のブースで練習も兼ねて聞いてもらえれば良いかと」
そんなフキ達を他所に梨紗は更に畳み掛ける。
「………分かりました。奥で聞かせていただきます」
「時間が無いですし、その間にも鳴護アリサさんのメイクと衣装の用意を……」
そんな梨紗に根負けしたのか、二人はスタッフに指示を出した後、梨紗を連れて奥のブースへ入っていく。
「は、はいっ!!」
「ちょっと先輩!今の、マジっすか!?」
「梨紗があの『鳴護アリサ』の娘って!!」
「らしいな……私も今さっき、初めて知った……」
指示を受けたスタッフがそう言いながら会議室を出ていくなか、そう詰め寄ってくるサクラとヒバナに対し、フキは冷静にそう答える。
「千景は知ってた?」
「私は少し前に知りました………」
そう尋ねてくるエリカにそう答えるなか、千景は会議室の隅でおろおろしている、セミロングの銀髪に顔の右半分を包帯で隠した十九歳くらいの女性が目に付く。
「ねぇ貴女、スタッフでは無いですよね?」
「あ、はい……先程の、鳴護アリサさんの娘さんに連れてこられて………」
「姉さんに?どうして…?」
「えっと………爆弾の場所が分かったから、かな……?」
「っ!?どうやって見付けたの?」
「その………」
言い淀む銀髪の彼女に、千景は詰め寄りながら彼女に意識を集中させる。
「!?」
(この……温かいものは……)
が、その直後、彼女から感じたことのない程の優しく温かいものを感じて思わず目を見開く。
「………昔から、その………悪意とか、そういったのを感じやすくて………それで今日は、ライブを観に来たんだけど………地下の方からたくさんの悪意を感じて頭が痛くなって………それでしゃがんでたら彼女が来て案内を頼まれて……」
千景がそう思っているなか、女性は言い辛そうにしながらもそう事情を説明する。
「そう、ですか……協力、ありがとうございます……」
「い、いえいえ……」
(この感じ………私や姉さんと同じ、感応波を持っている。でも、私や姉さんと違う、とても温かい………)
詩奈から感じる温かさに、千景は長年感じていなかった安らぎを感じているなか、梨紗達三人が戻って来る。
『ッ……』
「「「………」」」
戻ってきた三人に全員の視線が集中する。
つかの間の沈黙の後、主催者とプロデューサーが声を上げた。
「ツヴァイウイングが到着するまで、鳴護アリサさんにライブをして頂く事になりました!」
「時間がありませんが、鳴護アリサのメイクと衣装合わせを!」
「は、はいっ!!」
「お二人とも、私の無茶な提案を受け入れてくださりありがとうございます。」
「いえいえ……実を言うと、私達も『鳴護アリサ』さんのファンでしてな……」
「先程、聞かせて頂いた貴女の歌声はまさに瓜二つ。時間稼ぎのための前座として使うのが勿体ないくらいだ…!!」
指示を受けたスタッフが慌ただしく動くなか、頭を下げながらそう言う梨紗に対し、主催者とプロデューサーは興奮しながらそう言う。
「ところで、お母様は今は……」
「……亡くなりました……父と一緒に……」
「!?そ、そうでしたか……」
「それは残念なことですが、お悔やみ申し上げます……」
「いえ……」
「衣装とメイクの用意ができましたぁーっ!!」
「さぁ、こちらへ……」
「ちょっと待って下さい。千景。」
「はい。姉さん……」
梨紗はそう言いながら、千景にCHGや新型ソード等といった装備を預ける。
「いざという時はお願い……フキ達も。」
「はい。姉さん……」
「任せておけ……」
そうして梨紗は主催者やプロデューサー達と共に会議室を後にした。
梨紗の提案を聞いたのか、二人は困った様に腕を組んで考え込んでいた。
「開演まで後10分しか無い。中止も出来なければツヴァイウイングは間に合わない。開演しつつ誰かが時間を稼がなければならない。それも来場者に気付かせないように楽しませる必要がある」
「しかし……無名の君が出ても……」
「私は、鳴護アリサの一人娘です」
「「ええっ!?」」
そう言う梨紗の言葉に二人は困惑の声を上げる。
(梨紗の奴、『自分が歌って時間を稼ぐ』としか言わなかったんだな……)
そんな三人の様子にフキが推察するなか、フキの隣でサクラとヒバナが口をあんぐりとさせ、エリカは目をぱちくりさせながら梨紗の方を見つめる。
「歌や振り付けも母に仕込まれました。昔から周りには顔つきが母に似ていると言われてます。ウィッグとカラコンを着ければ分からないでしょう。歌の方も、気掛かりなら奥のブースで練習も兼ねて聞いてもらえれば良いかと」
そんなフキ達を他所に梨紗は更に畳み掛ける。
「………分かりました。奥で聞かせていただきます」
「時間が無いですし、その間にも鳴護アリサさんのメイクと衣装の用意を……」
そんな梨紗に根負けしたのか、二人はスタッフに指示を出した後、梨紗を連れて奥のブースへ入っていく。
「は、はいっ!!」
「ちょっと先輩!今の、マジっすか!?」
「梨紗があの『鳴護アリサ』の娘って!!」
「らしいな……私も今さっき、初めて知った……」
指示を受けたスタッフがそう言いながら会議室を出ていくなか、そう詰め寄ってくるサクラとヒバナに対し、フキは冷静にそう答える。
「千景は知ってた?」
「私は少し前に知りました………」
そう尋ねてくるエリカにそう答えるなか、千景は会議室の隅でおろおろしている、セミロングの銀髪に顔の右半分を包帯で隠した十九歳くらいの女性が目に付く。
「ねぇ貴女、スタッフでは無いですよね?」
「あ、はい……先程の、鳴護アリサさんの娘さんに連れてこられて………」
「姉さんに?どうして…?」
「えっと………爆弾の場所が分かったから、かな……?」
「っ!?どうやって見付けたの?」
「その………」
言い淀む銀髪の彼女に、千景は詰め寄りながら彼女に意識を集中させる。
「!?」
(この……温かいものは……)
が、その直後、彼女から感じたことのない程の優しく温かいものを感じて思わず目を見開く。
「………昔から、その………悪意とか、そういったのを感じやすくて………それで今日は、ライブを観に来たんだけど………地下の方からたくさんの悪意を感じて頭が痛くなって………それでしゃがんでたら彼女が来て案内を頼まれて……」
千景がそう思っているなか、女性は言い辛そうにしながらもそう事情を説明する。
「そう、ですか……協力、ありがとうございます……」
「い、いえいえ……」
(この感じ………私や姉さんと同じ、感応波を持っている。でも、私や姉さんと違う、とても温かい………)
詩奈から感じる温かさに、千景は長年感じていなかった安らぎを感じているなか、梨紗達三人が戻って来る。
『ッ……』
「「「………」」」
戻ってきた三人に全員の視線が集中する。
つかの間の沈黙の後、主催者とプロデューサーが声を上げた。
「ツヴァイウイングが到着するまで、鳴護アリサさんにライブをして頂く事になりました!」
「時間がありませんが、鳴護アリサのメイクと衣装合わせを!」
「は、はいっ!!」
「お二人とも、私の無茶な提案を受け入れてくださりありがとうございます。」
「いえいえ……実を言うと、私達も『鳴護アリサ』さんのファンでしてな……」
「先程、聞かせて頂いた貴女の歌声はまさに瓜二つ。時間稼ぎのための前座として使うのが勿体ないくらいだ…!!」
指示を受けたスタッフが慌ただしく動くなか、頭を下げながらそう言う梨紗に対し、主催者とプロデューサーは興奮しながらそう言う。
「ところで、お母様は今は……」
「……亡くなりました……父と一緒に……」
「!?そ、そうでしたか……」
「それは残念なことですが、お悔やみ申し上げます……」
「いえ……」
「衣装とメイクの用意ができましたぁーっ!!」
「さぁ、こちらへ……」
「ちょっと待って下さい。千景。」
「はい。姉さん……」
梨紗はそう言いながら、千景にCHGや新型ソード等といった装備を預ける。
「いざという時はお願い……フキ達も。」
「はい。姉さん……」
「任せておけ……」
そうして梨紗は主催者やプロデューサー達と共に会議室を後にした。