復活の歌姫

第三者Side

ワイワイ……ガヤガヤ……

「あわわわ……人がいっぱい入ってきてるっすよ……」

「まぁ、世間では有名なアイドルユニット、『ツヴァイウイング』のチャリティーライブが行われるもんね……」

「でも、そのアイドルユニットがまだ到着してないよね……」

「たきなさんからの連絡では、交通渋滞にあって遅れているらしいわ。」

その頃、チャリティーライブが行われる予定の会場では、続々と入場してくる一般客を見ながら、サクラとヒバナ、エリカと千景の四人は物陰でそう話をする。

『千景、エリカ、ヒバナ、サクラ。聞こえる?』

そんななか、梨紗からの連絡が入ってくる。

「姉さん?」

「聞こえるよ。」

「どうかしたの?」

『今から第一会議室に集まって。ちょっと面倒なことが起きた。』

「「「「了解(っす)。」」」」

そうして四人は第一会議室へと向かう。

第一会議室・・・

「何があったの?姉さん。」

エリカ達と共に第一会議室に来た後、千景は先にフキと一緒にいた梨紗にそう尋ねる。

「今、たきなから追加報告が来てね……首都高を渡っている最中に道が爆破されて危うく立ち往生しかけた上に謎の黒服部隊から襲撃を受けたらしいわ。」

「!?」

「「え!?」」

「それってヤバくないっすか!?」

「まぁ、幸い護衛対象は特に怪我を負わなかったし、イチカと来弥がその黒服部隊を相手している隙に千束とたきなが梨紗の知り合いのに協力してもらって護衛対象と共に首都高を脱出。今はその知り合いが運転する多目的ワゴン車でこちらに向かっているそうだ。」

「いやいや!だとしてももう間に合わないっすよ!!お客さんも結構入って来てるんすよ!!」

「主催者さんやお客さん達に説明して時間をずらしてもらうしか……」

ガチャッ!!

「た、大変だぁっ!?」

梨紗達がそう話をするなか、主催者が慌てながら、そう言いながら入ってくる。

「ど、どうしたんですか!?」

「い、今、『今日のライブを時間通りに行え。さもなくば会場に仕掛けた爆弾を全て爆破させる。』と脅迫電話がっ!!」

「「「「「「!?」」」」」」

慌てながらそう言う主催者の言葉に梨紗達は驚愕の表情を浮かべる。

「っ、手分けして爆弾を捜索!
見つけてもくれぐれも触らないで!!」

「内容からして複数ある筈だ!
場所を特定するだけでも価値がある!!」

「「「「了解!!」」」」

そうして梨紗達六人は第一会議室から出て、手分けして爆弾を探し始める。

「うぅ……」

「!?あの人……」

そんななか、梨紗は通路でうずくまり頭を抱えている女性を発見する。

「貴女、大丈夫?」

「ぁ、いえ………頭が、痛くて………」

「体調が悪いの?」

「えっと………その………」

女性は少し悩んだ様子を見せた後、意を決したように顔を上げる。

「下から嫌な気配がするんです。重くて、怖い気配が……!!」

「!その場所に案内してくれないかしら!?」

「え?あっ、は、はい……」

そうして梨紗は女性を支えながら、気配の場所へと向かう。

道中、係員がいぶかしむも梨紗は自身の協力者だと説明して、関係者エリアを押し通る。

途中、鳴護アリサが使用していた衣装が展示されているエリアを通りかかる。

「ッ……」

(鳴護アリサ……母さんの……)

「あの……」

「……なんでもないわ……」

首を傾げながらそう言う女性に対し、梨紗はそう言いながら女性が指し示す方へと向かう。

そうして辿り着いた先は会場の地下。いくつもそびえ立つ支柱には不透明なビニールが覆われている。

「どれからしますか?」

「………全部です。」

「なっ!?全部っ!?」

「はい……ビニールが覆われている柱、全部です…っ!!」

「くっ…!」

梨紗はすぐさま彼女を下ろし、近くのビニールを剥ぎ取る。

すると、その下にはおびただしい数の爆弾がくくり付けられていた。

「ちっ……!!」

梨紗は舌打ちするや否やPDIを取り出し、ノアに通信を繋げながらカメラを爆弾に向ける。

「ノア、ハック出来る!?会場地下よ!」

『っ、駄目です!クローズドネットワークです!』

「なら…!」

『ハッキングによる解除ができない』というノアの言葉に梨紗はそう言いながらポーチから小さな端末を取り出し、爆弾の制御装置に当てる。それは梨紗が開発した、クローズドネットワークに介入する物理侵入端末だった。

「ノア、どう!?」

『これは………!駄目です!極めて複雑なプログラムな上にブービートラップが仕掛けられています!一つ解除出来ても、数秒で他の爆弾が爆発します!恐らく爆弾それぞれでコードが違い、マスターコードが無ければ解除不可能です!』

「っ、クソッ!!」

梨紗は悪態をついて物理的に解体出来ないか模索する。だが構造を探ると、こちらにもブービートラップとして、解体すれば制御装置に起爆信号が送られる仕組みになっていた。

「駄目だ………!とても人手も時間も足りな過ぎる…!梨紗から各員、聞こえるかしら?爆弾を見つけたわ」

『本当か!?』

「ええ、でも解体は不可能よ。解体するには、マスターコードが必要。脅迫を呑んで、ライブ後に向こうから解除してもらう他無いわ」

『で、でもツヴァイウイングは間に合わないっすよ!?』

『何か策はあるの?姉さん』

梨紗はフキ達に通信しながら女性に手を差し伸ばす。女性は手を取って立ち上がる。セミロングの銀髪に、顔の右半分を包帯に覆われた女性の、透き通るようなアクアマリンの瞳を見つめながら梨紗は言い放つ。

「私が歌って時間を稼ぐ。私の母、『鳴護アリサ』として………!」
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