復活の歌姫

「どうだろうか梨紗君。プロデビューしてみる気はないかな?」

「は、はぁ……」

「ええっ!?ヨシさん、そんなことできるのっ!!?」

続けてそう勧めてくる吉松に対し、梨紗がそう言うなか、千束は困惑しながらそう尋ねる。

「知り合いに芸能事務所を経営している人がいてね。きっとあちらも君の歌声に惚れると思うんだが………どうかな?」

「………ありがたい話ですが、ご遠慮させて下さい。私の夢は、喫茶店を営むことなので………」

「梨紗姉……」

「梨紗さん……」

「………」

「そうか……それは残念だ。君ならきっと彼女のように輝けるだろうに………」

吉松はそう言いながら梨紗が歌っている間、注文して頂いていたコーヒーとおはぎの代金を置きながら席を立つ。

「今日も美味しかったよ、ミカ。」

「あぁ……またどうぞ。」

「それじゃあね。梨紗君………いつか、ステージの上に立つ君を見てみたいものだ………」

「ッ……どうも………」

不敵な笑みを浮かべながらそう言う吉松に対し、梨紗は恐縮しながらそう言う。

「ヨシさぁ~ん♪またいらして下さいねぇ~♪」

カランカラーン♪

何気ない笑顔でそう言う千束の声を背に吉松は店を後にする。

(吉松さん……貴方は一体………)

そんな吉松の背中に梨紗はそう思いながら、吉松が自分を通して『別の誰か』を見ているように感じていた。

「……明日、予定通りに『計画』を実行してくれ。」

一方の吉松はリコリコの外に停車させている車に乗り込んだ後、運転席にいる秘書の姫蒲にそう指示を出す。

「畏まりました。」

「あぁ………早く君に会いたいよ………アリサ君………」

ブロロロ……ッ!!

吉松がそう言うなか、姫蒲の運転する車は走り出し、夜の闇へと消えていった。
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