第三者Side

『今回の特集は数十年前に彗星の如く現れ、そして舞台から姿を消した『奇跡の歌声』を持つアーティスト、鳴護アリサさんについて、触れていきたいと思います。』

「この特集、一昨日もやってなかったかぁ～？」

「なんか最近、よく見ますよね……この人の話題………」

DA本部での模擬戦から半月近く経った頃、クルミがリコリコのTVに流れる特集を観ながら賄いのデザートを食べるなか、たきなも観ながらそう言う。

「……ノア。調査の方はどう？」

そんななか、梨紗が険しい表情でTVを観ながら、通信でそう尋ねる。

『はい……２８日前より情報があちらこちらで活動記録が上がり始めています………ですが、『鳴護アリサ』というアーティストの活動記録以外の情報は一切なく、お母様………桜歌さんとの関係は未だ不明です。』

「そう………声紋の方は？」

『それが………適合率９８％。
本人の可能性が、極めて高いかと……』

「っ……そう、なのね……わかったわ。
引き続き、調査をお願い。」

『了解です。』

「あの……梨紗さん。」

「大丈夫？姉さん。」

ノアとの通信を終えた梨紗に対し、ひなたと千景がそう尋ねる。

「えぇ、大丈夫よ。ありがとう。二人とも。」

『こちらが数十年前当時の鳴護アリサさんです。』

そんな二人に梨紗がそう言うなか、TVの画面にそう言うアナウンサーの台詞と共に楽しそうに歌う桃色の髪の少女の姿が映し出される。

「おぉ～。顔は初めて見たなぁ……」

「見た感じ、私と同い年………数十年前のもので生きているなら、今は六十代………ですかね？」

「だねぇ～。ってん？んん？」

TV画面に映し出された『鳴護アリサ』を観ながらクルミとたきながそう言うなか、千束がそう言いながら何かに気付いたかのように『鳴護アリサ』と梨紗を交互に見る。

「どうしました？千束。」

「この人……梨紗姉となんか似てない？」

「っていうかこの女、芸名じゃなくて本名ならあんたと同じ名字じゃない？」

千束が画面に映る『鳴護アリサ』と見比べながらそう言うなか、カウンターでいつもの酒盛りをしていたミズキも首を傾げながらそう言う。

「それは…………」

「ほぅ、『鳴護アリサ』って先生のことだったのか。」

梨紗が思わず言い淀（よど）むなか、奥から出てくると同時にTVを観たミカがそう呟く。

「？先生の先生？」

「それってまさか、梨紗さんのお母様なんですか！？」

その呟きに千束がそう言いながら首を傾げるなか、たきなはそう困惑の声を上げる。

「っ……その可能性が高いわ。」

「？可能性が高い？」

「姉さんも私も一度たりとも聞いたことがなかったのよ。姉さんにとっても、私にとっても、あの人は喫茶店を営む『母』だった………」

首を傾げながらそう尋ねるひなたに対し、千景がそう答える。

「………マスターも知らなかったのね。」

「あぁ。私が千束と共に喫茶店を始めるに至って知り合ったからな……歌手をしていたなんて知らなかった………」

「んん？先生が知らないのはまだわかるけど、なんで梨紗姉のお母さんは実の娘である梨紗姉にも話さなかったんだろう………」

『尚、今夜はゲストとして今話題沸騰中のアイドルユニット、『ツヴァイウイング』のお二人にも来て頂いております。』

『どうもぉ～。』

『よろしくお願いします。』

千束が首を傾げながらそう言うなか、TV画面に新たに赤いウルフヘアーの女性と蒼髪の凛々しい雰囲気の少女が映し出される。

「お？この二人ってあんたらが明日、護衛するアイドルじゃない？」

「あぁ～、本当だ。」

「まぁ、護衛に当たるのは私と千束、この場にはいないイチカさんと来弥さんの四人で梨紗さんと千景はフキさん達と一緒に会場の警備ですね。」

『聞いたところ、『鳴護アリサ』はお二人にとっては“憧れの人”なんだとか……』

ミズキと千束、たきなの三人がそう話をするなか、アナウンサーがそうゲストの二人に尋ねる。

『そうなんですよぉ～。あたしも翼も生の歌を聞いたことないし、あまり知られてないのが残念なんですが……』

『私は父の、奏は奏のお母さんが偶々、スマホにダウンロードしていた曲を聞かせてくれたのがきっかけで彼女の存在を知ると同時にその歌声に魅了されたんです。』

そんなアナウンサーに対し、赤いウルフヘアーの女性、天羽（あもう）奏（かなで）と蒼髪の少女、風鳴（かざなり）翼（つばさ）はそう答えた。