花の確執

電車内・・・

ガタンゴトン……ガタンゴトン……

「いやぁ~、帰る前のアレには驚いたねぇ~。」

「はい……まさか、梨紗さん達と模擬戦をした人達から謝罪を受けるとは思いませんでした……」

時は過ぎ、夕陽に照らされながら電車で帰路に着くなか、千束とたきなは帰る前に本部で起きた出来事を思い起こしながらそう話をする。

模擬戦が終わった後、井原以外の十一人のリコリス達がエントランスで帰り支度をしていたたきなに一斉に謝罪をし、たきなは戸惑いながらもそれを受け入れたのだった。

「それはそうとたきな。
随分と表情が柔らかくなったわね。」

「?そうですか?」

唐突にそう言う梨紗に対し、たきなは首を傾げながらそう尋ねる。

「はい。本部に到着した時と比べると、とても素敵です。」

「ふふん♪今回のことで色々とスカッとしたもんなぁ♪たきな♪」

「……えぇ。」

笑顔でそう答えるひなたに続いてそう言う千束の言葉に、たきなも笑顔でそう言う。

「そういえば、イチカもリコリコに転属したそうだったわね。あの子は器用だから、少し教えるだけですぐに覚えるわ。」

「ほっほぅ………それは是非とも欲しい人材だねぇ………リコリスとしても、喫茶店としても………どうにかウチに引き込めないかな………」

「姉さんが誘えば二つ返事でしょうよ。“千束さん”。」

「千景もそう思う?って千景、今………」

話の途中、千束はそう言いながら千景の方を見る。

「………」

対する千景は窓から見える景色を見ながらそっぽを向いている。

「………ぃやったぁぁぁあっ!千景にも名前で呼んでもらえたぁぁぁあっ!!」

「うるさいですよ。千束。」

「“たきなさん”の言う通りね。」

「え………?」

今度はたきなが呆けた声を上げながら、千景の方を見る。

「………」

対する千景はそっぽを向いたままだが、耳たぶまで赤くなっているのがわかる。

「………」

ピローン♪

「ん?」

そんな千景に梨紗が密かに微笑むなか、千束にLINEの通知が届く。

相手はクルミからで『ボトゲ大会、延長戦中!間に合いそうなら連絡PLEASE!!』とのことだった。

一緒にミカや常連客達と撮ったのだろう、楽しそうな写真も添付で送られている。

「どうする?四人とも……」

「「「「………」」」」

喫茶店『リコリコ』・・・

「取ったどぉーっ!!」

「おー、千束達、来るのか。」

ミカがそう言いながらテーブルの上から人形をかっ浚うなか、クルミのスマホに千束からの返信が届く。

「やったー♪じゃあ、延長戦やろうやろう♪」

「漫画家は原稿やれよ…ヤバいんだろ~?」

「大丈夫!徹夜を挟めば、まだ取り戻せる!!」

「………」ゴソゴソ

伊藤とクルミがそう話をするなか、ミカは自身のスマホを確認する。

「……フッ……待ってるぞ。」

ミカが微笑みながら見つめる先には『五人で行くぜ!!』という文章に、笑顔で写る五人の少女達の写真が添付されていた。
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