花の確執

第三屋外演習場内・・・

「やぁっほぉーっ。久しぶりねぇ、“ブキミちゃん”。」

「はて……何処かで会ったかしら?」

その頃、第三屋外演習場で小馬鹿にしたような態度でそう言う井原に対し、千景は冷たい目で睨み付けながらそう言う。

「つれないなぁ……小学生の頃はあんなに仲良く遊んだ・・・・・・仲なのに………」

「さぁ?その頃は弄ばれた・・・・記憶しかないわね。」

「人聞きが悪いなぁ……アレは『アソビ』だよ。ア・ソ・ビ♪」

「………」

「……貴女もツイてないわね。こんな不気味な子・・・・が相方で。案外、本部ここから追い出された本当の理由も千景こいつだったりして………」

千景と言葉を交わした後、井原は今度は梨紗にそう言って話しかける。

周りにいる取り巻きのリコリス達は相手が梨紗だからか、冷や汗を掻きながら罰の悪そうな表情を浮かべている。

管制室・・・

「……なに?彼奴あいつ………」

「なんか腹立たしいですね……」

「自分も“騙されていた”と思うとムカついてきたっす………」

そんな井原を管制室から見ながら千束とたきな、サクラの三人は不機嫌になりながらそう言う。

「……ん?」

「騙されていた?」

そんななか、サクラが言った『騙されていた』という単語に千束とたきなは首を傾げながらそう言う。
 
「……おまえらも今日、本部ここに来た時に耳にするくらいはしただろ。『たきなは『味方殺し』』だってやつ。」

「あぁ、そうそう!なにあれ!たきなは寧ろ仲間を助けたのに!!」

冷静にそう言うフキに対し、千束は憤慨しながらそう言う。

「その“デタラメ”を周りに吹聴しやがったのが今、梨紗達が対峙している連中だ……って言ってもファーストの井原以外は井原の口車に乗せられちまっているだけなんだろうけどな………」

対するフキはそう説明しながら、モニターに映る2チームを観る。

第三屋外演習場内・・・

「……言いたいことはそれだけ・・・・かしら?」

「「「「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」」」」

梨紗がそう言いながら放つ殺気に、井原や周りのリコリス達は思わず気圧けおされる。

「……情報は非常に大切なもの。軽い気持ちや冗談のつもりで広めた誤情報がその人のみならず、いずれは自分自身にも牙を剥くことがあることをよく覚えておきなさい。」

次の瞬間、梨紗は井原の周りのリコリス達に僅かな憐れみと怒りが込められた視線を向けながらそう言う。

その視線に彼女達は理解する。

まさに今、自分達が“牙を剥けられている”ということを。

たきなに対する敵対心から、井原に乗っかってありもしない『噂』を流したことが、自分達が尊敬と畏怖の念を抱く『鷹』の逆鱗に触れてしまったのだということを。

「あ……あぁ……」

「ちょっとあんた達!なに狼狽うろたえてんのよっ!?」

「あ~ぁ、先輩を怒らせちゃったッスねぇ………まぁ、私もそれなりにキレてるんスけど………」

顔色を青ざめる取り巻き達に井原がそう言うなか、イチカはそう言いながら細い目を薄く開ける。

「全員、『地獄』に送ってやるッスよ……」

「「「「「「「「「「「ひぃっ!?」」」」」」」」」」」

「ちょっとぉっ!!」

『双方、『お喋り』はそこまでだ。』

井原以外のリコリスが思わずそう悲鳴を上げるなか、管制室からそう言う楠木の声が聞こえてくる。

「ッ……」

「はぁーいッス。」

『これから第二の状況演習を開始する。想定は銃火器で武装し、耐銃火器を想定した装備をしているものとする。使用する弾丸はペイント弾ではなく訓練用ゴム弾。体術、ラバーナイフ、ラバーソードの使用も許可する。銃を鈍器としての使用も有効扱いだ。』

続けて、楠木はルール説明を始める。

『戦闘不能判定はラジアータで行うので、やられた者は状況終了まで自力移動は不可だ。双方、相手チームを殲滅すれば勝利とする。ここまでの説明で双方のリーダーは何か異論はあるか?』

「ないわ。」

「ッ……ありません……」

『それでは……始めっ!!』

ビイィィーーーッ!!

楠木がそう言った瞬間、模擬戦開始のブザー音が鳴り響いた。
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