花の確執

第三者side

サァァァ……

「………」

「ここだと思った……」

射撃場から走り去った後、本部所属のリコリス達が暮らすリコリス棟内部にある噴水の前で佇んでいるたきなに対し、後から追いかけてきた千束がそう声をかける。

「リコリスは皆、好きだもんね。ここ。」

「……この寮で暮らすのがDAに拾われた私達、皆の憧れ……この制服に袖を通した時も………」

「嬉しかったよね。」

「!」

自分と同じように噴水を見ながらそう言う千束に対し、たきなは意外そうな顔で見つめる。

「………」

「そんな顔しないでよぉ……私だって“同じ”なんだから。」

「……なら……千束さんにだってわかるでしょう?」

たきなはそう言いながら、噴水の水に触れながら水底みなそこを覗き込む。

常に水が流れているからか、水面は揺れてそこに映し出す鏡像が定まらない。

「ッ……本部ここが目標だった……それを私は奪われたっ!!」

次の瞬間、たきなは周りを見渡しながら、感情を爆発させる。

「どうして、こんな……っ!!」

「たきな……」

水に触れて濡れた手で顔を覆いながら、たきなはやるせない気持ちを言葉にする。

まるで涙を誤魔化すかのように……

「……たきなを必要としてくれる人は、街にはたくさんいるよ?本部ここじゃなくたって………」

「ッ!貴女はDAに必要とされている・・・・・・・・から良いですよねっ!!!私は!私の『居場所・・・』は……もう……本部ここにはない……」

「たきな………」

「……ごめんなさい……わかっているんです……全部、自分のせいだってことは……」

一通り感情を爆発させた後、たきなはうつむきながら謝罪する。

「……あの時、たきなは仲間を救いたかった・・・・・・・・・。それは命令じゃない・・・・・・自分で決めたこと・・・・・・・・でしょ?梨紗姉も言ってたよ。『自分達は人形・・じゃない、『上』が使えなきゃ自分の意思・・・・・で動く』って。私も、それが一番大事だと思う。」

「………」

「それに、たきなの処遇は命令違反とは関係ないよ。」

「?」

「……あの時、通信障害があったって本当?」

「え、えぇ…数分ですが。後から技術的トラブルだと聞かされましたが」

ハッキング・・・・・だよ。」

戸惑いながらそう答えるたきなの言葉の途中で千束は真剣な表情でそう言う。

「ハッキングって……ラジアータが?」

「そう。だってDAの機密性を担ってる最強AIだよぉ?全てのインフラの優先権を持ってるのに、通信障害なんてアリエナイ。」

「それじゃあ、取り引き時間の誤情報も……」

「でもそんなこと、『上』は報告する訳にはいかない。DA自分達面子めんつに関わることだからね。」

「………」

「だから、『リコリスの暴走』ってことにしてたきなを飛ばした。梨紗姉と千景は自分達がリコリコに異動するための口実・・として利用したんだろうけどって……」

話の途中でたきなは何処かに向かおうとする。

「ちょいちょいちょいっ!!何処行くのっ!?」

「理不尽ですっ!司令に抗議してきますっ!!」

しなって!!どんなに言ったところで、あの人は絶対にシラを切るよっ!!」

「なら、どうすれば………っ!?」

その瞬間、千束はたきなを優しく抱きしめる。

「たきな、現在いま次に進む時・・・・・失うことで得られるもの・・・・・・・・・・・もあるって。」

「あっ………」
13/32ページ
スキ